トヨタ ヤリス(YARIS)プロトタイプ試乗記・評価 燃費だけじゃない! トヨタ 渾身、世界ナンバー1を狙ったコンパクトカー誕生!!
CORISM / 2020年2月4日 19時23分
Bセグ車用初のTNGAを採用したプラットフォームを使う新型ヤリス
21世紀を前に登場したヴィッツは、優れたトータル性能を武器に、コンパクトカーのベンチマークとなるまでに上り詰めた。海外ではトヨタ「ヤリス」と命名され、ヨーロッパを中心に幅広い層の人たちに愛されている。
その4代目となる次期モデルは、日本でも「ヤリス」を名乗ることが発表された。正式デビューは2月10日だが、その前にクローズドコースで最終プロトタイプに乗る機会を得たので最初の印象を述べておこう。
目の前に現れた新型トヨタ ヤリスは、誰が見てもヤリスと分かる明快なデザインだ。世界ラリー選手権(WRC)で大活躍している3代目ベースのヤリスWRCを知っているためか、ついつい共通項を探ってしまう。
新型ヤリスのエクステリアは、バランスよくまとめられている。日本仕様は小型車サイズに収めているが、張りのあるフェンダーやセクシーやヒップラインなど、見どころが多い。ボディサイズも肥大化するライバルが多い中、ダウンサイジングといえなくもない絶妙なサイズ感だ。日本の狭い道でも扱いやすいはずである。
新型ヤリスには、トヨタのBセグメントコンパクトカーとして初めてTNGAプラットフォームを採用した。剛性アップと軽量化に励み、構造用接着剤も積極的に用いている。ハイブリッド車は、ヴィッツと比べ50kgほど軽くされた。重心高も15㎜下げられている。また、パワーステアリングにはブラシレスモーター方式を採用し、操舵フィールにもこだわった。
新プラットフォーム採用で最適なドライビングポジションが可能に
新型ヤリスは、プラットフォームの一新により最適なドライビングポジションを取れるようになり、着座位置も低くなっている。シートは大ぶりで、大柄な人が座っても窮屈ではない。
だが、後席は割りきったのか、足元空間はヴィッツと同等レベルか、狭い印象だ。ホイールベースは40㎜延びているし、シートの造りもよくなったが、後席は今一歩の広さにとどまっている。考え方としては、マツダ2(旧・デミオ)やスイフトと同じで、前席優先の設計とした。
小気味よい反応を示した直3 1.5Lガソリンエンジン
1.5Lモデルはガソリンエンジン、ハイブリッドともに新開発の「ダイナミックフォースエンジン」だ。ヨーロッパ車に多い直列3気筒のDOHC4バルブで、ロングストロークタイプである。
RAV4に積んでいる2.0LのM20A-FKS型を3気筒にしたエンジンといえば分かりやすいだろう。燃焼効率の最適化を図り、ガソリン車が積むM15A-FKS型エンジンは直噴のD- 4システムにバランサーシャフトを組み合わせている。
試乗したのがサーキットだったため、動力性能はそれなりと感じた。だが、ダイレクトシフトCVTの助けと3気筒ということもあり、低回転からトルクは豊かだ。ステップ変速制御を備えたCVTは、応答レスポンスが鋭く、小気味よい加速を披露する。出力は120ps&145Nmとなる。
ちょっと引っ張り気味の味付けで、3000回転を超えたあたりからパワー感が増してきた。4000回転を超えると力強さが加わり、その気になれば6000回転オーバーまで使い切ることが可能だ。
マニア好みの味付けが欲しいマニュアルトランスミッション
新型ヤリスのドライバビリティは、合格点を与えられる。街中では扱いやすく、ワインディングロードではスポーティな走りを見せてくれるはずだ。バランサーシャフトを装備しているため、3気筒特有の振動はほとんど感じ取れない。だが、このエンジンはヴィッツやパッソの1.0Lエンジンのように回したときのように音色が今ひとつ。これが惜しいところだ。
新型ヤリスには、6速MTも用意されている。シフトストロークはそれほど短くないが、適度な手応えがあり、つながりもスムースだった。ただし、クラッチはかなり軽く、ペダルストロークもそれなりにある。もう少しマニア好みの味付けでもよかったと思う。積極的に変速を楽しもうと思わせるスポーティ感が増すはずだ。
2.0L並みの動力性能をもつ1.5Lハイブリッド。燃費は36.0㎞/Lと超低燃費!
新型ヤリスのハイブリッド車が積む新開発のM15A-FXE型3気筒DOHCは、熱効率を高めたエンジンで、性能的には2.0Lクラス並みの実力を備えていた。モーターとバッテリーは、プリウスのものより出力を高めているようだから、低回転域から力強いトルクを発生する。
アクセルを踏み込むと気持ちいい加速を見せ、丁寧な運転だとEV走行の領域も広がった。遮音対策も違うのだろう。静粛性もガソリンエンジン搭載車の一歩上を行っている。このモデルから、新開発のリチウムイオンバッテリーが搭載されている。
アクアのシステム出力は100psに対して、新型ヤリスは116psと大幅にパワーアップしている。この差は歴然で、新型ヤリスはパワフルな印象となる。
アクアよりパワフルなのに、新型ヤリスは燃費性能も優秀。最も燃費のよいグレードは、36.0㎞/L(WLTCモード)となった。アクアは、WLTCモードより数値がよりよくなるJC08モードで34.4㎞/Lである。ヤリスをJC08モードで計測すれば、恐らく40.0㎞/Lを超えてくるだろう。まさに、世界トップレベルの低燃費性能だ。このように、同じ1.5Lハイブリッドだが、アクアとヤリスでは、まったく異なるハイブリッドシステムになっていて、新型ヤリスのハイブリッドシステムはもはや格が違う。
軽快さが際立つハンドリング
ハンドリングは、悪くない。サーキットでの試乗だったが、ちょっとハードに攻めたくらいではコントロールしやすいし、狙ったラインに無理なく乗せることができる。
さすがに、14インチの70タイヤを履くヤリスはサーキット走行だと荷が重い。コーナーで懸命に踏ん張るが、ロールの大きさを意識させられるし、ブレーキ性能も物足りなく感じた。また、軽さが際立つパワーステアリングもサーキットでは違和感がある。性格と走行フィールはヴィッツに近い印象だ。
安心感のある走りを見せ、スポーティムードも味わえるのは15インチの60タイヤと16インチの55タイヤを履く新型ヤリスである。軽やかな身のこなしで、連続するコーナーを駆け抜けていく。クルマは軽いし、鼻先も軽いから、軽快な印象が際立つのだ。
ステアリングに加え、ブレーキの踏力も軽いは個人的には気になった。だが、基本性能は高く、スポーティな走りもそつなくこなす。乗り心地もヴィッツよりよくなっている。
想像以上に走りを魅せたE-Four
思った以上に実力が高い、と感じたのが4WDモデルだ。E-FOURと呼ぶ電動4WDを採用し、後輪にモーターを組み込むためにリアサスペンションをダブルウイッシュボーンに変更した。サーキットでも一体感のある走りを見せ、コントロールしやすい。コーナーでの踏ん張りも利くなど、タイヤも上手に履きこなしている。
FF(前輪駆動)車は乗り心地に関して引き締まっている、と感じる場面があった。だが、4WDモデルの乗り味はしなやかだ。
この4WDモデルを含め、新型ヤリスはトータル性能の高いコンパクト2ボックスに仕上がっている。サーキット以上に普段使いで輝きを放つはずだ。選択肢が多いのも魅力で、ボトムには買い得な1.0Lモデルも用意されている。
<レポート:片岡英明>
トヨタ ヤリス(YARIS)価格
■ヤリス 1.0Lガソリン車
・X FF 1,455,000円/“B package” 1,395,000円
・G FF 1,613,000円
■ヤリス 1.5Lガソリン車(MT車)
・X 6速MT FF 1,543,000円
・G 6速MT FF 1,701,000円
・Z 6速MT FF 1,871,000円
■ヤリス 1.5Lガソリン車(CVT車)
・X FF 1,598,000円/4WD 1,831,000円
・G FF 1,756,000円/4WD 10 1,954,000円
・Z FF 1,926,000円/4WD 10 2,124,000円
■ヤリス 1.5Lハイブリッド車(電気式CVT)
・HYBRID X FF 1,998,000円/E-Four 2,241,000円
・HYBRID G FF 2,130,000円/E-Four 2,338,000円
・HYBRID Z FF 2,295,000円/E-Four 2,493,000円
トヨタ ヤリス(YARIS)燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード トヨタ ヤリス ハイブリッドZ(FF)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 3,940×1,695×1,500mm
ホイールベース[mm] 2,550
サスペンション 前:マクファーソンストラット 後:トーションビーム
車両重量[kg] 1,090kg
総排気量[cc] 1,490cc
エンジン種類 直3 DOHC
エンジン型式 M15A-FXE
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] 91(67)/4,800rpm
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 12.1(120)/3,800〜4,800rpm
モーター最高出力[ps(kw)] 80ps(59kw)
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] 14.4kg-m(141N・m)
システム全体[ps(kw)] 116ps(85KW)
ミッション 電気式無段変速機
最小回転半径[m] 5.1m
バッテリー 種類/容量(Ah) リチウムイオン電池/4.3
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