日産GT-R試乗記・評価 熟成極めた「令和のGT-R」
CORISM / 2020年2月10日 19時30分
大幅進化した2020年日産GT-R
日産が生んだ「GT-R」は世界中のクルマ好きが憧れ、口うるさいエンスージャストが認める最高峰のスーパースポーツクーペである。
日産GT-Rのデビューは2007年だから、2020年には登場から13年目に突入した。そこで、GT-Rは2019年6月に大がかりなマイナーチェンジを行い、大幅にポテンシャルを高めている。
そして、10月にはチーフプロダクトスペシャリストの田村宏志さんが情熱を注いで完成させたGT-R NISMO(ニスモ)の2020年モデルも発売を開始した。
応答レスポンスに優れる新ターボを採用
日産GT-Rの標準車は、ターボチャージャーを変更するとともに「アブレダブルシール」と呼ぶ高効率化技術を採用し、応答レスポンスを向上させている。また、ASC(アダプティブ・シフト・コントロール)のシフトスケジュールをRモード専用設定とした。この改良により、ドライバーの意思に忠実に最適なギアを選ぶようになり、気持ちいい加速に磨きがかけられている。
また、ビルシュタイン製の減衰力可変ダンパーを採用するサスペンションのセッティングも見直しを図った。ボディカラーは、新たに精悍なワンガンブルーが加えられている。
カーボンルーフなど、更なる軽量化が図られたGT-R NISMO
標準車以上に大きな進化を遂げたのが、フラッグシップとなるGT-R NISMOだ。こちらもターボチャージャーをGT-R NISMO GT3の18年モデルと同じものに変えた。タービンブレードの羽根の枚数を11から10へ減らし、レスポンスの向上を図ったのである。
さらに、ハンドリング性能を向上させるために、ルーフやボンネットなどのパネルには軽量で剛性の高いカーボン素材を採用した。従来よりさらに、10.5kgの軽量化を図れたことに加え、フェンダーにはエアアウトレットを追加して空力性能と空力バランスを向上させている。
また、専用のカーボンセラミックブレーキを採用するとともに、ローターも大径サイズとした。ダンロップ製のランフラットタイヤは専用設計だし、鍛造のアルミホイールも軽量タイプだ。足元の変更によってバネ下荷重が軽くなったから、電子制御サスペンションのセッティングも変更している。
これ以外では、レカロ製のカーボンバックバケットシートが新設計だ。形状だけでなく骨格までも新しくした。
絶大な安心感と驚きの速さとは?
試乗会場となったのは、千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイ。最初にステアリングを握ったのは、GT-R NISMOの2020年モデルだ。朝イチの試乗だったので、エンジンを暖気するだけでなくタイヤも入念にウォームアップを行った。
走行モードは、Rモードを選択。最終コーナーを丁寧に回ってアクセルペダルを強く踏み込みながらメインスタンド前を駆け抜ける。6500回転でシフトアップしたが、応答レスポンスは鋭いし、車体全体では2017年モデルに対して20kgも軽量化されているから驚くほど速い。
3.8LのVR38DETT型V型6気筒DOHCツインターボのパワースペックは、GT-R NISMOの18年モデルと同じだ。最高出力が441kW(600ps)、最大トルクは652N・m(66.5kg-m)である。
出力に変更は無いが、今までのGT-R NISMOより低い回転域から厚みのあるトルクを発生し、蹴飛ばされるような加速を見せつけた。ゲトラグ製のツインクラッチ6速DCTの変速フィールも好印象だ。1コーナーのかなり手前で180km/hを軽々と超えていたのは驚きだった。
そこからフルブレーキングで減速して右へ舵を切ったが、減速フィールが素晴らしい。カーボンブレーキは熱が入らないと本来の性能を発揮しないと思っていたが、GT-R NISMOのブレーキは秀逸だ。踏み始めからリニアに減速Gが立ち上がり、コントロール性も優れている。慣れてくるとブレーキングポイントをさらに奥に取るようになり、強烈に車速が落ちたが、絶大な安心感があった。
軽やかなハンドリングと、ドライバーとの一体感
GT-R NISMOは、身のこなしも軽やかだ。リズミカルにクルマが左右に向きを変え、大柄なボディだと感じさせない。速いコーナリングでも4WDの優れた接地フィールを存分に味わえる。内輪がリバウンドするようなコーナーでも、路面に吸い付いたような安定感だ。速いスピードでコーナーに飛び込んでも狙ったラインに無理なく乗せることができ、滑ったときのリカバリィ性能も高かった。
写真ではロールが大きいように感じる。だが、ステアリングを握っているとドライバーとの一体感があり、コーナーの出口で早めにアクセルを踏み込んでもハンドリングが大きく変わることがない。スタビリティ能力が驚異的に高いだけでなく、操る楽しさも格別だ。ロープロフィールのハイパフォーマンスタイヤを履いているが、乗り心地も予想以上によかった。これは意外な発見である。
抜群の乗り心地の標準車
GT-R、2020年モデルの標準車もいい仕上がりだった。こちらは公道での試乗だったが、デートカーとして使えるほどフレキシブルで、快適な走りを手に入れている。
初期のツインクラッチ6速DCTは、スタート時にギクシャクする不快な挙動が気になったし、音も耳障りだった。しかし、最新のGT-Rは滑らかに加速し、変速も上手になっている。
もちろん、VR38DETT型V型6気筒DOHCツインターボのパフォーマンスも満足できるものだ。1.7トンを超えるボディを苦もなく加速させる。
ボディは、剛性感たっぷりだ。足の動きもいい。サスペンションの見直しによってハンドリングの軽快感も増した。今までのGT-Rより、コントロールできる領域が広くなった印象で、意のままの走りを誰にでも無理なく引き出すことができる。乗り心地がよくなったことも、改良ポイントのひとつだ。
また、BOSEサウンドシステム装着車を中心に、走行時の静粛性が向上していることも嬉しい。
たゆまぬ改良と進化によって、GT-Rの2020年モデルは新しい魅力を手に入れ、輝きを増している。オーテックジャパン扱いのGT-R NISMOは、2400万円を超える価格だが、サーキットからワインディングロードまで楽しめるし、標準車も真のグランドツーリングカーへと成長を遂げた。
熟成の域に達し、魅力を広げたのが「令和のGT-R」だ。
<レポート:片岡英明>
日産GT-R 2020年モデル価格
GT-R Premium edition 12,329,900円
GT-R Black edition 12,772,100円
GT-R Pure edition 10,828,400円
GT-R Track edition engineered by NISMO 14,636,600円
GT-R 50th Anniversary WANGAN Blue 13,766,500円
GT-R 50th Anniversary Brilliant White Pearl 13,436,500円
GT-R 50th Anniversary Ultimate Metal Silver 13,722,500円
GT-R NISMO 24,200,000円
日産GT-R NISMO 2020年モデル、ボディサイズ、出力などスペック
全長 4690mm 全幅 1895mm 全高 1370mm
ホイールベース 2780mm
トレッド 前/後 1600/1600mm
最低地上高 110mm
車両重量 1720kg
乗車定員 4(2+2)名
最小回転半径 5.7m
駆動方式 4輪駆動
ステアリングギヤ形式 電子制御パワーアシスト付ラック&ピニオン式
サスペンション 前/後 独立懸架ダブルウィッシュボーン式/独立懸架マルチリンク式
タイヤ 前・後 255/40ZRF20・ 285/35ZRF20
エンジン型式 VR38DETT[NISMO専用チューニング]
シリンダー 内径×行程 95.5×88.4mm
総排気量 3.799L
圧縮比 9.0
最高出力 441kW(600PS)/6800rpm
最大トルク 652N・m(66.5kgf・m)/3600-5600rpm
タンク容量 74L
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