難攻不落の「武者返し」! 火の国・熊本は観光地Tシャツの聖地

CREA WEB / 2019年9月29日 11時0分


コレクションの中で一番の種類数をほこる熊本観光地Tシャツ。

 名所のイラストに地名がデカデカとプリントされた観光地Tシャツをコレクションしているわけですが。前回述べましたように、そういうのを売っている土産屋は、観光地の中でも結構ひっそりとたたずんでいます。さびしい限りです。

 そんななか、大々的に観光地Tシャツを推してくれている聖地があります。それが熊本城です。

 たいていは片隅の土産屋に置かれている観光地Tシャツですが、熊本城ではそんなことはありません。メインどころの店舗で売られている。しかも、それが一軒だけではない。

 本丸脇の土産店――今は閉鎖中ですが、それから二の丸駐車場の土産店、そして城下の物産エリア「城彩苑」の土産店「旬彩館」「雅」、さらに県が運営する物産館――なんと、五軒もあるのです。

 しかも、それぞれに売っているTシャツが違う。さらに、店舗によっては何年かおきに新入荷される。たまりません。

 私は熊本城に毎年、年に数回行きます。城自体が大好きなのもありますが、実は最新Tシャツを求めてという目的もあったりするのです。

 近年は「くまモン」なるモンスターが大人気のため、土産売り場もそのグッズがフィーチャーされていて、Tシャツもかなり侵食されてきました。それでも、私が求めるような観光地Tシャツもちゃんと売られています。

 熊本は「火の国」と呼ばれるだけあり、Tシャツのデザインも質実剛健。特に好きなのは、私が「武者返しTシャツ」と呼んでいるやつで。


こちらが武者返しTシャツ。火の国らしい豪快なデザイン。

 熊本城の石垣は敵を防ぐために独特の反りで積まれており、その形状を「武者返し」といいます。これがとにかく美しいのですが、特に美しいのは宇土櫓。高くそびえた石垣の反りっぷりは芸術といえます。

 それが全面に大きくプリントされ、その脇に筆書きで「熊本城」。素晴らしい。

ますます進化する
観光地Tシャツに一家言

 近年では進化もしています。観光地Tシャツは厚めのコットン素材が使われることが多く、最もTシャツを着たいシーズンになると蒸れてしまいます。それでは、あまりに惜しい。

 それを考えてか、熊本では新たに化学繊維を使った観光地Tシャツが開発されました。肌触りがサラサラで通気性も良い。これなら、蒸し暑い日本の夏でも気にせず着ることができます。これは、「雅」で売っています。


難攻不落! シワにもならず使い勝手よし。

 ただ残念なのは、最近ちょっとオシャレになってきたかなあ、という感があるところです。

 特にそれが目立つのが二の丸広場の駐車場にある土産店で。以前はいい感じにやる気のない薄暗い店舗で、それだけに売られているのも熊本城の天守閣が大きくプリントされただけの素敵なTシャツでした。


以前の素朴なデザインがなつかしい……。

 ところが。近年になって観光案内所と合わさる形で新装されると、Tシャツも一新されまして。これが、武者返しをアレンジしたワンポイントが脇にちょっとだけプリントされた、変にオシャレなものでして。ついに熊本でもこういうのが売られるようになったのか――とさびしくなってしまいました。

 熊本城は地震からの復旧工事が進んでいます。本丸エリアもそう遠くないうちに観光客にも開放されることになるでしょう。その時は、今は閉鎖中の本丸脇の土産店も再開されるかもしれません。

 その時、どんな観光地Tシャツが販売されるか――今から楽しみです。

春日太一

1977年東京生まれ。時代劇・映画史研究家。日本大学大学院博士後期課程修了。著書に『時代劇は死なず! 完全版』(河出文庫)『仁義なき日本沈没』『市川崑と「犬神家の一族」』(以上、新潮新書)『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』『泥沼スクリーン これまで観てきた映画のこと』(以上、文藝春秋)など多数。

文・モデル=春日太一
撮影=佐藤 亘

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