CREA編集部の音楽担当が偏愛! 音楽家・小西康陽のコラムの魅力とは

CREA WEB / 2020年6月24日 17時0分

 CREA本誌で「小西康陽の音楽の新スタンダード100」を連載中の、音楽家・小西康陽さん。

 かつて、バンド「ピチカート・ファイヴ」のメンバーとして渋谷系を牽引し、解散後もDJやプロデューサーとして活躍。同時に随筆家としての一面も持つ小西さんの、音楽、本、映画、旅、恋愛などについて軽やかな文体で綴ったコラムは、音楽ファン以外からも支持されています。

 自粛期間中、テレワークしながらエッセイや日記など個人的な文章に心惹かれていたCREA編集部の音楽担当。そこで小西さんのコラムの魅力を改めてご紹介します。


「どこから読んでも大丈夫」で 雑誌みたいな楽しい本


『ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム 1993-2008』(朝日新聞社) 2,300円。

 初めて読んだ小西さんのコラム集は、『ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム1993-2008』(朝日新聞社)。

 大学生の時にアルバイトをしていた書店のロングセラーだったので、いつも目立つ場所に平積みされており、いつしか気になって手に取ったのがきっかけでした。

 この本は、小西さんが雑誌に寄稿したコラムやレコード評、インタビュー、映画レビュー、日記、あるいは個人的な覚え書きのような短い文章がたっぷりと収録されている“ヴァラエティ・ブック”。

 “ヴァラエティ・ブック”とは、通常であれば一段または二段のテキストでページが組まれるところ、一段、二段、三段、四段と、ページごとに変則的に組まれ、内容的にもさまざまな種類の文章やビジュアルページから構成されている本のことを言うそうです。


『これは恋ではない 小西康陽のコラム 1984-1996』(幻冬舎) 2,200円。「いまこの本を拾い読みしている人に」という章で、ヴァラエティ・ブックやその他の気軽に読める「拾い読み本」について語られている。

 この“ヴァラエティ・ブック”というもの自体の魅力については、『ぼくは散歩と雑学が好きだった。』の前に刊行されたコラム集『これは恋ではない 小西康陽のコラム1984-1996』(幻冬舎)でも触れられていますが、つまりはまるで雑誌のように、「どこから読んでも大丈夫」な楽しい本なのです。

 本を開いて目次を見ると、「身だしなみに無頓着であることが許されるのは。」「ぼくが京都のホテルに何日か泊まっていたときのこと」「誰かの人生を2時間の映画にするということ。」など、ふと気になってしまうタイトルの数々が。

 私は一度通読したあと、再読する際は、その時々の気分にフィットするものをピックアップするという贅沢な読み方をさせてもらっています。

コラムを読むこと= 著者とのおしゃべり?


コラムシリーズの最新刊は、昨年刊行された『わたくしのビートルズ 小西康陽のコラム1992-2019』(朝日新聞出版) 3,300円。

 何度も読んでいるお気に入りはたくさんありますが、自粛ムードの今、読み返してみて特に心に響いたのは、「人が楽しく毎日の暮らしを営んでいるところ」という章。

 吉田健一の「戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである」という言葉を引用し、人間としての喜びを感じながら都市に生きるとはどのようなことなのかが書かれています。

 コロナの影響でさまざまなことを制限され、フラストレーションが溜まるなか、「私にとっての“人間的暮らし”って何だろう?」と、落ち着いて基本に立ち返るためのヒントを与えてもらった気がしました。

 余談ですが、現在発売中のCREA6・7月合併号「偏愛のすすめ。」を読んでくださったかたの感想に、「最近人と話す機会が減っていたけど、雑誌を読んでいたら、ずっと誰かと会話をしているようで楽しかった」というものがありました。

 それと同じで、小西さんのコラムを読んでいると、身の周りのちょっとしたことについて、小西さんと個人的なおしゃべりをし、同じ思いを共有しているような気分になれます。

 ほんの1、2ページを読むわずかな時間でも、そういう時間の積み重ねに救われるものですよね。

あわせて読みたい名作エッセイ『ぼくは散歩と雑学がすき』


文学、音楽、映画の評論家として知られ、アメリカ文化をいち早く若者たちに紹介したエッセイスト・植草甚一の代表作。ちくま文庫 1,200円。

 さらに余談ですが、『ぼくは散歩と雑学が好きだった。』という本のタイトルは、“J・J”の愛称でおなじみのエッセイスト・植草甚一の『ぼくは散歩と雑学がすき』(ちくま文庫)へのオマージュ(エッセイ好きのかたは、とっくの昔にお気づきでしょう)。

 カルチャーに対する膨大な知識と、親しみやすい語り口で人気を博した植草甚一のエッセイが今でも読み継がれているように、『ぼくは散歩と雑学が好きだった。』も、エッセイの定番として、幅広くおすすめしたい1冊です。

PIZZICATO ONE『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』


小西康陽のソロ・プロジェクト「PIZZICATO ONE」による、2019年10月のワンマンライヴを収録した初の実況録音盤。ピチカート・ファイヴ時代のレパートリーを中心に、1988年~2018年の30年間に発表したナンバーの数々を小西自身が歌っている。
価格 3,000円
発売元 ユニバーサルミュージック

小西康陽(こにし やすはる)

音楽家。1985年、ピチカート・ファイヴのメンバーとしてデビュー。解散後も、数多くのアーティストの作詞/作曲/編曲/プロデュースを手掛ける。2011年、PIZZICATO ONE名義で初のソロアルバム『11のとても悲しい歌』を発表。15年、セカンドアルバム『わたくしの二十世紀』を発表。10年ぶりとなるヴァラエティブック『わたくしのビートルズ 小西康陽のコラム1992-2019』(朝日新聞出版)が発売中。

文・写真=CREA編集部

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