話題のお笑いコンビ「ラランド」の サーヤを支える“HIP HOPマインド”

CREA WEB / 2020年10月6日 20時0分

 2020年10月7日(水)発売のCREA11・12月合併号「きれいな人がしてること。」特集に登場してくれた、人気お笑いコンビ「ラランド」のサーヤさん。今回は特集の番外篇として、美容と同じくサーヤさんの生活に欠かせない「HIP HOP」をクローズアップします。

 テンションが上がるリリックの話や、HIP HOPのマインドに強く共感する理由、さらにはそんなマインドを携えながらサバイブしている今のお笑い業界について。

「芸人なんだからこういう仕事は恥ずかしい」「女芸人はこんな風に笑いを取らなきゃダメ」。

 振りかざされる古めかしい既成概念に対し、アップデートした価値観で颯爽と立ち向かう、サーヤさんの強くてしなやかな人間性に迫りました。


精神が荒れてるときは悪い人のラップを聴きます(笑)


――今回の美容特集で、大切にしている美容習慣のひとつとして「HIP HOPのマインドを取り入れる」とお答えいただきました。HIP HOPは以前からお好きだったのでしょうか。

 大学時代からラップが好きで、dodoさん、JJJさん、KID FRESINOさん、Fla$hBackSさんとかを中心に聴いていました。PUNPEEさんや5lackさんも。悪すぎないラッパーというか、カルチャー寄りのラッパーが多いです。

 でも、精神が荒れてるときは、舐達麻さんとか、悪い人のラップが一番いいですね(笑)。メイクと同じく、そのときの気分に合わせて聴く音楽も変えるようにしています。

――かなりいろいろ聴かれているようですが、新しいアーティストはどうやって開拓しているのでしょうか。

 普段は、サブスクで目に入ったものを聴いたりもしますし、YouTubeが多いですね。YouTubeのおすすめ機能が本当にすごくて(笑)。自分の好みのPVがバーっと出てくるので、そこから発掘しています。

――相方のニシダさんもHIP HOPに詳しいとお聞きしました。

 ニシダもHIP HOPが好きですね。アメリカのLogicっていうラッパーは彼に教えてもらいました。お互い情報交換もよくしています。

フィメールラッパーのAwichがめっちゃ好きです


――最近、特に好きなラッパーをあげるとしたら誰ですか?

 Awichさんっていうフィメールラッパーがめっちゃ好きです。


故郷・沖縄のアイデンティティに根ざしたHIP HOPを発信するフィメールラッパー。「WHORU?」はANARCHYを客演に迎え話題に。『8』YENTOWN/bpm Tokyo 2,500円

 お笑いの世界と同じく、ラッパーも男社会なんですけど、Awichさんはその中ですごい地位を築いてて、お子さんもいて。だからといって「男の中でがんばるぞ」みたいな感じを出しているわけでもなくて。

 リリックがかっこいいし、この人にしか出せない世界観を持っている人です。聴くとめちゃめちゃテンション上がりますね。

――Awichさんの書くリリックで、特に心に残っているものは?

「WHORU?」っていう曲の、嫌なこと言ってくる人に対して「マジでお前誰?」っていうリリック。

 私がお笑いの仕事を始めた頃、事務所に所属せずアマチュアとしてやっているせいで、ほかの芸人から「趣味でやってるのにすごいな」とか、いろいろ嫌なことを言われることがあって。

 そういうときにはこの曲を思い出して、「お前誰だよ?」っていう気持ちを持つことで自分を奮い立たせていました。

――「お笑いの世界とHIP HOPの世界は似ている」と、インタビューなどでたびたび発言されていますが、どんなところが似ていると感じますか?

 例えば、般若さんの「はいしんだ feat.SAMI-T from Mighty Crown」っていう曲に出てくる「人パンパン ウソつけ8割身内だろ」っていう部分ってお笑いの世界にも通じるし、ライバルに対して持っている気持ちとかも近いかなと。

 私たちはフリーで活動している“野良”なので、「それくらいの強い気持ちを持っていないと潰される」と思っているところもありますが。

「ニートtokyo」に出ている人の人生に比べたら


――以前、Twitterのプロフィール欄に「夢は『ニートtokyo』に出ること」と書かれていましたが、早速その夢を叶えられていましたね。この番組に出たいと思う気持ちからも、ラッパーへのリスペクトを感じました。


ラッパーのショートインタビューをノーカット配信するYouTube「ニートtokyo」。ラッパーたちの過激すぎる発言がナチュラルに飛び出すことも。(画像は本人instagramより)

「ニートtokyo」に出演してるような人たちの成り上がり方はすごいですよね。一回刑務所入ってるのが当たり前、みたいな(笑)。

 あっけらかんと生きていてストレスがないし、明るくて健全な表情をしてる。

 たとえ落ち込むことがあっても、これを観ると「(ときにハードな境遇をサバイブしてきた)この人たちの人生に比べたら、自分の人生なんて」って、自分の悩みがちっぽけに感じるんです。

 別の仕事をしながらラッパーをやっている人も多いので、会社員として働きながら芸人をやっている自分のあり方とも重なって、すごく励まされますね。

――「こんなことまで言って大丈夫なのかな?」って観ているほうが心配になるくらいに、出演しているラッパーたちの発言には忖度やタブーが一切ないですよね。

 HIP HOPの曲を聴いていると、社会的なルールに苦言を呈するような歌詞が多くて、きっとそういうマインドが私は好きなんだと思います。

“新世代女芸人”としてオピニオンを求められるけれど


――今、「社会的なルールに苦言を呈する」という言葉が出ましたが、最近のテレビ番組では、男性中心的で、女性蔑視をいとわないような“古いお笑い”に対して苦言を呈するポジションをサーヤさんが担っていることも多いですね。

 テレビの現場で、女芸人って(男性の芸人とは違う)特殊な扱い方をされることが多いんです。

 とはいえ「最近は女芸人自身のあり方や、制作側のスタンスも少しずつ変わってきてるよね」っていうことで、“新世代女芸人”としてくくられて、オピニオンを求められることが増えてきて。

 私はただ(ダウンタウンの)松ちゃんが好きでお笑いを始めただけで、別に女性の権利を主張するためにお笑いをやってるわけじゃないんですけどね。

 フェミニストとして祭り上げられたいわけじゃなくて、おかしいと感じたことに対して「おかしい」と言っているだけ。

――時代の流れもあり、フェミニズム的な文脈でピックアップされがちですが、そもそもそれ以前の問題だと。そうした考え方の基盤にも、やはりHIP HOPがあるということでしょうか。

 もちろんHIP HOPからの影響は大きいですが、大学での教育や、世代的なこともあると思います。

(出身校である)上智大学では、ジェンダー論に関する授業が多くて、自然とダイバーシティーに関する話題に触れることが多かったんです。

 ちょうどその頃、インフルエンサーのkemioくんのように、もともと興味があって追いかけていた人たちがダイバーシティーについて発信をしていたことも影響しています。

 そもそも私の世代であるZ世代(一般的に1990年代中盤以降に生まれた世代)って、普通に多様性を受け入れられる土壌がある程度できていて、偏見が強くない世代だと思いますね。

好きなことを恥ずかしげもなくやっていく


――そんな学生生活を経て、いざ社会に出てみたらどうでしたか?

 だからテレビの世界に来たら、「そんなこと、今の時代にまだ言うんだ!」ってびっくりすることがいっぱいありますね(笑)。

 今回の美容特集の取材のように、例えばコスメについて女芸人が語るのも、ちょっと前までは「女芸人が何を女出してんねん」とか言ってくるような人が多かったんです。

 でも、最近はそういう風潮も少しずつ変わってきたから、私は好きなことを恥ずかしげもなくやっていこうって決めてます。

 まわりを見ると、肩書きに苦しめられている人が多いけれど、「自分は芸人だからこういうことをやるのはダサい」とかそんな風に考えるよりは、自分に合うことをどんどんやっていったほうがいい。

 そもそも誰からも制限をかけられたくなくて、「自分たちでやる」という立場を選び、フリーの芸人として活動しているので、枠にとらわれないマインドを持っていた方が、今後もいろいろなことに挑戦していけるんじゃないかと思います。

サーヤ

1995年生まれ、東京都出身。上智大学在学中に同級生のニシダと漫才コンビ「ラランド」を結成。フリーの芸人として「M-1グランプリ2019」で準決勝に進出し話題に。YouTubeチャンネル「ララチューン」、ラジオ番組「ラランドの声溜めラジオ」「女帝」(GERA放送局)を配信中。初の地上波ラジオ冠番組「ラランド・ツキの兎」(TBSラジオ)もスタート。

文=CREA編集部
撮影=もろんのん

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