セックスワーカーを演じる伊藤沙莉の 【女優考】声優からコントまで

CREA WEB / 2020年11月12日 17時0分

 子役時代から注目され、今やドラマ・CMなどに引っ張りダコの存在となった女優・伊藤沙莉。

 映画に対するこだわりや今後の展望から、「M-1グランプリ2019」ファイナリストの兄についてまで語る第2回。

●映画でしかできないことをしたい


――最新主演作である『タイトル、拒絶』では、デリヘル店に体験入店したものの、客の前から逃げ出し、今は店のスタッフをやっているカノウ役を演じました。

 映画監督であり、この映画のプロデューサーである内田英治さんが私をカノウ役に選んでくださったのですが、カノウは「かちかち山」のウサギに憧れるタヌキのような、どこか自分に近い感覚の持ち主でした。

 撮影現場ではいろんなタイプの女優さんが、変に力んだりせず、自由にお芝居をして、その役として生きていたんです。そんなお芝居合戦のようなものが、とっても楽しかったです。

 映画『榎田貿易堂』(18年)やドラマ「全裸監督」(19年)のように、男性のスタッフや俳優さんたちに囲まれる現場が多いなか、こんなにたくさんの女のコに囲まれたのも嬉しかったです。

 男性ノリも楽しいですが、ときどき言葉を巧く返せないこともあるので(笑)。

――今やお茶の間でも人気の伊藤さん。『獣道』に続く主演映画がセックスワーカーを題材にした『タイトル、拒絶』というのは、ちょっと意外にも感じます。

 せっかく映画に出るなら、やっぱり映画でしかできないことをしたいじゃないですか! たっぷり時間をかけて、見せたいカットを撮って、贅沢なことができるのは映画ならではなことで、これがTVドラマだったら、また違うと思うんです。

 私の好みとしても、「胸が痛い、痛い」となる映画が好きですし、そういう作品を映画館で観ると、スカッとするんです。

『タイトル、拒絶』も『獣道』と同じように、こういう設定や題材が目的でもいいから、是非観てもらって、ガツンと喰らってほしいですね(笑)。

●役者って、基本M体質ですから(笑)


――今やコントや声優もされているなか、今後やってみたい仕事はありますか?

 新しいことではないですが、やっぱり定期的に舞台に立ちたいです。

 お芝居との向き合い方は映像と違いますし、毎日毎日同じことをして、毎日毎日違うダメ出しを喰らって。

 やっぱり、どこかで定期的に「打ちのめされたい」、「壁にぶつからないといけない」と思うんです。

 役者って、基本M体質ですから(笑)。映像のお仕事でも、最近は「引き受けてくれますよね?」と期待してくれる状況があって、私としては「それを裏切ってはいけない。それ以上のお芝居をしたい」という、良きプレッシャーはあります。

 ただ、同時に、周りから何も言ってもらえなくなってきているようにも感じます。

――近年、作品作りの現場でもいろいろと問題になっていますね。伊藤さん的には、良い作品を作るためなら、遠慮なく、何でも言ってほしいということですか?

 そうですね。「そのアプローチは違う」でも「そんな芝居、見たくない」でも、言ってもらって全然構わないです。

 それで、私が「そのアプローチは違う」と思ったら、ちゃんと話し合いますから。

 スゴく優しいけれど、その反面で冷たさも感じる現場は正直、あります。

 その点、舞台に関しては、決して怒られるわけではないですが、日々良くしていくためのダメ出しというか、微調整が付き物になっていますし、そのための時間がしっかり設けられていますから。

●「M-1」ファイナリストの兄とブレイク時期が重なったのは偶然です(笑)


――これから30代に向けての展望は?

 今はたまたま、いろんな方に見出していただいて、お仕事が順調にいっていますが、30代、40代になったときに、今の芝居でいいかというと、絶対に違うと思うんです。自分自身に深みがないですから。

 そのためには、舞台に限らず、定期的に厳しい人とやらないといけないと思っています。

 厳しい経験があったうえで、映画『榎田貿易堂』のような、みんな仲良く楽しいご褒美みたいな現場がある。そういうバランスを取っていかないと、確実に自分が腐りますから。

――最後に、お笑いコンビ「オズワルド」のツッコミ担当である実兄・伊藤俊介さんが、ほぼ同時期にブレイクしたことについては、どう捉えていますか?

 めちゃくちゃ偶然だと思う! 兄は「M-1グランプリ」だけを見つめてきた男なので、去年初めて決勝まで行けて嬉しかっただろうし、その後にたまたまNHKアニメワールドの「映像研には手を出すな!」が放送されただけじゃないかと(笑)。

「ウザい!」「鬱陶しい!」と思いながら、なんだかんだ家族が大好きなので、私の存在が何かのきっかけになればいいとは思っていました。

 お互いにとって、いい波が来るまでは、あまり大々的に兄妹ということを公表したくないという気持ちはありました。

 それで去年「M-1」を勝ち抜いたり、ネタ番組に出られたことで、兄のなかで、ちょっとだけ何かに近づいたという感覚があったと思うんです。

 それで、大々的に公表した感じですが、そのタイミングがちょうど良かったんですね。


『タイトル、拒絶』

雑居ビルにある事務所で、デリヘル嬢の世話係であるカノウ(伊藤沙莉)は、さまざま文句を突きつける彼女たちの対応に右往左往。しかも、人気No.1のマヒル(恒松祐里)が店に戻ると、部屋の空気は一変していた。ある日、モデルのような体型の若い女が入店したことで、店内の人間関係が崩れ始めていく。
http://lifeuntitled.info/
2020年11月13日(金)より、シネマカリテ、シネクイント他 全国順次ロードショー
©DirectorsBox


伊藤沙莉(いとう・さいり)

1994年5月4日生まれ。千葉県出身。03年、ドラマ「14ヶ月~妻が子供に還っていく~」でデビューし、「女王の教室」「GTO」などに出演。その後も、映画・ドラマ・CMなどで活躍。20年、「第57回ギャラクシー賞」 にてテレビ部門個人賞を受賞した。映画『十二単衣を着た悪魔』『ホテルローヤル』『蒲田前奏曲』などが、現在公開中。声優を務めたアニメ映画『えんとつ町のプペル』(12月25日公開)が控えている。

文=くれい響
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=AIKO
スタイリスト=吉田あかね

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