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「悔いなく全力で、嘘なく生きる」 水原希子にとって表現の“コア”とは?

CREA WEB / 2021年4月14日 18時0分

明日何が起きるかわからないから、悔いがないように生きたい


 2021年4月15日(木)から全世界同時配信されるNetflix映画『彼女』でさとうほなみと共にW主演を務めた水原希子さん。「この役を引き受けるのに、ものすごく勇気が必要だった」と語る彼女が、実際に撮影現場ではどうだったのか、また、レイという役を演じたからこそ、得られたものとは? 前編に引き続き、水原さんの飾らない本音トークが繰り広げられました。


自分の芝居がよかったのかわからなくなって、現場で泣いたことも


――以前、希子さんから、実はコントロールフリークだという話を伺ったことがあります。アートにしても、ファッションにしても、自分のイメージを形にしていくことが好きで、コントロールできないことがあると不安になる、と。でも、レイを演じている希子さんは、役者としてはむしろ憑依型に見えました。演じているとき、コントロールフリークである自分から抜け出せた瞬間があったんでしょうか?

 たぶん、あったと思います。まず、レイを演じることで自分がどうにかなってしまいそうな、すごく不安だった自分がいて。コントロールフリークっていうと聞こえはいいけれど、もっといえばただの不安症なんですよ。

 自分が役者だなんて思えなかったときは、どんな撮影のときも、「大丈夫ですか?」という確認作業に、しょっちゅう神経をすり減らしていました。「大丈夫ですか? ちゃんと期待に応えられてますか?」ってことが、気になってしょうがないんです。

 でも、今回の役はそれこそ「お芝居VS自分」みたいな。お芝居って客観的にならないとできないもののはずなのに、レイに関しては、到底その心情を客観的に分析できなくて……。


Netflix映画『彼女』

 まず、「好きな人のために、殺人を犯す」という設定の時点で、私は人を殺したことはないし、周りに人を殺した人も知らない。心情だけじゃなくて、アクション的な部分でも、「これでいいの?」「こういうことなの?」という自問自答で、脳内が押しつぶされそうになりました(苦笑)。そういうときって感情が昂って自分が見えなくなるのか、それとも醒めるのか。どうにでも演じられるわけじゃないですか。レイという七恵のことが大好きなキャラクターには共感するけれども、殺人という行為に対しては流石に共感はできないから、その部分でも、気持ちをどうやって作ったらいいのか……。難しいことだらけでした。

 そういう葛藤はすごくあったと思います。撮影が終わった後とか、自分の芝居がそれでよかったのかわからなくなって、現場で泣いちゃったり(笑)。

カメラが回っていないところでも、ずっと役のままの気持ちだった


――モデルとしての希子さんばかり見てきて、いつもすごく決断が早くて、堂々としていたから、そんな姿想像できない。

 でしょ? でも、あんなふうに取り乱しちゃうのは、私自身、初めての経験でした(笑)。

 周りの人には、「いい日もあれば、悪い日もあるよ」って励まされて。「それ励ましになってない!」なんて言ってるうちに、ちょっと落ち着いたり。

 とにかく常時手応えがなかったです。「よっしゃ、これきたっしょ!」っていう感触が皆無。元々の不安症が3割増しぐらいになったのかな。

――プロダクションノートには、撮影が進むうちに、さとうほなみさんと希子さんのお互いの関係性が変わっていったと書いてありました。映画の撮影とはいえ、演じる当人としてはドキュメント的な感覚があった?

 そうなんですよ。順撮りだったことに救われました。順撮りじゃなかったら本当にどうなっていたか想像ができない。とにかくレイの感情の浮き沈みが激しかったので、廣木(隆一)監督が長回しで撮ってくださったことで、自分の中で感情をつなげやすかった。

 監督がすごく臨機応変に、私たちの感情の変化に応じて、「ここでこれ変えよう」「あれ変えよう」と、即興でその場の空気を作り上げてくださって。撮影の前の打ち合わせとはまた全然違うものが現場で積み上がっていったこともあります。

 ほなみさんとは、戦友みたいな感じですね。終盤は、彼女がそばにいてくれないと、水原希子の精神状態としても、レイとしてもつらかった。レイと七恵、2人の気持ちが自分たちの気持ちとリンクして、お互いがお互いにしがみついていないと前に進めないような。そのぐらいの精神状態になって、カメラが回っていないところでもずっとくっついていたり、手を握っていたりしてました。


Netflix映画『彼女』

――現実と役がごちゃ混ぜになっていった?

 そう。今まで、そういう気持ちになったことってなかったし、もしプライベートでそういう気持ちになっていたとしても、何だろうな……カメラが回っていないところでは、こんな役のままの気持ちでいるのはまずい、突き放さなきゃいけないと思ったり。

 相手を「好き」っていう役だから、ずーっとその人といたいし、その人のことを目で追ってしまうけど、それをやっていて変だと思われるのが嫌だから隠そう! ってところまではあったんです。

 でも今回は、カメラが回ってないところでも。惜しみなく、全てを出し切っていた。それを受け入れてくれたほなみさん、見守ってくれていた監督と、現場のスタッフの皆さんと過ごした時間は、最高に濃密でした。

自分の表現のコアにあるのは、しがらみに縛られない、むき出しの自分


―― ひとつの役に出会ったことで、水原さんが実人生で体験したよりもつらい人生を送ったわけですが、やっぱりそのつらさを乗り越えた先でなければ掴めない光があるんでしょうね。

『あのこは貴族』が公開されて、いろんな感想を聞くことができて、あとはちょうどこの映画が世界同時配信される4月15日(木)に、『夢の続き Dream Blue』という写真集を出すんですが、それを作っているときに思ったんです。

 自分の表現のコアにあるのは、しがらみに縛られない、むき出しの自分なんだって。今回、『彼女』で、むき出しの自分のまま役と格闘できて、役者としても私はそういう現場に立てるんだとわかったことは大きかった。

 これからもいろんな表現をやり続けると思うけれど、ファッションでも、アートでも、お芝居でも、「今、私はこれに全力を注いでいます!」って堂々と言えるような作品に出ていきたいです。バジェットの大きさとか、話題作かどうかは関係なく、どんなに魅力的な条件であっても、自分が自信を持ってお勧めできそうになかったり、共感できない作品には「NO」と言える勇気を持っていたい。

 今回のコロナ禍で私が強く思ったのは、時間って尊いんだなってことです。明日何が起こるかわからない。死というのは、誰にも1回は訪れるもので、死を前にしたらみんな平等なんだということを思い知らされた。いつ死ぬか分からないなら、悔いがないように生きたいじゃないですか。

 今までは「経験値を上げたい」と思ってやってきたことも多くて、それはもちろん無駄ではなかったと思います。やってきて良かった。

 でも、これからは、それが自分が全力を注げる作品かどうかを見極めてから参加したい。私は自分の全てを晒す覚悟で挑むので、そのことに対してリスペクトを持ってくれるスタッフに出会いたい。同じ志を持てる人たちと“ものづくり”をしていきたいなと、この作品と出会ったことで、強く思いました。


――今こうして、希子さんがものづくりに「本気で取り組みたい」と語る姿は、レイが七恵を本気で愛し抜く姿にもシンクロします。役者の面白いところは、役との出会いによって、それまで閉ざしていたかも知れない自分の扉が、一気に開けることがあることかもしれない。

 そうですね。「嘘なく生きる」というのが、レイと私の共通点だということに、レイという役と出会ったことによって気づけたのかもしれないです。

『彼女』は、自分たちなりの愛を探していく、滅茶苦茶大きな愛の物語だと思う。レイは不器用で、大胆で、手段を選ばないところがあって(笑)、そこがすごくチャーミングなんですけど、七恵との違いは、たくさんの愛を受けて育ってきたってことなんですよね。同性愛者であることを母親に理解されなかったり、学生時代にレズビアンであると噂されて疎外感を感じていたことはあったにせよ、愛というものがどんなに優しくて温かいものかをレイは知っていた。

 でも不器用だから、それも自分なりの愛の表現だと思い込んで七恵にお金を貸して、かえって七恵は自分が支配されてしまったような居心地の悪さを感じていた。経済的にも家族関係も恵まれていたレイは、「お互いが対等じゃなくなる」、残酷さに気づけないんですよね。

 10年後に再会した2人は、人を殺めたことで、一緒に苦しんで、一緒に悩んで、一緒に葛藤し、一緒に逃亡します。いろんなものを犠牲にしながら、レイは、七恵に大きな愛を伝えることができます。2人がちゃんと大きな愛に包まれたとき、レイは七恵を所有するんじゃなくて、手放すような気持ちになっている。それが、2人にしか辿り着けなかった愛の形で。たぶん、どれが正解とかじゃない。

 とにかく、「全力でやりました!」と言い切れる作品です。自分にとって愛するって何だろうと考えるきっかけになったり、身近な人を大切にしようと思ったり、身の回りの愛について考える時間になってくれたらいいな、なんて思います。


水原希子(みずはら・きこ)

1990年米国生まれ。モデル、女優、デザイナー、プロデューサー。2003年よりモデルとして活躍。女優デビューは映画『ノルウェイの森』(2010)年。18年にはアジア人初のDior Beautyアンバサダーに抜擢された。2021年公開の映画『あのこは貴族』の等身大の演技が話題に。最新写真集『夢の続き Dream Blue』がNetflix映画『彼女』が世界同時配信される4月15日に刊行。日常的な感性をアーティスティックなに発信するインスタグラムは570万人以上のフォロワーを持つ。

Netflix映画『彼女』


Netflix映画『彼女』

永澤レイ(水原希子)は、高校時代からずっと片想いしていた篠田七恵(さとうほなみ)が、夫から壮絶なDVを受けていると知り、七恵を救うためにその夫を殺害する。2人で一緒に逃避行する途中で、それぞれが根源的に抱えていた葛藤が浮き彫りに。愛や憎しみの感情がむき出しになっていく中、次第にお互いへの感情に変化が訪れ――。原作は、中村珍の漫画『羣青』。監督は廣木隆一。テーマ曲は細野晴臣が担当している。他にも真木よう子、鈴木 杏、田中哲司、南 沙良、新納慎也、田中俊介、鳥丸せつこらが出演している。

監督:廣木隆一
原作:中村珍「羣青」(小学館IKKIコミックス)
脚本:吉川菜美
出演:水原希子、さとうほなみ、真木よう子、鈴木 杏、田中哲司
Netflixにて2021年4月15日(木)より全世界独占配信

文=菊地陽子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=小蔵昌子
ヘアメイク=白石りえ

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