朝ドラ出演、会社経営…“生真面目な長女っぽさ”に悩んだ過去。小林涼子自身が語る「わたしの素顔」
CREA WEB / 2024年11月29日 11時0分
朝ドラ「虎に翼」で、日本初の女性弁護士のひとりとなったヒロイン寅子の先輩・久保田聡子を演じた小林涼子さん。彼女は俳優業をしながら、循環型農園の運営やアート事業などを手掛ける会社「AGRIKO(アグリコ)」の社長という顔も持っています。
会社経営をすることで「社会」について考えられるようになったと語る小林さん。それは、俳優業にも良い効果をもたらしたようです。
就活もしていない私が、会社を経営することになって
――現在、俳優業と会社経営という二つのことをやるようになって、気付いたことはありますか?
小林 今思えば、以前は社会について考える機会は少なかったように思います。役については掘り下げていたんですけど、その役の人物が置かれている社会がどんなものなのかを考えることは少なかったように思います。でも、会社を経営するようになってからは、その背景にも思いをより馳せるようになりましたね。
私は就活もしたことがないし、就職もしていない。俳優業だけをやってきたので、なかなか社会について知ったり考えたりする機会が人生でも少なかったんですけど、会社を経営するようになって、社会の流れや、様々な仕事、農業においても生産者さんがいて、消費者の方がいて、その間を繋ぐ様々な方がいて、そのおかげで自分たちも豊かに生活できていて……ということにも想像が及ぶようになりました。そして、それぞれの方たちの労力を考えると、値上がりしていると言われる野菜も高いものではないのかもしれないなとか、様々な立場や角度から考えられるようになりました。
そうやって、いろんなことが想像できるようになると、「虎に翼」で演じた久保田先輩が置かれていた時代とか、その時代に法律を学ぶということの意味、そして彼女が法律の勉強ができた背景も見えるようになったし、その裏で、その時代に法律家を志せなかった人たちもいるだろうとか、そんなことにも想像が及ぶようになりました。
――よいタイミングで「虎に翼」に出会われたんですね。
小林 「虎に翼」で描かれていることって、その当時だけの話ではないんですよね。彼女たちを苦しめてたことは、現代に生きる私達のことを、いまだに苦しめていたりすることもあるわけです。一方で前進していることももちろんありますし。俳優業をやっていく中で、新しい視座ができたことが、起業してよかったことだと思います。
素の“涼子”は「できれば何もしたくない!(笑)」
――前篇のインタビューで、ご自身が久保田先輩に似ている部分もあるんじゃないかと言われていましたが、どのようなところで思われますか?
小林 今回みたいに女性経営者としても取材していただくときには、経営者として弱音を吐けないなという思いがあります。経営する上では、良いこと、楽なことばかりでは決してないけれど、自分が弱音を吐いたり挫けてしまったら後に続く人が諦めてしまうこともあるかもしれない。そういう意味では、久保田先輩が弁護士として前に進んで行く中で、「自分が折れてしまったら終わりだ」という責任感を持っていたこととリンクするようなところはあると思います。
――素の小林涼子さんとしては、どんな個性があるんですか?
小林 俳優ではなく、‟小林家の長女の涼子”になったときは、できれば寝られるだけ寝ていたいし、できれば何もしたくない(笑)!
――起業をして、会社経営と俳優の仕事を両立している小林さんからは想像もつかないですね。
小林 そのギャップに苦しむ日もあります。でも、経営と俳優業を両立をしているからこそ、「できない」こともあるんだと思えるようになりました。以前は完璧主義で、来たメールは即レスしたいし、撮影現場になるべく早く到着しておきたいと思っていました。最近はマネージャーさんのメールを返信しそびれてごめんなさいって慌てることも……。
申し訳なさは変わらずにありますが、以前の私なら120%ちゃんとできないことにストレスを感じていたけれど、今はマネージャーさんはじめ、会社の仲間、自分の味方には少し甘えてもいいかなって思えるようになって、生きるのが少し楽になったところはあります。そういうところは、長女っぽいのかもしれません。俳優業では、そういう生真面目な性格が出てしまって「個性のなさ」につながっているのかと思ってたんですけど、結果として、「生真面目」という個性を生かして気づいたら会社経営してました。
「少し疲れていた」ときに始めた農業が、いつの間にかたくさんの従業員が働く会社に
――小林さんが農業を始めたきっかけは?
小林 元々は新潟県で父の友人の田んぼをお手伝いをしたところから始まりました。2014年頃で、自分自身が少し疲れていたころだったんですけど、右も左もわからない私のことをみんながすごく優しく迎えてくれたし、できないことがあっても手取り足取り教えてくれました。
その後、家族の体調不良をきっかけに、諦めて辞めてしまうのではなく、それでも続けられる持続可能な農業をしたいと思って起業したんです。新潟の皆さんと一緒に農業をして感じた幸せな気分をみんなにお返ししたいと思ったし、これからもおいしいものを食べ続けられる社会であってほしいと思いました。少しずつ、自分の半径5メートルくらいから、じわじわと幸せが広がっていけばいいなって思って続けています。
――昨今、いろんなメディアで「持続可能な社会」について取り上げられることは多いと思うんですけど、小林さんは、一歩具体的なことに踏み込んで取り組んでおられるのかなと思います。
小林 現在の私は、稲作もやってるし、都会のビルの上での農業もやっています。また、農林水産省食料・農業・農村政策審議会食糧部会 臨時委員をさせていただき食や農業に関してお話するラジオのナビゲーターもやってるんですけど、そういうことを通じて何がやりたいかっていうと、「おいしい」を守る仕事をしたいんです。
おいしいものはお金を買えば手に入ると思っている人も多いと思うんですけど、それって恵まれたことで、決して当たり前ではなと思うんです。だから、そんな風に当たり前に思えることの背景には、「おいしい」って思える心身のウェルビーイングな社会がある。
そのためにも、障害があってもなくても続けられるバリアフリーな農業を目指したいし、その方々が安定して働ける環境が作りたいと思って会社を続けています。
――そのために、どのような仕組み作りをされていますか?
小林 今、私以外パートアルバイト含め約30名が会社で働いています。農園業務のスタッフには主に子育て世代の女性たちが多く、働きやすいようシフトや体制強化を行っています。私がフロントに立ってはいますが、自分だけではこの会社は成り立ちません。起業までの農業体験から自分の非力さを知り私ひとりでは植えられる苗の数は限られているので、みんなで、会社としてその課題を解決していきたいと考え、アグリカルチャーの子どもになるという意味で、会社の名前を「AGRIKO(アグリコ)」とつけました。
起業をしてから桜新町、白金と農園を開園し、今年はアート事業の拡大と日々慌ただしく過ごしています。自分の前を歩いている経営の先輩方に聞いても、前に進めば進むほど忙しくなっていくと聞き、まだまだ頑張ることの多さにドキドキしています。日々精進、俳優業も会社経営も頑張りたいと思います。
【前篇を読む】「虎に翼」を振り返って…小林涼子「会社経営の経験が、久保田先輩役に活きた」
小林涼子(こばやし・りょうこ)
1989年生まれ、東京都出身。子役としてデビュー後、NHK連続テレビ小説「虎に翼」をはじめ、数多くのドラマや映画などへ出演が続いている。俳優業の傍ら、2014年より農業に携わり、家族の体調不良をきっかけに2021年株式会社AGRIKOを起業。農林水産省「農福連携技術支援者」を取得し、自然環境と人に優しい循環型農福連携ファーム「AGRIKO FARM」の運営、アート事業を展開。さらに報道番組への出演やラジオナビゲーターなどパラレルキャリアで活動の幅を広げている。
Instagram @ryoko_kobayashi_ryoko
株式会社AGRIKO
www.agriko.net/
衣装クレジット
トップス、パンツ(LOVELESS)
www.instagram.com/loveless___official
文=西森路代
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=髙 千沙都
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