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無敵すぎる悪役を怪演! 香港No.1ヒット作でブレイクしたアクション俳優フィリップ・ンのこれまで

CREA WEB / 2024年11月29日 11時0分


フィリップ・ンさん。

「香港映画祭2024 Making Waves - Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」で公式初来日したフィリップ・ン。これまでは知る人ぞ知るアクション俳優だった彼が、“愛される悪役”を演じた香港No.1ヒット作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』でブレイクするまでのキャリアを振り返ってくれました。


教師の道から、憧れの香港映画界に飛び込む


フィリップ・ンさん。

――幼い頃から、詠春拳や蔡李佛拳といった中国武術を習われていたフィリップさんですが、幼い頃の夢は?

 私は蔡李佛拳の継承者である父親だけでなく、2人の叔父も中国武術の先生という家庭環境で育ちました。そして、やんちゃな性格だったこともあり、渡米した7歳から武道を学びました。

 その頃は特に大きな夢はありませんでしたが、13歳のときに同級生にいきなり殴られ、倒されてしまったんです。そのとき、「自分は今まで何を学んでいたんだ?」と疑問を感じ、真面目に武道を学び、それを極めて、立派な武道家になろうと思いました。

――アクション俳優を目指したのは?

 アメリカではシカゴに住んでいて、これといった娯楽がありませんでした。そんなとき、両親がチャイナタウンでジャッキー・チェンさんの『ドランク・モンキー/酔拳』のビデオを借りてきたんです。それを観たときの衝撃はかなりのもので、「ジャッキー、カッコいい!」「香港映画、スゴい!」と思い始め、アクション俳優に憧れを抱くようになりました。


フィリップ・ンさん。

――とはいえ、大学卒業後にはグラフィックデザインや教育学を学び、教育免許も取得されます。でも、夢を諦められず、24歳のときに一念発起して、香港映画界に飛び込まれます。

 とても教育熱心だった両親に対し、長年「アクション俳優になりたい!」とは言えませんでした。ある日、両親に告白したところ「万が一、アクション俳優の道が上手くいかなかったら、教師をやればいいだけ」と、背中を押してくれたんです。

 それで香港に戻り、チン・カーロウさんが率いるスタントマンチーム「錢家班」のメンバーになりました。それから間もなく、『ツインズ・エフェクト』(02年)のオーディションで端役のヴァンパイア役に選ばれました。そして、早くも憧れのジャッキー・チェンさんと共演することができたのですが、そのオーディションに立ち会っていたアクションチームの一人が、その後、何度もお世話になる谷垣健治さんでした。

 健治さんは今でもそのときの映像を持っているようで、冗談で「現場で言うこと聞かないと、オーディションのときの恥ずかしい映像を晒すぞ!」と言ってくるんですよ(笑)。

人気スターとの共演作で、着実にキャリアを積む


フィリップ・ンさん。

――『ツインズ・エフェクト』と同じ02年に公開されたF4のヴァネス・ウーさん主演の『スター・ランナー』も、フィリップさんにとって大きな転機になった作品ですよね?

 この作品は俳優やスタントマンとしてのほか、チン・カーロウさんの下で初めてアクション監督も務めた作品です。しかも、ヴァネスとアンディ・オンという、自分の人生で大切な2人の親友と出会うことができたことも大きいです。撮影ではワイヤーを使った危険なスタントも多く、回転の仕方や落ち方を間違えたことで、意識を失ってしまうこともありました。

 一度失敗してしまうと、その後が怖くなってしまうのですが、ガーロウさんに叱咤激励されながら、なんとかやり切ることができました。


フィリップ・ンさん。

――07年のドラマ「詠春」ではニコラス・ツェーさんと共演したほか、詠春拳を通じて師弟関係になりました。

 私はずっと詠春拳を学んできたこともあり、ニコラスから「ドラマ撮影のためだけでなく、本格的に詠春拳を教えてほしい」と言われました。それ以来、彼は真剣に取り組んでくれました。ある日、ホテルのニコラスの部屋のドアが開いていたんです。それで彼をビックリさせようと思って、部屋に忍び込んだら、ニコラスは詠春拳ではない別の拳法の練習をしていたんです。

「詠春拳以外も本気に学びたい」という彼の貪欲な精神に圧倒され、さらに親交を深めていきました。その後、ニコラスは『新少林寺/SHAOLIN』(11年)でも詠春拳を披露しているのですが、独自の技を組み込んでいるんです。今の彼は料理人としても知られていますが、とにかく何に対しても真摯に取り組む性格なので、きっと星付きレストランのシェフ並の腕前だと思います。


フィリップ・ンさん。

――そして、フィリップさんの代表作といえる『悪戦』(13年・京都ヒストリカ国際映画祭にて上映)。これまでジミー・ウォングや金城武らが演じてきた人気キャラ、馬永貞を演じられました。

 プロデューサーのウォン・ジンさんが、僕のために潤沢な製作費を集め、『酔拳』のユエン・ウーピンさんをアクション監督として招いてくれた初主演作です。馬永貞の親友役は私生活でも親友のアンディ・オンに決まったことで、ウォン・ジンポー監督はもともとの脚本に手を加えてくれて、2人の関係性が生き生きと描かれたと思います。

 このとき、サモ・ハンさんとも共演できて、とても光栄でした。私はこれまで50本近くの映画に出演していますが、「フィリップ・ンのベスト作品は?」と聞かれたら、『悪戦』と答える人がいちばん多いぐらいの自信作です!

ブルース・リーを演じたときのプレッシャー


フィリップ・ンさん。

――アメリカ映画『バース・オブ・ザ・ドラゴン』(16年)では、若きブルース・リーを演じました。詠春拳の師でもある伝説の人物を演じるプレッシャーはありましたか?

 ドラマ「城寨英雄」(日本未公開・15年)に出演しているとき、アンディ・オンの自宅で僕のプロモーションビデオをじっくり撮り、アメリカの会社に送ったことを覚えています。それを気に入ってもらえて抜擢されたのですが、それから「誰もが知っている伝説の人物を演じるなんて!」と、かなりのプレッシャーを感じました。

 その後、できるだけ彼についてリサーチし、理解を深め、「もしブルース・リーが、この状況に立ったら、どんな反応をするか?」ということを念頭に置いて演じました。アクション監督のコーリー・ユンさんにも、いろいろ助けてもらいました。


フィリップ・ンさん。

――そして、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(24年)では最強のラスボス・王九(ウォンガウ)役を怪演されます。見た目のインパクトに加え、谷垣健治アクション監督による無敵すぎる強さもあり、悪役ながら、子どもや女性からも愛される人気キャラとなりました。どのような役作りをされたのでしょうか?

 王九のキャラ造形としては、長髪で、ヒゲをたくわえ、大きめのサングラスをかけているという3点セットがあります。それを身に着けたとき、周りのスタッフから「観客は王九を演じているのが、フィリップだと分からないよ」と言われ、とてもワクワクしました。健治さんたちのアイデアから気功の使い手として、さまざまなアクションにも挑戦しました。

 さらにソイ・チェン監督からは「キャラがより映えるために、他人とは違う特徴的な笑い方をしてほしい」という要求がありました。いろんな笑い方を研究したのですが、正直クランクインしたときには、明確な答えを出すことができませんでした。


フィリップ・ンさん。

――その後、どのタイミングで答えを見つけ出すことができたのでしょうか?

 その翌日に、道具箱の中から武器を選ぶという、大ボス役のサモ・ハンさんとのシーンがありました。そのとき、子どもがおもちゃを選ぶようにキャッキャッして、武器を選んでいたら、現場のスタッフがバカ受けしていたんです。そのとき、「この方向性で行ける!」と、笑い方に確信が持てました。控えめにやってもダメだし、オーバーにやりすぎてもダメ。そのさじ加減はとても難しかったですが、監督を信じてやって本当に良かったと思います。

 ちなみに、このシーンは当初カットされてしまったのですが、香港で大ヒットしたことで、エンドロール後の「特別映像」として復活したんです。日本でも大ヒットして、このヴァージョンも上映してほしいですね(笑)。

香港アクション映画に対するこだわり


フィリップ・ンさん。

――新たな代表作が生まれ、今後の活躍も期待されますが、将来の目標は?

 今後製作が予定されている『~決戦!九龍城砦』の前日譚はもちろんですが、これからも幼い頃の僕が憧れていた香港のアクション映画にたくさん出演したいです。

 親友のアンディ・オンと主演した最新作『無名火』では、プロデューサーとアクション監督もやりました。『~決戦!九龍城砦』に比べると、低予算で撮影日数も少ないアクション映画ですが、サモ・ハンの次男であるジミー・ハンさんや、『ファイティング・タイガー』のタイガー・チェンさん、『イップ・マン 完結』のクリス・コリンズさんといった仲間も参加してくれました。現在、最終的な編集中なので、公開が楽しみです。

 また、12月からは新たなアクション映画の撮影に入るので、いま身体を作っているのですが、日本は美味しい食べ物ばかりなので、本当に困っています(笑)。


フィリップ・ン(伍允龍)

1977年9月16日生まれ。香港出身。7歳のときに渡米し、さまざまな武術を学ぶ。01年に香港映画界入りし、俳優・スタントマン・アクション監督として、『スター・ランナー』(03年)、『孫文の義士団』(09年)、『悪戦』(13年)、『ダブルフェイス 潜入者』(19年)など、これまで50本近くの作品に携わってきた。

文=くれい響
写真=三宅史郎

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