「視聴率至上主義は東京の論理」『水曜どうでしょう』ディレクターのテレビ論

日刊サイゾー / 2013年11月18日 13時0分

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 世間をにぎわせた『ほこ×たて』(フジテレビ系)のヤラセ問題。ヤラセに至った構造的問題について、いまだフジテレビからの説明は一切行われてない状態だが、過去にはギャラクシー賞や日本民間放送連盟賞などを受賞し、ゴールデン昇格後は高視聴率を誇ったこともある番組だけに、「最近の低視聴率を食い止めるため、過剰演出に走ったのでは」と、業界関係者の間ではささやかれている。

 視聴者を裏切っても、数字を重視する――このような視聴率主義に対し、“それは東京の論理だ”と異議を唱える人物がいる。『水曜どうでしょう』のディレクターである北海道テレビ放送(HTB)の藤村忠寿氏だ。

 ご存じの通り『水どう』といえば、ローカル局制作ながら熱狂的なファンを生み出した“お化け番組”。10月2日からスタートした新作の第一夜放送分は北海道テレビ放送で16.1%という高視聴率をマークし、さらに10月末に発売された最新DVD『水曜どうでしょう 原付西日本制覇・今世紀最後の水曜どうでしょう』も、オリコン週間DVDランキングで1位を記録。1996年のスタートから17年たった現在も、そのコンテンツの強さを見せつけている。

 そんな『水どう』の生みの親の一人である藤村氏は、先日発売されたインタビュー集『テレビ番組をつくる人──あの番組をつくった、あの人に、思いきり叫んでもらいました』(PHPパブリッシング)でテレビ論を展開。「キー局さんが『本流』であるならば、我々は『脇道』」「脇道だからこそ、本質的なテレビ番組づくりを、正々堂々とできる」と、ローカル局ならではの姿勢を説き、視聴率の問題に対しても「視聴率はまったく気にしていませんし、気にする必要がないと思っています」と断言している。

 しかし、なぜ視聴率を気にせず番組づくりができるのか。その理由を藤村氏は、「スポンサーも、ローカル局番組の視聴率の高低を問題にはしていないはずです」と話す。「視聴率が数%違ったからといって、ビジネス的にもほとんどインパクトはありません」というのだ。500人に番組を“なんとなく”見られるより、50人に“熱狂的に”見られることをスポンサーも望んでいる、というのが藤村氏の見解だ。

 キャスティングや内容のわかりやすさ、過剰な演出。そうしたことにとらわれ、視聴率に縛られる番組づくりは、キー局(=本流)に任せればいい。視聴率主義というビジネスの論理に一切翻弄されない番組づくりに専念できるからこそ、ローカル局は「自由」であり、面白い番組を生み出す土壌がある──このローカル局の矜持から生まれたのが、『水どう』なのだろう。

 そんな『水どう』はキー局では考えられないほどの低予算番組と思われるが、「そもそもいい番組をつくるために最も不可欠なものって何でしょうか。お金でしょうか。違います。人間関係です」と藤村氏は語る。そして、『水どう』が支持される理由も、「私と大泉との人間関係にあると思っています」と、堂々と話す。大泉とは、もちろん同番組がきっかけで全国区となった俳優の大泉洋のことだ。

「私は、あの番組では、大泉に好きにやらせるんです。あえて。そうすると、彼も、困惑しながらもきちんと彼らしいことを出してやってくれる。私は彼に魂を預ける、彼も私に魂を預ける──そういう信頼関係の上に成り立っています」
「事実いい加減な部分は多いのですが(笑)、人間関係の部分だけは『いい加減』では絶対にダメなんです」

 視聴率よりも視聴者を見つめ、制作費よりも人間関係を重視する。番組づくりの問題が次々と明るみに出る今、「自分たちにしかできないオリジナリティ」を追求するローカル局にこそ、キー局が立ち返るべき原点とテレビの未来があるのではないだろうか。
(文=編集部)

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