「人を殺すのは蚊を殺すのと同じ」土浦連続殺人事件・金川真大の仮面の下に潜む狂気

日刊サイゾー / 2014年6月29日 16時0分

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 凶悪犯罪者に対して、「彼は理解不能なモンスターなどではない」という言葉をよく耳にする。犯罪者を「普通の人」であると強調することで、「私たち」のこととして事件を探ろうとする取り組みだ。その場合、結論はほぼ決まっている。「社会の状況が、周囲の環境が、彼を事件に至らしめた。だから、凶悪犯罪者もまた、ひとりの『被害者』である」と。

 なぜ、事件が起こってしまったか、どうすれば再発防止できるのかを考えるにあたって、そのような視線はとても重要だ。けれども、時折、この人は本当にただのモンスターなのではないかと思ってしまうような犯罪者もいる。読売新聞水戸支局取材班による『死刑のための殺人: 土浦連続通り魔事件・死刑囚の記録』(新潮社)に描かれた、土浦連続殺傷事件の犯人・金川真大の姿は、とても人間のものとは思えないのだ。

 2008年3月、アルバイトもせずに実家に引きこもっていた金川は殺人を決意する。自宅近くで偶然出会った72歳の老人を殺害し、秋葉原へ逃亡。そして2日後、再び、自宅近くのJR常磐線荒川沖駅に姿を現すと、警察官を含む8人を殺傷し、うち1人が死亡した。逮捕後には「誰でもよかった」と供述する。

 金川が犯行に及んだ理由はただひとつ、「死刑になりたいから」だ。彼は、失敗の可能性のある自殺という方法ではなく、確実に殺してもらえる死刑制度を利用するために9人の人間を殺傷した。通常、死刑判決は、2人以上を殺害した凶悪犯に適用される。逮捕後の金川は、死刑判決を下されるためには「殺した人数が少なかったのではないか」と怯えていた。

 読売新聞の取材班が面会に訪れると、彼は、落ち着いた様子ではっきりと受け答えをしている。「多くの人はこの青年が9人もの人を殺傷したとは、すぐには信じられないだろう」と、取材班の中心メンバー・小林泰明は振り返っている。だが、新聞記者の観察眼は「一見して丁寧だが、無表情の仮面の下に、狂気が潜んでいる」ことを見逃さなかった。

「人を殺すのは蚊を殺すのと変わらないですね」
「ライオンはシマウマを殺すとき何も感じない。それが自然ということ。人間はそこに善だの悪だの持ちだしているだけ」

 金川には、人を殺すことに対しての「悪」という感情がない。それどころか自分は常識に洗脳されておらず、「この世の真実に気づいた」人間だと豪語するのだった。裁判でも同様の言動を見せ、反省の欠片すら見られない金川。死刑になりたい、それだけが彼の希望なのだ。そして、望み通り死刑判決が下されると、金川は「完全勝利といったところでしょうか」とほくそ笑んだ。

 小林ら取材班は、事件を追う過程で「金川の人間性を呼び起こす」ことを決意する。「浅はかだったと思わないのか」「被害者に対してどう思うのか」と金川を問い詰めて、反省の言葉を引き出そうと試み、学生時代の友人を連れて行った面会では、金川が涙目になったことから、その人間性が取り戻せるのではないかと期待した。だが、小林らがどんなに理解しようと近づいたところで、金川の心が揺れ動くことはなかった。教誨師も付けず、再審請求をすることもない。それどころか、金川は「なんで殺さない?」「6カ月以内に(刑を)執行しないのは法律違反だ」と、法務大臣に手紙を送り続けていたのだった。金川を「キンちゃん」という愛称で呼び、距離を縮めようとした拘置所の職員は、「生きたい、とは思っていなかったんです」と、拘置所内での姿を振り返る。そして、13年2月、東京拘置所の地下で金川真大は死刑に処された。

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