本当のヒロインは及川光博? キスマイ玉森主演『信長のシェフ』のケレン味

日刊サイゾー / 2014年7月16日 16時0分

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「おもしろ時代劇です!」

 及川光博は、『信長のシェフ』(テレビ朝日系)をそう形容している。

『信長のシェフ』は、平成のフレンチシェフ・ケン(Kis-My-Ft2玉森裕太)が戦国時代にタイムスリップし、織田信長の料理人として生きていく物語である。2013年1月から深夜枠で放送されていたが、今年7月よりゴールデンで第2シーズンが始まった。

 もちろん物語が分かりやすく面白いというのもあるし、主演の玉森の好演も光る。だが、なんといってもその好評の大きな要因となっているのは、織田信長役を演じるミッチーこと及川光博の怪演だろう。

「人生で一度は信長を演じてみたかった」という及川は、実に楽しそうに「美味じゃ!」「フハッハッハ!」などと、ケレン味たっぷりに信長を演じている。必要以上に「バッサー!」とマントを翻しながら。かと思えば、突然、河原で「人間五十年~♪」と敦盛を舞ったりする。訳が分からないが、もう笑うしかないトンチキっぷりだ。

 及川が「おもしろ時代劇」というように、同作は史実とフィクションのバランスが絶妙だ。時代考証でがんじがらめになった昨今の時代劇とは一線を画している。合戦のさなか、ケンが焼肉を焼き、その匂いで敵の戦意を喪失させ、織田軍を勝利に導いたりするトンデモ展開。そして、信長の命を狙うのは毒が盛られた“地獄のマカロン”……。そんな中で、「岐阜へ戻る途中に信長が狙撃された」などという細かい史実のエピソードが描かれたりすると、思わずニヤリとしてしまう。ちなみに主人公のケンは、現代からタイムスリップしてきたため、歴史がどうなるかを知っているが、その知識はごくごく一般的なもの止まり。「もうちょっとちゃんと日本史の授業受けていれば……」と嘆くケンは「本能寺の変」は知っているが、「松永久秀」が誰で何をした人物なのかは知らない。多くの視聴者と同じか、少し知識がないレベル。そのあたりも巧妙だ。

 そんな物語を彩るのが、キャラの濃い登場人物たち。クールでミステリアスなくノ一の楓を演じるのは芦名星。家康はカンニング竹山。秀吉を演じるのはゴリ。サル顔というよりはゴリラ顔だが、ハマっている。稲垣吾郎は明智光秀。唯一、ケンが未来から来たことを察するキレ者で、何を考えているのか分からない男だ。

 信長の正室・濃姫を不気味に演じるのは斉藤由貴。及川と斉藤は『吾輩は主婦である』(TBS系)に続いての夫婦役だ。松永久秀には笹野高史が扮し、久々に悪い顔をのぞかせる。石山本願寺の僧・顕如を演じるのは市川猿之助。妖しくエロく、いかがわしい。そして、今期から登場した武田信玄を豪快に演じるのは高嶋政伸。

 すがすがしいほど漫画チックで、デフォルメされた戦国武将たちだが、そんな濃厚なメンツの中でも、頭ひとつ飛び抜けて圧倒的にキャラが立っているのがミッチー信長なのである。

 ゴールデンに昇格して増えたであろう制作費の大半を注ぎ込んだのではないかと錯覚してしまうような、豪華で華麗でキラッキラした信長の衣装。この作品において、信長はある意味で“ヒロイン”なのだ。物語上では、周囲は信長に翻弄されながらも、彼を喜ばせようと必死に振る舞う。信長は、無条件に“守るべき存在”になっているのだ。そのため、視聴者も彼の仕草から表情まで、一挙手一投足に釘付けになる。信長もそれを演じる及川も、愛さずにはいられない存在となっているのだ。

 ミッチーのキャラクターを最大限生かすようにケレン味たっぷりに“料理”した『信長のシェフ』。文字どおり「美味」な「おもしろ時代劇」なのだ。
(文=てれびのスキマ)

日刊サイゾー

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