名作『転校生』へのオマージュに終わらない! “入れ替わり”ドラマ『さよなら私』のファンタジーとリアリティ

日刊サイゾー / 2014年11月12日 15時0分

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「関わりたくない」

尾美としのりは、それまで「面白いなぁ」と読んでいた『さよなら私』の台本を途中でパタッと閉じて、そう思ったという。

 NHKドラマ10『さよなら私』は、人気脚本家・岡田惠和が、40代女性の本音と真の友情を描くドラマだ。主演は永作博美と石田ゆり子。二人は学生時代からの親友だ。仕事のできる夫・洋介(藤木直人)と名門幼稚園に通う息子・健人(髙橋來)がいるという、誰もがうらやむ家庭で専業主婦をしている友美(永作博美)。映画プロデューサーとして第一線で活躍し、独身を貫く薫(石田ゆり子)。それぞれ対照的な生き方ゆえ、いつしか疎遠になっていた。

 ある日、もう一人の親友である春子(佐藤仁美)から同窓会に誘われ再会し、二人の親密な時間が再び動き出す。だが、薫の何気ない一言で二人の関係に異変が起こる。それは、春子と友美がお互いの息子の話をしていたときだ。

「(息子が)友美の髪につかまって寝るんでしょ、かわいい」
「え? そんな話……私、したっけ?」

 自分が話さなければ知るはずもない家族の話を、なぜか薫が知っている。疑念を抱いた友美は薫の後をつけると、その予感は的中する。薫は友美の夫・洋介と不倫をしていたのだ。

 「うらやましかったんでしょ、私が。だから私から洋介を奪おうとしたんでしょ?」と詰め寄る友美に、薫は「あなたの旦那だから好きになったんじゃない。ひとりの男として好きなのよ」と反論し、なおも続ける。

「してないんだってね、子どもが生まれて以来。私とはしてるよ、会うたびに。楽しくセックスしてる」

 激高した友美は薫と取っ組み合いのケンカになると、勢いあまって、二人は長い階段を転げ落ちてしまう。

 どこかで見たシーンだ。そう、映画『転校生』のように階段から落ちた二人は、同じように心が入れ替わってしまうのだ。

「うわっ、入れ替わりもんか」

 尾美が台本をパタッと閉じたのは、そのシーンを読んだときだ。それまでリアリティあふれる大人のドラマという装いだったのに突然、使い古された「入れ替わり」というモチーフが挿入されたのだ。

 驚いたのは、視聴者も同じだ。SF的要素が入るなどという気配をまったく感じさせないまま訪れた急展開に、あっけにとられてしまった。言うまでもなく、尾美はそんな「入れ替わり」物語の元祖ともいえる大林宣彦監督の映画『転校生』の主演を務め、「入れ替わり」を経験している俳優だ。だから「1回入れ替わればいいですよね。もうあんまり関わりたくない」と笑うのだ。

 入れ替わりシーンでは『転校生』へのオマージュが捧げられていたり、そもそも本作のタイトルが『転校生』の有名なセリフの引用だったりしているので、尾美のキャスティングも当然、それを踏まえたものだろう。本作で尾美は、春子の夫・光雄を演じている。彼もまた、冬子(谷村美月)と不倫している。

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