海外で上映禁止となった実録サイコパスムービー、動機なき連続殺人鬼の記録『アングスト/不安』

日刊サイゾー / 2020年7月10日 12時0分

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 一部のマニアのみに知られていた「封印映画」が、37年の歳月を経て日本でその封印が解かれた。その映画のタイトルは、『アングスト/不安』(原題:『ANGST』)。1980年にオーストリアで実際に起きた一家惨殺事件を題材にした実録犯罪映画だ。1983年に『Uボート』(81)などで知られる俳優アーウィン・レダー主演作としてオーストリアで公開されるも、ショッキングな内容から1週間で打ち切りに。欧州全土でも上映禁止、イギリスとドイツではビデオも販売禁止となっていた。

 日本ではビデオバブル期だった1988年に『鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜』という邦題でVHSビデオがリリースされたが、わずか300本しか出荷されなかったため、ほとんど知られずに埋もれていた。そんなほぼ封印状態にあった作品が、コロナ禍に喘ぐ日本の映画館で初上映され、東京と大阪のメイン館が初日満席スタートという好調ぶりを見せている。

 ジェラルド・カーグル監督が自主制作した『アングスト/不安』の主人公となるK.(アーウィン・レダー)のモデルとなったのは、オーストラリを震撼させた連続殺人鬼のヴェルナー・クニーセク。実在した殺人鬼の主観映像と独白によって物語は進む。主人公の不安げな目線、殺意を抱く主人公の背後にぴたりと寄り添ったカメラワークが不気味だ。

 目に留まった民家をノックし、ドアを開けた老婦人に向かって、いきなり「撃ちますよ」と声を掛けてから射殺する。殺人の動機がまったくない、異常なオープニングとなっている。

 逮捕されたK.は精神障害を訴えるも、「動機なき殺人はありえない」と却下され、禁固刑が命じられる。刑務所内での態度が良好だったことから、最初の殺人事件から10年後の出所が決まる。だが、自由を与えられたK.は再び殺人衝動が抑えられなくなり、出所してすぐに一家惨殺事件を起こすことに。司法関係者のサイコパスに対する理解が乏しく、殺人に快感を覚える危険人物を野に放ったために起きた悲劇だった。

 一貫して暗く、陰鬱な映画だが、より注目したいのは映画の序盤で紹介される主人公K.=殺人鬼ヴェルナー・クニーセクの生い立ちだ。戦後間もないオーストリアのザルツブルクに生まれるも、シングルマザーからはネグレクトされ、私生児を嫌う祖母によって修道院に預けられる。だが、修道院で飼っていた動物たちを虐待したことを咎められ、実家へと送り返されてしまう。実家で待っていたのは、養父による体罰という名の暴力だった。

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