経済疲弊とタブー過多が起因? アメリカの懐古ドラマブーム

サイゾーウーマン / 2012年10月28日 13時0分

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――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す!

 アメリカでは5年ほど前からノスタルジックなテレビドラマが静かなブームとなっている。きっかけは2007年にスタートした、1960年代のニューヨークの広告業界を描いた『マッドメン』。とりわけ業界から大絶賛され、4年連続エミー賞を獲得した。『マッドメン』が視聴者に受けたのは、景気がよく、ケネディ大統領が活躍するなど若く躍動的な力がみなぎっている時代が舞台だからだと言われている。また、地上波に比べ規制が緩いケーブルテレビ専門チャネルで放送されたことにより、かつては普通だった現代のタブーをサラリと描いたことも「リアル」だと視聴者に受けたのだろう。人種差別や男尊女卑、妊婦がタバコを吸ったり、夫が妻にDVやモラハラまがいのことをするなど、「そのまんま60年代」を舞台にしたドラマを見て、人々は「半世紀でここまで変わったのか」と驚き、惹かれたのである。

 2010年にはアメリカ最大手ケーブルテレビのHBOが、1920年代の禁酒法時代を舞台にした『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』の放送を開始した。この番組は、巨匠マーティン・スコセッシを監督に迎え、一大歓楽街だったアトランティック・シティを牛耳った実在する政治家の半生をモデルに、壮絶で華麗、そしてダークな展開になっている。アメリカが未曾有の繁栄を成し遂げた20年代が舞台とあり、不景気に悩まされているアメリカ人視聴者は「過去のよき日々」に心をときめかせた。こちらも視聴者と業界の両方から高く評価されている。

 実はこれまでにも、ノスタルジックなテレビ番組は大ヒットしてきた。70年代に国民的番組と言われた『ハッピーデイズ』は1950年代の学生たちをコミカルに描いた作品、80年代にこれまた国民的番組と言われた『素晴らしき日々』は60年代後半から70年代前半の世界が舞台だった。1998~2006年まで放送されていたアシュトン・カッチャーの出世作『ザット'70sショー』も70年代が舞台の作品。ただ、この3作品は、コメディであり、シリアスな内容のノスタルジック・ドラマは『マッドマン』が誕生するまでメジャーではなかったのである。

 『マッドメン』『ボードウォーク・エンパイア』が成功を収め、ノスタルジック・ドラマがウケると知った地上波ネットワークは2011年秋、中年層の心をくすぐるようなノスタルジック・ドラマを2作、放送開始した。1つは、60年代に男性誌「PLAYBOY」とタイアップした高級クラブが舞台の『The Playboy Club』。こちらは「地上波で放送、セクシーすぎる」と批難が殺到し、たったの3話で放送が打ち切られてしまった。もう1つは、オンエアされる前から世界中で話題となり、放送が始まるとそのカラフルで明るい雰囲気に誰もが魅了されたドラマ。アメリカのフラッグ・キャリア(国を代表する航空会社)であったパンアメリカン航空の全盛期である60年代初期を舞台にした『PAN AM/パンナム』である。

サイゾーウーマン

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