【五輪ロゴ問題】」佐野氏擁護デザイナーの“選民意識”と陰謀論

デイリーニュースオンライン / 2015年8月27日 7時0分

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 2020年東京五輪ロゴを制作したアートディレクター・佐野研二郎氏の「盗用疑惑」が波紋を広げ続けている。ベルギーの劇場ロゴを皮切りに、名古屋・東山動物園のシンボルマークとコスタリカの国立博物館のマークなど次から次に“類似”の指摘が続出。サントリービール販促キャンペーン賞品の「フランスパン」「BEACH」などが描かれたトートバックは無許可模倣を認めて取り下げた。

 世間は動揺を通り越して呆れムードになっており、本題から逸れて一般デザイナーや素人が独自に考案した東京五輪の新ロゴをSNSに投稿するブームが巻き起こっている状況だ。

 その一方、佐野氏周辺のデザイナーたちからは擁護意見が噴出。一部でウワサされるデザイン界の“利権構造”なども含めて佐野氏をフォローするも、世間とかみ合わない状態になっている。

擁護デザイナーたちの“選民意識”に世間は違和感

 今月19日、あるネットユーザーがスペイン在住の日本人デザイナーが制作した非公式の東京五輪ロゴを取り上げたネット記事をFacebookに投稿。扇型のデザインが「日本らしくていい」と絶賛されているという内容であり、投稿主も「招致ロゴと甲乙つけがたいくらい素晴らしい」と褒めたたえた。

 ところが、この投稿にデザイナーたちから続々と批判コメントが書き込まれる事態に。「汚い」「いつからこんな恥知らずが跋扈するクリエイティヴ後進国になってしまったのか」「私は佐野くんのデザインは好き。とりあえず、メディアは無視します」などといった書き込みが相次いだ。

 さらには「美意識が無いとこういう発言でるよね」「解りやすく言えば、回転寿しのマグロでは、マグロと本マグロの味の差なんて解らないでしょう」「仮に、僕が(この非公式ロゴを)作ったら自殺しちゃうな」という、異常に上から目線の意見もあった。

 少なくとも、ネット上では絶賛されている非公式ロゴ。デザインは市井の人々に親しんでもらうためのものであり、いくらプロの視点は別とはいっても「一般人には良し悪しが分からない」と言ってしまっては身もふたもない。

 また、別のデザイナーは「本人がパクりじゃないって言ってるんだからパクりじゃないだろうし、ましてや『人を疑う』ということのほうが大きな罪だと思う」と自身のFacebookで意見表明。「トートバックのことでミスはあったかもしれない。それは長年やってきた仕事の、ごく僅かなこと」などと綴っているが、これも身内びいき感が強く世間の賛同はあまり得られていないようだ。

尾木ママのデマで糾弾が加速した?

 といっても、身内以外からも「そこまで叩くことなのか」と騒動を疑問視する声は出ている。デザインは「身近にあるアイデアや素材をモチーフにする」というセオリーがあり、特に五輪ロゴのようにシンプルさが求められるデザインは、世の中に無数にあるロゴと全く似ていないものを作り出すのは不可能に近い。

 ゆえに商品デザインやロゴをめぐる裁判は日常茶飯事であり、五輪ロゴが訴えられたからといって一概に「悪質なパクリ」と糾弾することはできないのである。

 8月26日に五輪エンブレム審査委員代表の永井一正氏が大手紙の取材に応じ、佐野氏の原案を修正してロゴを決定していたことを発表。「原案は劇場のロゴに似ていなかった」と明かしており、佐野氏ばかりを糾弾するのは行き過ぎに思える状況になっている。それでも佐野氏の炎上が鎮火しないのは、単純な盗用疑惑だけでなく“利権構造”が指摘されているためだ。

「五輪エンブレムの審査員は佐野氏の関係者で固められていた」との指摘があり、さらには国内の各デザイン賞を仲のいい身内で回しあっていたとの疑惑も発生している。経産省や佐野氏が過去に勤めていた大手広告代理店・博報堂の癒着、さらにはコンペの人間関係が利権を生み出しているという説が飛び交っている。

 だが、これについても業界内から「利権などない」という意見が噴出。一部では、200億円に上るとみられる五輪ロゴのライセンス料が佐野氏に入ってくるとウワサされたが、これは尾木ママ発のデマだった(後に自身が謝罪して発言を撤回)。ロゴの著作権は五輪の組織委員会にあり、デザイナーはコンペ賞金の100万円を得るのみだ。

「審査員が佐野氏の関係者ばかり」という情報も恣意的な側面が強く、実際に関係者に該当するのは審査員の3分の1程度とされている。デザイン賞を身内で回しあっていたとの説も、業界の規模を考えれば同じメンツばかりになるのは致し方なく、それが「利権」「癒着」といえるかは疑問だ。

必要なのは世間とデザイナー村の相互理解か

 この事態にある業界関係者は「不透明さが陰謀論を生み出してしまった」と指摘している。国家的な大事業のロゴがいつの間にか密室で決められ、それにケチがついたことで国民の不信感が爆発。当初、佐野氏がダンマリを決め込んでいたことも悪手となった。

 人間は自分の知らない分野に対して偏見を少なからず持っている。知らない部分が多ければ多いほど幻想や妄想を膨らませ、それが陰謀論を生み出す。いわゆる「世界経済は○○が支配している」「○○は秘密結社の陰謀」といった典型的なケースと同じ仕組みだ。

 図らずも、今回の五輪ロゴ問題は選考の不透明さゆえに陰謀論を生み出しやすい環境が整ってしまったといえる。だからといって、佐野氏にまったく非がないわけでもない。実際にトートバッグの件は盗用を認めているのだから、五輪ロゴについても納得のいく説明が必要だ。それをデザイナーたちが感情的な言葉で「やってないはず」と擁護し、疑惑の目を向ける一般人を選民意識丸出しで見下しているだけではデザイン業界と世間が乖離するばかりだ。

 無理解ゆえにネットで噴出する陰謀論とデザイナーたちの思い上がり。これでは噛みあうはずがない。両者の相互理解が進まない限り、今後もしばらく騒動は鎮火しないだろう。

(文/夢野京太郎)

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