「オレンジ共済詐欺事件」に酷似した武藤貴也議員の黒いカネ集め

デイリーニュースオンライン / 2015年9月17日 12時30分

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【朝倉秀雄の永田町炎上】

派閥の「教育機能」の低下が武藤のような不良議員を生む

 自民党の歴史はそのまま派閥の闘争の歴史でもある。派閥は業界用語で「ムラ」と呼ばれている。抜群の集金能力を持つ実力者が選挙資金まで面倒を見て子分どもを養い、結束し、数を競い、群雄割拠する。いざ総裁選ともなれば、ムラ単位で行動するのだ。

 総裁選は公職選挙法の適用を受けないから、いくらカネをバラ撒こうとかまわない。ムラがどの候補に肩入れするかは、カネ次第ということになる。かつて佐藤栄作元総理の後目を争った田中角栄と福田剋夫の、いわゆる「角福戦争」で田中がなかなか旗色を明らかにしていなかった中曽根派を抱き込み、福田をねじ伏せたのは、ひとえにカネの力による。

 ムラは札束が乱れ飛ぶ“金権政治“の土壌になりかねない反面、総裁選を活気づかせ、若手議員たちの教育機能をも営む。先輩議員が選挙のやり方やカネ集めの方法、やってはいけないことなどを指導するわけだ。ところが最近は派閥が弱体化し、教育機能も失いつつある。そうなると、当然、若手議員の質は劣化し、不祥事を起こすようになる。その典型が目下、世間を騒がせている武藤貴也衆議院議員だ。  国会議員に「良識を持て」「悪いことはするな」というのは、プロのドロボーに「物を盗むな」」というのに等しい。麻生太郎副総理の愛読書である『ゴルゴ13』の主人公・デューク東郷に「人を殺すな」というのと同じだろう。ちなみに武藤は離党するまではとかく「舌禍」や「暴言」の多い麻生の子分であった。

 筆者が国会議員の秘書として最初に仕えた某代議士は「極道と国会議員は所詮は半端者の稼業だ。政治にはカネがかかるから、たとえどんな悪辣な手を使っても貪欲に政治資金を集めなきゃならねえ。オレたちは常に刑務所の塀の上を歩いているようなもんだ」と公言してはばからなかった。国会議員の「悪事」といえば、政治資金収支報告書の虚偽記載か買収、公設秘書給与の詐取、口利きをして対価を貰う斡旋利得罪容疑などと相場が決まっている。

 その点、武藤議員の場合は極めて異質だ。武藤はよせばいいのに安保関連法案に反対する学生団体を「極端な利己的考えに基づく」などとツイッターで非難し、物議を醸したが、学生たちは60年安保闘争と同様、安全保障関連法案の中身など正確に理解せず、面白がって騒いでいるだけだから、武藤の心情も理解できなくはない。だが、それにしても表現が不適切すぎた。また『週刊文春』が報じる「同性愛疑惑」も、今や社会的に認知されているから責められないが、国有財産である議員宿舎に相手を連れ込んで“愛欲の巣”にしてしまったことは議員としての資質を疑われても仕方があるまい。

「オレンジ共済詐欺事件」とそっくりなカネ集めの構図

 最大の疑惑は、武藤と政策秘書の宮崎某が共謀して2014年11月に「『議員枠』で新規上場株が確実に買える。必ず儲かる」と称し、23人から4104万円ものカネを集めていたことだ。さらに株も買わずに6人の出資者に計700万円を返還していなかった。ちなみに宮崎某は久間章生元防衛相の秘書あがりだった男だ。

『週刊文春』よれば、Bなる人物が宮崎に銘柄を紹介し、宮崎が武藤に話を持ち込み、武藤らがAなる人物にカネを集めをさせて宮崎の口座に振り込ませていたという。株を買わずに宮崎が700万円を流用したというのだが、現職の国会議員が元本を保証し、高利の配当を約束して不特定多数の者からカネを集めた構図は、1996年に発覚した「オレンジ共済組合詐欺事件」と似ている。「出資法」は銀行など法律で認められた者以外が業として(不特定多数の者から反復継続して)「預り金」を受けることを刑罰をもって禁止しているが、これは典型的な出資金詐欺の手口でもある。

 武藤のケースがはたして詐欺に当たるかどうかだ。武藤らが本当に『議員枠』があって確実に未公開株を買えると信じていたか、端からそんなものは存在せず──つまり未公開株を買う意志がなく、単にカネ集めの口実に過ぎなかったかによるだろう。その点について武藤は取材に対し「議員枠」の存在を否定しているのだから、最初から未公開株を買う意志がはなかったと判断されても仕方なく、詐欺罪に問われる可能性も否定できなくなってくる。

「オレンジ共済組合詐欺事件」とは、当時、新進党所属の参議院議員であった友部達夫が引き起こした出資法達反及び詐欺事件だ。友部は1986年に「オレンジ共済組合」なる何やら怪しげな団体を設立し、1992から年6~7%もの配当を謳った「オレンジスーパー定期」なる商品を餌に不特定多数の者から約93億円もの大金を集めた。だが、利殖は名目で、ほとんどが選挙費用や政界工作資金だったといわれている。その後、借金返済などに流用されてしまったために行詰り、1996年に組合は倒産。出資者にもカネは戻らず、大規模な被害をもたらしただけだった。組合は出資法違反容疑で家宅捜索を受けたが、1997年1月、友部は詐欺容疑で逮捕され、2001年に懲役10年の実刑判決が確定している。

 驚くべきは友部が逮捕後、厚顔無恥にも参議院議員の座に留まり、何ら議員活動もせずに約1億6000万円もの歳費を国庫から巻き上げたことである。最後まで往生際が悪かったわけだが、その点では多くの心ある者から辞職を勧告を突きつけられながら、議員にしがみついている武藤もそっくりだ。もし武藤に少しでも良識があるなら、一日も早く議員を辞職するべきだろう。

朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中

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