厚労省「マイナンバー収賄で室長補佐逮捕」の歩き方

デイリーニュースオンライン / 2015年10月15日 8時0分

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 やまもといちろうです。金を払ってでも取りたい案件があるなら、何をするか考えるのが好きな方です。

 ところで、マイナンバー制度の実行に伴い、厚労省のデータ関連政策を一手に扱っていた部門の室長補佐であった中安一幸さんが逮捕されるという事件が勃発し、結構意外だなという話になっております。というのも、いろいろ報道では風体や雰囲気が役人らしからぬ中安さんは、この手の界隈ではそれなりの著名人であり、研究者方面にもいろんな便宜を図ってくれる「まともなお役人」風情だったからであります。

 担当職務が文字通りマイナンバー絡みだっただけに、人呼んで「マイナンバー汚職」などというありがたくもない蔑称がついてしまった本件なのですが、もともと税と社会保障の公的情報については大変な非効率を、国税庁、厚労省その他各省庁職員に強いていたことを考えると、1兆円で合理化できるのであればむしろ安いものだという世界の話です。

 それゆえに、世間の財布勘定からすると「そんな多額の利権を差配するのに汚職で絡むのはけしからん」という話になりやすいんでしょう。実際、システム開発で中小規模のシステムベンダーが請ける余地など実はほとんどないので、中堅以下のところはどうにかして受注に漕ぎ着けたいという気持ちが強かったのかもしれません。

中小企業でも参入可能

 産経新聞でも一部指摘がありますが、マイナンバー施行前の医療法人向けシステムはどこも「一品モノ」で、中小の開発会社でも食い込みようは幾らでもあり、大手は官公庁向け、中堅から中小は各医療機関向けの電子カルテや患者管理用のシステムをちまちまと請けるという棲み分けがあった世界です。

 以前、東京大学政策ビジョン研究センター教授だった秋山昌範さんの件でも、医療データの利活用を研究するにあたって医療向けシステムの開発実績のある、秋山さん奥方経営の会社に研究費用を迂回させたかどで摘発された事件がありました。ところが、蓋を開けてみるとそういう細やかな開発実績のある中小の開発会社というのはいろんなところに根を張っていて、頑張って営業してきたわけですね。担当弁護士は弘中惇一郎さんだそうです。

 今回の中安さんの件では、何しろ本人が収賄を認めておりますので、仮に贈賄側が時効成立していたとしても、今後のことを考えてきちんと立件しようとしたのは、襟を正すという意味でも正しい判断だったと思います。

 逆に言えば、それだけマイナンバー関連の発注においては仕様がしっかりと考えられていたわけで、贈賄するに値する見返りが中堅以下のソフトハウスにもあったということです。実際、今回の贈賄側のベンダーも充分な売上が得られたと見る向きもありますしね。やると決まったからには国民にとって利益のある形で、旨く着地し実現して欲しいと願う次第であります。

著者プロフィール


ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

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