【維新内紛】執行部vs大阪系…罵り合いのウラに蠢く5億円借金と13億円の交付金

デイリーニュースオンライン / 2015年10月17日 16時0分

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【朝倉秀雄の永田町炎上】

罵り合いの背後にある13億円の政党交付金

 カネが絡むと親子兄弟の間でも醜悪な泥試合に発展するのが世の常だが、これは「公党」でも例外ではない。口では「改革」だの「大阪都構想」だの「道州制」だのとご大層な事を宣うが、いざカネのことになると、そんなものはかなぐり捨て、欲望剥き出しになる。その典型が今の維新の党の内紛劇だろう。

 かつての社会党のように政府・与党のやることには「何でも反対」の“抵抗野党”に転落した民主党との合流を視野に入れる松野頼久代表ら執行部は野党再編を目指している。一方、橋下徹大阪市長や松井一郎大阪府知事らの「大阪系」は官邸とよしみを通じ、あくまで純化路線を貫いて「維新の党は偽物になった。改革政党をもう一度作る」と宣言。10月中に新たに国政政党「大阪維新の会」の結党を宣言したのだから、分裂と対立は避けられない見通しだ。

 ここで最大の問題は政党交付金の残額をどう分配するかだろう。「維新」の名を今後、どちらが名乗るのか、党が金融機関に作った5億円の借金をどちらが引き継ぐのかが焦点となる。その点について10月2日、松野代表と新党に参加する意向を表明している馬場伸幸前国会対策委員長が3度目の協議を行い、馬場は政党交付金の分配と「維新」の名の返上を求めたが、松野はこれを拒否。6日の4度目の協議も物別れに終わり、ますます溝が深まるばかりだ。

 腹を立てた橋下はツイッターで「維新の党の国会議員は楽しい議員生活を楽しんでいるだけで究極の税金の無駄遣いだ」「おおさか維新の会が本家本元の維新だ。偽物の維新の党は民主党と組んで消滅する」などと執行部を誹謗すれば、残留組の柿沢未途前幹事長が「罵詈雑言のレッテル貼りで正当化する。ご都合主義の極みだ」「(新党は)政権への協力で野党を分断するため偽物野党と断じざるを得ない」とやり返すなど泥試合の様相を呈している。

 ちなみに政党交付金は政党に対する企業・団体献金を制限する代償として、細川護煕内閣時代の1994年に「政党助成法」によって制度化された。総額は直近の国勢調査に基づく日本の人口を乗じて算出される。むろん原資は国民の血税だ。2013年の総額は約320億円。そのうち維新の党への配分額は約26億6400万円。4月、7月、10月、12月の4回に分けて交付されるが、残額の約13億3200万円をどうするかで揉めているわけだ。

「分党(分割)」と「分派」で扱いが違う政党交付金

 維新の党が二つに分かれる場合、党を解散してそれぞれが新党を立ち上げる「分党(分割)」と、解党はせず、「大阪系」が集団離党して新党を作る「分派」とがある。円満に「分党」で協議がまとまり、期限までに総務省に「分割政党届け」を提出すれば、残額はそれぞれの党の所属議員の数に応じて配分されることになる。だが、「分派」だと新党には翌年まで交付金は支給されない。10月分の支給日は20日だから、期限が迫っているし、11月の大阪市長と知事のダブル選挙には“軍資金”がいるから「大阪系」が何としても分け前にありつこうと躍起になるのも無理はない。

 さらに維新の党は「大阪都構想」の住民投票の広告宣伝費として約5億円を金融機関から借り入れている。松野代表や江田憲司前代表の立場からすれば、「大阪都構想」などというのは、稀代の大衆迎合政治家である橋下徹の荒唐無稽なパフォーマンスに過ぎない。この5億円は橋下の“道楽”のための借金のようなものだから、当然、新党の「おおさか維新の会」が引き継ぐべきだと考えている。だが、橋下らは「維新の党」はもともと自分たちが立ち上げたもので、松野らは「橋下人気」に便乗して当選したものだから、もし「分党(分割)」を認めないなら、借金も執行部側が背負うべきだとの認識だ。

 有権者は具体的に現在の政治のどこがどんなふうに悪いかを具体的に指摘できないまま、ただ漠然と「政治が悪い」と思い込む傾向が強い。そんな心理に乗じるように周期的に現れては消えるのが「新党」だ。細川護煕元総理の「日本新党」や渡辺喜美の「みんなの党」、橋下の「維新の党」などはその典型であろう。単なる思いつきで立ち上げたものだからいずれは雲散霧消する運命にあるが、有権者にはいかにも新鮮に映るから、一時的には「新党ブーム」を呼び、高い集票能力を誇る。

それに便乗したのが松野や江田、今井雅人幹事長ら残留組だ。松野は代表のくせに2012年12月と2014年12月の総選挙で連続して小選挙区で敗れ、「日本維新の会」と「維新の党」の名簿登載のおかげで比例区で復活当選し、かろうじて「命拾い」している。今井も比例復活組だ。柿沢もあまり選挙に強くなく、2009年の総選挙では「みんな」の名簿による比例復活だったが、2012年と2014年の総選挙で連続して小選挙区で当選できたのは「みんな」や「維新」の第三極ブームのおかげである。

 他人のフンドシで相撲を取り、「番付け」を上げてきた典型は江田前代表であろう。江田はもともと選挙には弱い男で、2000年の総選挙では自民党から立候補して無所属の中田宏に、2003年の総選挙でも無所属で出て岩國哲人に敗れている。それが渡辺とつるんで「みんな」の幹事長になったことで知名度が上がり、「結いの党」を経て維新に合流し、橋下と共同代表になった。さらに単独代表になったことで全国に顔が売れるようになり、選挙にもがぜん強くなったというわけだ。当然、橋下には足を向けて寝られない立場のはずなのだが、それでも「大阪系」にはカネも「維新」の名も渡したくないというのだから、いくらなんでも虫が良過ぎよう。「恩を仇で返す」という言葉は松野や江田、柿沢らのためにある。

朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中

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