吉田豪インタビュー企画:紀里谷和明「死んでもいいと思ってやってると何かが発生する」(3)

デイリーニュースオンライン / 2015年11月29日 10時0分

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 プロインタビュアー吉田豪が注目の人にガチンコ取材を挑むロングインタビュー企画。最後の騎士たちの戦いを描いた『ラスト・ナイツ』が大きな話題を呼んでいる映画監督の紀里谷和明さんのインタビューも今回がラスト。紀里谷さんのプライベートの交友関係などから人生と向かい合うスタンスまで、かなり踏み込んだことを聞かせていただきました! 読めば、あなたも紀里谷さんのことが好きになるはず!!

普通にしててもケンカを売ってると思われる

──Twitterでいうと、無邪気だなと思ったのが、地方で「今日はここで飲むから、みんなも来れば?」とかわざわざ書いたりすることなんですよね。

紀里谷 ハハハハハ! まあ、そういうのいいんじゃないかなと思うんですよね。所詮俺、裏方だから。

──もう裏方でもないですけどね。

紀里谷 それもよくわかんない。でも今回、全国いろいろ周って、写真撮影OKで誰に対してもサインするってやってるわけですよね。それはもちろん拡散していただきたいっていうのもあるんだけど、やっぱり驚かれるわけですよ。でも、写真っていってもただ突っ立ってるだけじゃないですか。何をしてるわけでもないし、サインだってちょっと手動かすだけの話で。それで「わーっ、うれしい!」とか言ってくれるわけですよ。「いや私は写真はダメで」とか、「サインはダメ」とか、ビッグな人はそうしないと面倒くさいことになるのかもしれないけど、俺なんかはそんな気はないですよね。それぐらいで喜んでもらえるなら、それでいいじゃんって思っちゃう。それで拡散していただいたら、すごいパブじゃん。いまどこ行ったって、「あ、これが噂の!」って言われるもんね。

──「しくじった人だ!」と(笑)。

紀里谷 そうそうそう。名刺を見せると、「ああ、これが噂の名刺ですね」って地方でも言われるのよ。それがまたテレビに出て、また道端に行くと「ああ、テレビで観ましたよ!」って言ってくれるから、それはそれで機能してるし、みんなハッピーだし。

──相当イメージよくなったんじゃないですか?

紀里谷 だから俺自身はわかんないですよ。教えていただきたい。

──面と向かっていけすかないって言われたことはないでしょうからね。

紀里谷 ない。お袋は前に言ってたけどね。「あなたはしゃべり方がキツい! 目つきが怖い! そんなカミソリみたいな目でこっち見ないで!」って。

──いくつぐらいのときですか?

紀里谷 20代。「あなたとしゃべってると怖いのよ、すぐに怒るし。私、あなたの周りにいるとしゃべり方から気をつけないといけないのよ」って。親父からも、「おまえ、もうちょっとお母さんに優しく話せ」と諭され。岩井(俊二)さんもこないだインタビューで言ってたよね、「初対面のとき、こいつひどいこと言う男だと思った」って。

スタッフ オカマが言うようなことを男言葉で言うからって。

──オカマの毒舌を(笑)。

スタッフ そうです。これがオカマだったらいいけど、男言葉で言うからこいつなんなんだと思ったって。

紀里谷 でも俺は岩井さんがそう思ってたなんて思いもしなかった。そのインタビューを読んで、「え、岩井さんもそんなふうに思ってたの? えーっ!?て感じなの。仲良くしてくれてるな、この人って思ってたの。それが違うんだね。『ダウンタウンDX』でも言ったけど、とにかく「表出ろ」って言われることが多いんですよ。

──ケンカを売った気はなくても。

紀里谷 うん。そういうことなんでしょうね。俺はふつうにしゃべってるつもりなんだけど。

──だいぶ、その手のトラブルも減ってはきてるんですか?

紀里谷 気をつけてますもん。だいぶ気をつけてる。俺としては愛情表現なんですよね。楽しくしゃべってる感じなんですよ。それが違うみたいですね。「おまえ、なんだよ!」って話になる。誠心誠意キッチリ話してるつもりなのに、それがそう映らない。まだちょっと頃合いをつかんでるような状態なんですよ。

──まだ!

紀里谷 フフフフフ。あなたがたはそうやって簡単に思うだろうけど、俺にはそうじゃないんだよ。だから逆にあなた方がアメリカとかに行って、向こうの人たちと話をして「なんでおまえはもっと意見を言わないんだ!」って言われたときにわかることなのかもしれない。

──向こう流の自己主張なわけですね。

紀里谷 そう。「俺こんなに言ってるつもりなんだけど」「いや全然。伝わんねえよ!」とか言われてる感じなわけ。それと同じで、俺は引いてるつもりなんだけど、「え、まだダメなの?」「これでも?」って思いますよ。



ケンカのときはお互いにグローブをつけて

──「表出ろ」って言われたときは殴り合いに発展するんですか?

紀里谷 ……年上から言われたら僕は出ません。年下から言われたら出る。

──そのへんはちゃんと線引きされてる。

紀里谷 だって年上やっちゃったって、そんなのって感じするじゃないですか。年下から言われたら敬意を表して出る。そいつが曲がりなりにも先輩に対してそうやって言うっていうことは、それなりの覚悟をもって言ってるわけだから。

──……でも紀里谷さん、キックボクシングやってますよね?

紀里谷 うん(あっさりと)。で、いろいろありーの、これはいかん、と。後輩にも「俺をそういう状況にさせちゃダメよ」と頼んだのよ。そしたら「飲むときには車のなかにグローブぐらい入れときましょうね。やるのはいいんだけど、今度からグローブを着けてやりましょう」とか、ホントにそういう話し合いがなされたんですよ。

──ルールがある闘いをしましょう、と(笑)。

紀里谷 そう。とか「相手が倒れないように、うしろから支えるというリングを作りましょうね」とか。

──なるほど、ロープ代わりにみんなが支える。

紀里谷 うん。ホントそんな話しましたよ(笑)。

──聞けば聞くほど好きになってきますね(笑)。

紀里谷 そうですか。そうやって口車に乗せられて俺があんまり言うと……大丈夫?

──ダハハハハ! 大丈夫ですよ!

紀里谷 日本の社会はわかんないからさ! 京都で「お茶漬け食ってって」って言われて、食ったらたいへんなことになっちゃうとかあるじゃん。あれよ。あれが日本に対して俺が思ってる感覚。

──「ぶぶ漬け食えって言ったから食べただけじゃん!」っていう。

紀里谷 そうそうそう! それと同じ感覚を僕は日本全部に対して持ってる。

──どこまで信じていいのかわからない。

紀里谷 あと、「これ名刺もらっていいのかな?」とか、「どっちに置くんだっけ?」とか、脚を組んだら怒られるんだろうなとか。

──意外と気を遣ってるのもわかりますよ。

紀里谷 意外と気を遣ってるんだけど、そのルールがまだよくわからないから、探り探り。でも大丈夫です、信じてます。

──読んだ人がみんな紀里谷さんのことを好きになるような記事になるように頑張りますよ。

紀里谷 うん、それは日本一だって聞いてますからね。聞き方がうまい!

──誉められた!

紀里谷 いや、これ新しい! だって、あまり質問しませんよね?

──そうなんですよ。基本、流れに任せる感じで。

紀里谷 これだ!

──自分の主張はそんなにいらないと思ってるんで。

紀里谷 それで相手にしゃべらせるというね。

──なんとなく舵取りするぐらいで。

紀里谷 その手には乗りませんよ!

──ダハハハハ!

紀里谷 どうぞどうぞ、どんどん聞いて。

──時間大丈夫ですか? そろそろタイムアップのはずなんですけど。

紀里谷 いや、まだ大丈夫でしょ? もう飽きました?

──いや全然。まだいいんですかってだけの話ですよ。

紀里谷 俺は全然楽しい! この会議室は2時間取ってあるから。



女性には尻に敷かれたいとどこかで思っている

──まだいいんだ! じゃあザックリしたこと聞いてもいいですか? 好きな女性のタイプは?

紀里谷 来た! 好きな女性のタイプ……これね、いつも言ってるのは、一緒に闘ってくれる女。俺がなんか撃ってたら、「はい」って銃弾の入ったマガジンを渡してくれるような感じ?

──「表に出ろ」って言われたらグローブを出すような。

紀里谷 そうそうそう、そんな感じ。「これ忘れないで!」「負けてきちゃダメよ」みたいなのがいいなと思うんですけど、でもやっぱりそこで「行っちゃダメ! そんなことしちゃダメ!」って言う女がいいんでしょうね、グローブを渡すよりも「わかったから! はい座って!」って言ってくれる女が。やっぱりどっかで精神的に僕はMなんだと思うんですよ。普段全然Mじゃないんですけど、自分が敵わないっていう女が欲しい。どっかで尻に敷かれたいんでしょうね。でも、なかなかいない(笑)。

──基本、日常会話の当たりが強いタイプじゃないですか。

紀里谷 強い。

──それを尻に敷くのはなかなか難しいでしょうね。

紀里谷 難しい。そこを圧倒的な何かで敵わないって思わせてくれる人がいればいいですね。料理がうまいとか、そんなのだったら俺だって練習すりゃできるよってなっちゃうし。もっと圧倒的な、浅田真央ちゃんみたいな、「そんなこと俺は絶対無理だよ!」「そりゃ敵わねえよ!」っていう相手がいい。

──宇多田さんの歌みたいに、何か圧倒的なものがあれば。

紀里谷 そう、圧倒的に。「これはもう敵わない、OK!」っていう。

──4AD(※紀里谷氏が好きな音楽レーベル)じゃ勝てないってことですよね。

紀里谷 そうそうそう(笑)。なんでもいいんだけど、それがあれば俺は幸せだな。だって教えるだけだったら簡単じゃないですか。なんか教わりたいんだと思う。

──人間関係にもそういうことを求めてます?

紀里谷 そりゃそうですよ。やっぱり俺の友達関係でキッチリ腹を割って話すみたいなことってあんまりないんですよね。一番仲がいいとされてるようなヤツらって、どっかでその人たちも何か背負ってるから、そこまで見せられないっていうのがあって。YOSHIKIとかもそうだし。仲良くいろいろ話すんだけど、最後まで見せられないよっていう親分気質みたいなところがあるわけですよ。

──YOSHIKI、GACKTなんてホントにロックスターとしての幻想をとことん守ってる二大巨頭ですからね。

紀里谷 そうそう。よっちゃんのほうがまだ……こういうこと言うとアレだけど(笑)。あとは先輩後輩みたいになっちゃうから、ホントに対等な関係はあんまりないですね。下の名前で呼び捨てで呼び合うとかほとんどない。だから山田孝之とか綾野剛とか見てるとうらやましいなと思うもんね。唯一、先輩になっちゃいますけど岩井さんにはいろいろ相談するし、ありがたい存在だな、いつも。

──最初のイメージは悪かったとはいえ。

紀里谷 悪かったとはいえ。優しい人だし。

──SUGIZOさんと音楽的な共通点があったっていうのは、ストンと腑に落ちた感じですね。

紀里谷 そうですか? スギちゃんだけですよ、俺が言ってることを100%理解してくれるのは。ふつうわかんないから。

──意外と河村隆一さんも音楽的にはそっち系なんですよね。

紀里谷 そうなんだ! ちゃんと話したことないから今度話そう。スギちゃんは全部理解してくれる。あ、スギちゃんもいろいろ悩みとか聞いてくれるな。俺のどうしようもない悩みを理解してくれる。

──今回の『ラスト・ナイツ』を作ってる最中に全部嫌になったみたいな話をしてましたけど、そういうようなことも相談するんですか?

紀里谷 もっと根源的な悩みを彼は聞いてくれる。YOSHIKIはもっとポジティブなイケイケな人なんだけど、スギちゃんはきわめて俺とベクトルが似ていて。この最悪な世界でどう生きようか、どう向き合うのか、みたいなところがテーマになってるんで。

──SUGIZOさんは基本、真面目な人ですよね。

紀里谷 基本は真面目だから、どうやったら自殺しなくて済むのか、みたいな話になっちゃいますね。

命を懸けないと刺激を感じられない

──紀里谷さんはよく「命を懸ける」的な話をされるじゃないですか。

紀里谷 そこしか何も感じられなくなってきちゃってると思うんですよね。とにかく、ありとあらゆることに不感症なんですよ。たとえば何かを観るとかどっかに行くとか何かを食べるとか、ある種セックスに対してもそういうところがあるのかもしれない。そういうものに対して何も感じなくなってきちゃってる。

──刺激が足りない。

紀里谷 刺激というものが刺激の機能を果たしてない。なんでかな、と。たとえば「どっか行きたいですか?」「何が欲しいですか?」「何食べたいですか?」「やりたいことはなんですか?」って言われてもなんにも答えられない。一時悩んで、すごい追及した結果、頭のなかにあるものを超えられないんだっていう答えが出てきちゃって。やっぱり何かすごいと言われてる景色を見るじゃないですか。それを僕は1回映像みたいなフィルターに落とし込んで、撮ったらこれもっときれいに撮れるよ、みたいなところがあるわけですよ。ハイビジョンになっちゃうと女の人がきれいに見えないってわかります?

──もうちょっと色をフォトショップで加工したほうがいいのになとか考えちゃうわけですね。

紀里谷 そうそうそう、なんか裸眼で見ると粗悪に見えちゃうというか、何を見ても、「ふーん」って感じなんですよね。頭のなかで見えてるビジョンのほうが勝っちゃうんですよ。そればかりか、ここはドローンで上から撮ったほうがいいんじゃないかとか、視点が勝つんですよ。たとえば……ま、いっか。信用しますから言いますけど、AVとかもいい例で、いろんな角度から撮れるわけじゃないですか。でも実際セックスをしてるとワンカメで、しかも目のカメラになっちゃってるわけですよね。それに近い感じがあって、現実で見るものが非常に凡庸に見えてしまう。

──こんなのただの素人のハメ撮りじゃん!と。

紀里谷 視点を変えさえすれば、ものすごくきれいに撮れるし、すごい絵にするよっていう自信があるんですよ。で、一時期ずっと死ぬ前にやりたいことリストっていうのをホントに真面目に作ってて。くだらないことから全部。それも、もう全部やっちゃったし。

──それで目標がなくなったというか。

紀里谷 それをクリアすると何かあるのかなと思ったら、結局なんの扉も開かなかったっていうね。そうなったときに、いま現在この瞬間とどう向き合うのかっていうことでしかなくなってきちゃうんですよ。たとえば今日はこうやってお話させていただいて、いまここに俺がいて、全部ここで話すんだっていう思いでキッチリ話をして。その真剣さでしか何も感じられないなっていうことに行き着いたわけですよ。外的刺激っていうか、外から得るものではどうしようもない。

──直接的なコミュニケーションじゃないと。

紀里谷 そう、コミュニケーションであり、何かにその瞬間全部を懸けていくっていう、その向き合う感じしか、もう何も感じることはないんだっていう結論なんですよね、いまは。たとえば映画を作っているという作業のなかでも、中途半端にやっちゃうと、やってられないんですよね、つらくて(笑)。でも、もう死んでもいいんだと思ってやってると、そこに何かが発生するんですよ。

──ギリギリな状況に自分を追い込むことで。

紀里谷 たとえばバイク乗っててすごいスピード出して、その瞬間それしかないってことでいっちゃってるときに何かがあるんですよね。キックボクシングやっててもそうだし、その瞬間に何かがあるんですよ。セックスもそうなのかもしれない。それだけなんですよね。だから命懸けでっていうのは誇張表現でもないし、そう思ってやってるんですよね。

──YOSHIKIさんとGACKTさんの共通点はそこでもあるんでしょうね。常に命懸けモードっていう。

紀里谷 ああ。よっちゃうんのほうがそうですね、GACKTはよくわかんないけど、よっちゃんはそういうところある。ビラ配りしてるときも、何枚配れるかっていうのも重要なんだけど、そこなんです。あとはもうなんにもいらない。いまはとにかく世界じゅうの人たちと何かを作って、作ったものを世界じゅうにお届けして、願わくばそのうち何人かに喜んでいただければ、それでもうほかに何もいらないっていうことだけ。そしたら、あらゆるノイズであったり何もかもが消えてなくなる感覚があって、非常にいいですよね。

──ものすごいピュアな人じゃないですか。

紀里谷 まあ、劇メーションも好きですし(笑)。ピュアかどうかはわからないですけど、そこで初めていろんな苦しみから逃れられる感覚があるわけですよね。若い頃っていろんなものが欲しいじゃないですか。自分が足りないところを武装しなきゃいけないし。

──高いスーツとか着て、誰よりも武装してきた人ですからね。

紀里谷 そう。でも、そこには苦しみしかないと思ったんですよ。だから今回だってみんなでこんなに一生懸命プロモーションやって、映画が当たるに越したことはないけど、でもここまでやってるんだから、そこから先は俺たちの範疇じゃないじゃんっていう領域までいくと、ハラハラもしないしドキドキもしないし心配でもない。「何が起ころうとしょうがないじゃん」「でも何か起こるだろうし」っていう感じなんですよね。もう何言われたってしょうがないじゃんっていう。

──ここまでやってるんだから。

紀里谷 俺、掛け値なしに全部自分でやってるって言えるしね。すべてがそうだと思うんですよ、映画だけじゃなくて。ここまで話してるんだから、これで妙に書かれたらもうしょうがないよねって、そういうことなんだと思う。

──ちゃんと伝わりましたよ!

紀里谷 そりゃあ、そうじゃないと(笑)。

──もういけすかない奴だとは思ってないから大丈夫です!

紀里谷 ハハハハハ! やっぱり思ってたんでしょ!

──もちろん思ってましたけど。

紀里谷 かわいそうだよね、俺という人が。(編集者に)思ってました?

編集 いや、『CASSHERN』好き派なんで。

紀里谷 ほら! いるじゃないですか。でも、「好き派」とか言われるんだ(笑)。『CASSHERN』を好きっていう隠れキリシタンのような人たちがいるんですよ。



丸くなったけど、まだまだ波風が立つ!?

──今回この取材にあたって、紀里谷さんのこといろいろ調べれば調べるほど好きになりましたよ。

紀里谷 そうですか! ほら!

スタッフ よかったですねえ。

紀里谷 よかった!

──当時知ってたら、毛皮反対のクラウドファンディングにも協力してましたよ。

紀里谷 やっぱり表に出て行かないとダメなんですね。どう思います? 僕はこれからどうすればいいですか?

──いまのままでいいと思いますよ。このぐらいの露出というか。

紀里谷 クイズ番組とかは出なくていい?

──『しくじり先生』ぐらいの尺でちゃんとやらせてもらえるといいんですけどね。

紀里谷 そうなんですよね。こないだキングコングの西野(亮廣)君にも言われたんだけど、「紀里谷さんは何十秒とかじゃわからない。ちゃんとキッチリ30分以上取って話を見せられるような番組じゃないと」って言われた。そうみたいですよ。

──西野さんもいけすかない国の人ですからね。

紀里谷 なんなんですかね? 俺はあの人見てて何も問題ないと思うけどな。

──基本、人に対してそんなにネガティブな感情を抱かないタイプなんじゃないですか?

紀里谷 うん。あんまりないね。よっぽど上から高圧的にくるオッサンとかは嫌だけど。権力の笠を着るとか、肩書でやるような人は嫌だな。昔からそうだった。学校の先生とか上級生とか、意味がわからなくて。なんの権限でそんなこと言ってんだよって。

──大人になってからそういうことに直面することは?

紀里谷 いっぱいあるじゃないですか。「どこそこの会社のナントカだけど」って言われることもあるし。そしたら帰っちゃうし。

──帰っちゃうんですか?

紀里谷 うん。こないだ銀座に呼ばれて飲んでたの。俺の知り合いがいっぱいいて、そのなかに取引先のナントカみたいな人がいて、まだ若いわけですよ。それが酔っ払ってて、「なになに? 映画を撮ってんだって? 俺、何度か映画に金出したことあるよ」とか言ってきたの。「年下だろ!」と思って。面倒くせえなと思って。しかしながら俺の友達の友達だから、あんまり言えないし。「それ何? いくら必要なの?」とか言うから、「30億ぐらいいただけますか」って言って(笑)。そしたら静かになっちゃって。それで俺が、「でしょ? 出せないでしょ? じゃあそっち座ってくださいよ」って言って。そういうのすごく嫌。

──年上、年下を気にしますね。

紀里谷 俺、ちょっとそういう縦割りの意識があって。年下にはフラットに接してるつもりなんだけど、年上の人にはちゃんとやる。ちょっと儒教の精神がどっかにあるの。

──ダハハハハ! 上下関係がキッチリした世界。

紀里谷 そう(笑)。だから、俺、礼儀正しい三代目 J Soul Brothersとか、EXILEのMATSUさんとか超話がしやすい。

──音楽的な接点はゼロじゃないですか。

紀里谷 音楽的にはゼロだけど、なんとなくその雰囲気は俺はすごいやりやすいわけ。

──ちなみに取材で怒ることはあるんですか?

紀里谷 あのね、それはしません! 沸々と思うことはありますよ。僕が一番嫌なのは、どんな人でもプロフェッショナルと呼ばれてる人がその人の本分をやっていないときに怒りがこみ上げてくる。「それでプロと呼んでいるんですか?」って。だからインタビューをする人がインタビューをちゃんとしていない、人の話を聞いていない。そもそもこういう答えをいただきたいというようなことで、こちらが言ってることをまったく聞きもせずに次の質問にいっちゃうと、「おまえなんなの?」っていうのがある。あと理解力に乏しい人たち。言ってることを理解しない人たちが、中途半端にインタビュアーとかライターとか言って来るのがすごく嫌。

──でも、その場では怒らない?

紀里谷 いや、怒ったら怒る。怒らないようにしてるんだけど、なるべくわからないようにして。でも、なんだってそうだと思いますよ。俺、子供の頃に教師がちゃんと教えてないなと思ったのよ。ホントに嫌、そういうの。それは言っちゃう。こないだも専門学校の理事長に面と向かって言っちゃった。

──講演のときですね(笑)。

紀里谷 なんで言っちゃうのかな……で。そういうのが多いんですよ、だいぶ減らしましたけど。

──だいぶ丸くなったけど、まだまだ波風起きそうな気がします。

紀里谷 ウチの親父もそういう人だったな。いまだに言っちゃうもんね。

──ボクのなかでちょっとした未来予想図ができてるんですよ。この流れでテレビに出ていくうちに誰かとぶつかるんだろうなって(笑)。

紀里谷 いや……。

──雑なイジり方をされたときにカチンときたり。

紀里谷 こないだもちょっと、ここまで出たんだけど我慢した(笑)。

──楽しみですよ、生放送で大物に雑なイジられ方をしてあきらかにスイッチ入るとか、帰っちゃうとか。事故を起こす気がしてるので。

紀里谷 でも、そういうのはいかんと思うんですよ。次の日に微妙に自己嫌悪に陥るんですよ、僕は。「また言っちゃったな……あぁ……」っていうのがあるんで、なるべくそうならないようにしてます。親父がそういう人だったから。こないだも何百人の前で、「あなたがたは詐欺ですから」って言ってて。みんな笑って許してたけど。そんな感じですね。

──お時間ですね。

紀里谷 大丈夫ですか? こんなんでどうにかなりそうですか?

──無茶苦茶おもしろかったですよ。みんな誤解してますよってボクも大々的に言っときますよ。

紀里谷 言っといてください! でも、そんなひどいんだね。全然わからないからさ。みんな俺の周りでそんな顔しないし、言わないじゃん。

──ボクも人生で絶対に接点がない人だと思ってましたからね。

紀里谷 それくらい言われてるってことだよね。ヤバいね。なにとぞとよろしくお願いします。

──了解です!

紀里谷 なにとぞ鎮火を。

(取材・文:吉田豪)



『ラスト・ナイツ』

 忠臣蔵をベースに“最後の騎士”たちの戦いを描いた>紀里谷和明のハリウッドデビュー作。

 監督:紀里谷和明 出演:クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマン、伊原剛志、他 

 提供:DMM.com 配給:KIRIYA PICTURES/ギャガ (C) 2015 Luka Productions

プロフィール


映画監督

紀里谷和明

紀里谷和明(きりやかずあき):1968年、熊本県出身。15歳で単身渡米し、アートスクールでデザイン、音楽、絵画、写真などを学び、パーソンズ美術大学で建築を学ぶ。卒業後は写真家、映像クリエイターとして活動。2004年にSFアクション『CASSHERN』で映画監督デビューし、2008年にはアドベンチャー時代劇『GOEMON』を発表。このたび、監督作第3弾となる『ラスト・ナイツ』でハリウッド・デビューした。

プロフィール


プロインタビュアー

吉田豪

吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(?)新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。

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