アヘン戦争!メタ推理!騎兵隊!過去の「必殺スペシャル」を振り返ってみた

デイリーニュースオンライン / 2015年12月20日 16時0分

写真

 11月29日に『必殺仕事人2015』が放映されました。

「必殺仕事人」は晴らせぬ恨みを金で晴らす闇の稼業の者達を描いた作品。大体の流れはゲストキャラが権力やヤクザに殺害され、死ぬ間際に藤田まこと演じる中村主水たち仕事人に仇討ちを依頼。仕事人たちが個性的な殺し技で悪人どもを暗殺するというものです。中村主水のポジションは東山紀之が引き継ぎ、今でもスペシャル番組として1~2年に一度、2時間枠で新作が発表されています。

 そして、今回の『必殺仕事人2015』はDVをテーマにしたストーリーで、『翔べ! 必殺うらごろし』の「おばさん」を髣髴とさせる市原悦子のナレーションや、殺し技を使う時のレントゲン図解なども懐かしく、それなりに面白くはあったのですが、しかし、必殺スペシャルに期待する、かつての頭のネジが外れたかのような超展開とは、残念ながら今回も無縁でした。

荒唐無稽、斬新珍奇だった必殺スペシャル

 昔の必殺スペシャルは基本の流れを踏まえつつも、毎回、頭の悪い挑戦を行っており、荒唐無稽、斬新珍奇を極めていたのですが、最近のスペシャルではとんとそういうのを見ていない気がします。とても悲しい。制作スタッフには当時の異様なチャレンジ精神を思い出して欲しい……!

 というわけで、今回は過去の必殺スペシャルから個人的BEST3をご紹介したいと思います。凄まじかったあの頃の必殺スペシャルを思い出して……!

第3位『年忘れ必殺スペシャル 仕事人アヘン戦争へ行く 翔べ!熱気球よ香港へ』

あらすじ:アヘン戦争後、イギリスと清のアヘン商人により襲撃された役人の一家。役人は破棄しきれなかったアヘンを隠していたために拷問を受け、その末に命を落としてしまう。一方、一人逃げ出した娘は日本に渡り、仕事人に復讐を依頼。日本にまで娘を追ってきたイギリス人と中国人から逃げる途中、国定忠治や遠山金四郎に助けられ、協力を申し出た平賀源内と共に熱気球で旅立つ。さらにナポレオンと合流し、敵の襲撃を受けながらも仕事人たちは清へ上陸。アヘン商人たちを暗殺して娘の恨みを晴らした。

 かつての必殺スペシャルには歴史上の有名人を節操無くゲスト登場させる風潮がありました。しかし、国定忠治や遠山金四郎はともかく、平賀源内、さらにはナポレオンまで登場させる悪ノリっぷりが酷い。平賀源内はまだ彼の発明した熱気球で清へ行くという理由がありましたが、ナポレオンが出てきた意味は特にありません

 しかし、ヌンチャク使いの中国人を相手に平賀源内とナポレオンが肉弾戦を繰り広げる絵面の凄さは非常にボンクラ度が高く、頭がクラクラします。惜しむらくは、平賀源内とナポレオンが共に途中で戦線離脱してしまい、締めの暗殺シーンに加わらなかったことでしょうか。ナポレオンが主水や秀と並んで、夜道を歩いて暗殺に向かってたらメチャクチャ面白かったと思うんですけどね!

第2位「必殺ワイド・新春 久しぶり!主水、夢の初仕事 悪人チェック!!」

あらすじ:「必殺」スペシャルの撮影中、屋根から転落し、昏睡した藤田まことだが、目が覚めると、彼は中村主水として必殺の世界にいた。その世界では、悪徳商人らが江戸随一の繁華街を作るために、殺しも辞さない悪質な地上げを行っていた。

 ただ一人、現代人の意識を持つ藤田まことは、「こういうパターン、何回やったか」と呟き、必殺シリーズのパターンから悪役の悪巧みを察知するメタ推理を見せる。だが、藤田まことの活躍も虚しく、今回のゲスト女優はお約束通り殺害されてしまい、仕事人が動き出す。悪徳商人と汚職役人の暗殺には成功するも、藤田まことは再び屋根から転落。意識を取り戻すと現代に戻っていた。

 中村主水を演じる藤田まことが、意識だけは藤田まことのまま必殺スペシャルに登場するというメタ色の強い作品。冒頭の撮影シーンで、監督が「ストーリーが陳腐」「予定調和」「ナウっぽさがない」と貶している通り、悪質な地上げと殺人、それに対する仕事人の報復など、流れ自体はテンプレの極みです。しかし、そこに現代人でありパターンを熟知している藤田まことを置くことで、テンプレどころか偉大な挑戦作へと変わっています。

 敵ボスを一目見ただけで「悪い顔しとるなあ。あれは汚職役人に決まっとる」と、演じる俳優の顔で巨悪を見抜いたり、ゲスト女優が中村主水を訪ねてきても「私は藤田まことです」と言って追い返してしまい、フラグが立たず話が進まないなど、シリーズを見慣れていれば見慣れているほど唖然とします。

 なお、今作ではアニマル・レスリー(元プロ野球投手)が唐突に助っ人の仕事人として登場し、ボールとバットを武器として使用。ボールを投げて敵を殺すだけならともかく、ボールを投げて繋がった鎖を敵の首に巻きつけ、引き寄せてからバットに付いた鎌で殺します。鎖鎌という時点でボンクラ武器なのにそれが野球仕様とか頭が悪すぎる

第1位「必殺仕事人意外伝 主水、第七騎兵隊と闘う 大利根ウエスタン月夜」

あらすじ:笹川繁蔵、飯岡助五郎の地元二大ヤクザの闘争に巻き込まれて祖母を殺された一家は、江戸へ出て仕事人を探し、ヤクザたちの暗殺を求める。だが、一家はヤクザたちに襲われて死亡。一人、娘だけが船で逃げ出すが、火を放たれて船は燃えてしまう。娘の恋人であった二郎衛門は仕事人たちと共に小舟に乗って利根川を下り、ヤクザたちを狙うが、途上、月蝕が発生。

 一行は時空間を超越し近未来のアメリカへ飛んだ。そこでインディアンのスウ族とカスター将軍率いる第七騎兵隊の抗争を目撃する。かつて船で逃げ出した娘が、海を超えてスウ族の酋長婦人となっていたことを知り、衝撃を受ける二郎衛門。だが、第七騎兵隊に襲われ、娘も今度こそ殺されてしまう。第七騎兵隊を倒し、娘の仇を討った仕事人たちは、再び船に乗り込むと、なんとなく元の時代に戻り、気を取り直してヤクザたちを暗殺し恨みを晴らした。一方、アメリカに残った二郎衛門はジェロニモとなっていた。

 もはやタイトルからして頭が悪すぎる。元の世界でのヤクザ暗殺と、アメリカでの騎兵隊暗殺の二つのエピソードの接続がムチャクチャなのですが、大オチの「二郎衛門はジェロニモになったし、トーテムポールは実は仕事人の顔なんだよ」という脱力ギャグのせいで全てを許したくなります。

 しかし、「小船に乗ったら時空間を超越し近未来のアメリカに飛んだ」の理由説明を、「マリー・セレスト号の乗員消失はタイムスリップとしか考えられない」→「だから小船に乗った主水たちもアメリカへ飛んだのだ」で解決とする強引さは凄まじい。しかも、アメリカには酋長婦人となった娘や、それとは別に何故か日本人女性がいたりして、彼女たちがどうやってアメリカへ渡ったのかは何の説明もなし。どういうことなんだ。

 時空間超越描写が甚だしすぎるせいで本来の時代劇パートの方が霞みがちになりますが、笹川繁蔵、飯岡助五郎の抗争も実は有名な史実でして。「天保水滸伝」の題材としても知られ、また、『座頭市物語』の舞台でもあります。『座頭市物語』は、笹川繁蔵側の用心棒、平手造酒と座頭市の物語でしたね。なお、本作でも平手造酒は平田深喜の名で登場しており、最後は主水と戦って戦死しています。

 おそらく、アメリカパートがあまりに荒唐無稽なので、本来の時代劇パートだけでも有名な題材でやらないと視聴者が混乱する……との配慮があったのでしょう。まあ、そんな甲斐もなく混乱はするのですが……。平手造酒は本当に有名なキャラクターでして、どのくらい有名かと言うと、本作の五年後の作品「必殺スペシャル・秋! 仕事人vsオール江戸警察」では平手造酒が仕事人となって中村主水と共闘するくらいです。殺したキャラと五年後に仲間になっちゃったよ……。

****

 こんな具合で、かつての必殺スペシャルは、恐ろしく荒唐無稽、恐ろしく軽佻浮薄、極めて挑戦的で挑発的な作風だったわけです。「視聴者が付いて来れない? 知るか!」「面白いこと思いついたからやるぞ! 時代考証? 知るか!」といった、良い意味での勢いがあったのですが、最近はどうも小さくまとまっている気がします。たまーにでいいから、また昔みたいに盛大にはっちゃけて欲しいなあ……。

著者プロフィール


作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『ダンゲロス1969』(Kindle)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング