【永田町炎上】ハンセン病患者の「暗黒法廷」政府や国会よりも遅かった最高裁の謝罪

デイリーニュースオンライン / 2016年11月27日 18時0分

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【朝倉秀雄の永田町炎上】

■「人権の砦」が聞いてあきれる裁判所の無責任体質

 山本有二農水相が馬鹿げた「舌禍」や労働基準法違反、談合で役所から指名停止を喰らった悪徳業者から政治献金を貰ったなどの疑惑で目下、週刊誌の格好のネタにされているが、そもそも閣僚や議員に人並みの「良識」や「遵法意識」「人権感覚」などを求める方が土台無理な話だ。だが、内閣や国会よりも「非人道的」で「人権感覚が欠如」なのは、本来、「人権の砦」であるべき最高裁を頂点とする裁判所であろう。

 最高裁は10月27日、大阪地検が公判中に拘置所の独居房などを捜索し、弁護士宛の手紙を押収したのは、刑事訴訟法が認めた「接見交通権」の侵害として、受刑者(強盗罪などで懲役10年が確定)が計300万円の賠償を求めていた訴訟で上告も棄却した、これによって国に対し110万円の賠償を命じた1、2審判決が確定した。刑事訴訟法は身柄を拘束された容疑者や被告が第三者の立会いなしに弁護人と面会し、書類の受け渡しができる「接見交通権」を認めているが、地検がこの権利を侵害したというわけだ。

 一見、もっともな判決のようだが、不可解なのは最高裁が「追認」した形の1、2審判決が「捜索令状を請求した地検の行為を違法」と認定しながら、「それを認めた大阪地裁の過失は認めなかった」ことだ。検察官も裁判官の発した令状なしには捜索できない。だから、もし地検に権利侵害があるなら地裁にだってあるはずではないか。にもかかわらず裁判官という人間は、一体何様のつもりなのか、自分たちの非は絶対に認めない。原告弁護団は10月31日、記者会見を開き、「証人尋問を行わずに裁判官の判断の違法性を退けており、最後まで身内をかばったものとしか思えない」と語っているが、まったく同感だ。これでは「人権の砦」が聞いて呆れる。

■ハンセン病というだけで「暗黒法廷」を強いた最高裁の非人道性

 裁判所の人権感覚の欠如の最たるものは、ハンセン病患者という理由だけで昭和23年から昭和47年にわたり95件もの差別的で非人道的な「暗黒裁判」を強いてきたことだろう。公判というのは、裁判所内の「公開の法廷」で開くのが原則だ。極めて例外的な場合に設置が認められる「特別法廷」で審理される。「特別法廷」を開こうとする裁判所は、最高裁に「起訴状の写し」や患者の「診断書」を提出する。本来なら事件ごとに患者の状態や伝染の可能性を検討する。

 だが、最高裁はハンセン病というだけで無条件に「特別法廷」と認可し続けてきた。地裁がハンセン病を理由に「特別法廷」の開廷を求めたのは96件。うち95件が認められている。一件は取り下げだから許可率は100%で、不許可の例はない。それ以外の病気や老衰を理由とする許可は61件のうちわずかに9件で、許可率わずか15%だから、ハンセン病患者というだけで、いかに人権を軽んじ、差別扱いしてきたことがわかる。恐るべき「非人間性」である。

■内閣や国会よりも15年も「謝罪」が遅かった最高裁の人権感覚

 平成13年5月、熊本地裁は「国がハンセン病患者に対し隔離政策を1960年以降も続けたことは違憲」とする判決を下した。60年にはWHOが隔離を否定し、外来治療を提唱している。政府は控訴を断念。小泉純一郎総理は首相談話で「謝罪」を表明。同年6月には、衆参両院も「謝罪」の意を表明する決議を全会一致で採決している。

 ところが当の最高裁はそれから15年もの間、「そ知らぬ顔」を決め込み、平成25年11月の療養所入所者らの団体による「特別法廷」の検証の申し入れを受け、平成26年5月、重い腰を上げ事務総局内に委員会を設置。同年12月から患者らの聞き取り調査に乗り出した。昨年の9月には団体側が第三者機関の設置を求めたため大学教授や弁護士らによる「有識者委員会」が初会合。本年4月に「調査報告書」なるものを発表した。

「──報告書」では、」「暗黒裁判」と言われた裁判所外での審理の実態を明らかにした上で、裁判所までが差別に加担し、「裁判所法違反」だったことも認め、元患者らに謝罪した。政府や内閣よりもなんと15年も遅い謝罪である。

■「違憲性」を認めなかった最高裁の「お手盛り報告」

 もっとも「──報告書」は憲法14条の「平等原則」違反の点については直接触れず、記者会見で口頭でのみ「違憲の疑いがある」と渋々認めただけであった。憲法違反を理由に過去の裁判の「再審」を求められては厄介だからであろう。

 また憲法37条の「裁判の公開原則」違反に関しても「療養所は一般国民が事実上訪問できない場所とまでは断定できない。開廷を告示し、傍聴を許していたことが推認でき、憲法の定める公開の要請を満たさない事例は認定できない」などと形式論を並べ立てて違憲性を否定しているが、「特別法廷」は激しい差別の場であった療養所など社会から隔絶された場所で開かれたケースが多く、傍聴人がいたとは思えず、国民による「裁判のチェック」機能などまったく働かなかったと言って良い。

 こうした「手盛り報告」に対し、「有識者委員会」は「いずれも違憲」と断じ、患者側団体も「ハンセン病というだけで患者を憲法の対象外に置いた司法の責任は全く不問にされたに等しく、到底受け入れられない」と憤慨しているが、当然のことであろう。

 いずれにせよ、単にハンセン病というだけで長く「法の下の平等」を踏みにじってきた最高裁に果たして「一票の格差」の是正を国会に求める資格などあるのだろうか。

文・朝倉秀雄(あさくらひでお)
※ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中。

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