北朝鮮で「ジャガイモ泥棒」に対して異例に厳しい刑罰

デイリーNKジャパン / 2019年6月14日 7時30分

三池淵ジャガイモ粉生産工場を現地指導した金正恩氏(2017年12月6日付労働新聞より)

北朝鮮の現在の食糧事情を巡っては相反する2つの見方が存在する。食糧が底をついた「絶糧世帯」が続出し、国際社会の食糧支援が必要というものと、国際社会からの援助を引き出すために、北朝鮮は実際の状況以上に食糧事情をひどく見せているというものだ。

地域により気候、地形の差も激しいことから、全土で一律に食糧が不足しているとは言えないだろうが、一部地域から食べ物がなくなったという声が上がっているのもまた事実だ。

その中の一つが、金正日総書記が提唱した「ジャガイモ革命」で、ジャガイモの一大産地となった両江道(リャンガンド)大紅湍(テホンダン)だ。稲作ができない荒れた土地が広がっていたこの地を開墾、ジャガイモ農場を作らせ、大成功させたというものだ。

輸送システムが整備されていない北朝鮮では、大豊作となっても他地方への輸送ができず「出来すぎちゃって困った」という年もあったほどだが、今年の状況はよくないようだ。

(参考記事:ジャガイモ大豊作も浮かない表情の北朝鮮の農民

この地域では、先月初頭から2週間に渡って集中的にジャガイモの種イモを植える作業が行われた。ところが、現地の情報筋によると、窃盗が相次いだという。

その手口は次のようなものだ。大規模な協同農場ではトラクターを使ってジャガイモを植えるが、小さな農場では人力に頼っている。農民は種イモを規定どおりの4〜5センチ間隔で植えず、わざと余らせた上で、土の中に埋めておく。それを掘り出して市場で売って現金収入を得るのだ。

管理責任者は常日頃から農民に「種イモの窃盗は党の農業政策をダメにする行為だ、絶対にしてはならない」と言い聞かせてきた。しかし、苦しい生活を強いられている農民は、種イモを植える時期が最も食糧が不足する時期と重なることもあり、責任者の目を盗んでジャガイモを盗み出し、市場で売り払っているのだという。

当局は、このような行為に対して異例と言える厳しい処分を下している。

大紅湍の南にある雲興(ウヌン)のある農場では先月中旬、種イモを植えた畑に対する検閲(監査)が行われ、隠されたジャガイモが発見された。犯人の農民2人は、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)で懲役6ヶ月の刑に処せられた。

農民を労働鍛錬隊送りにするのは、普段ならまずないことだと情報筋は語る。貴重な労働力だからだ。しかし、「道内のジャガイモ農場ではこのような現象が頻発し、深刻な問題となっている」(情報筋)ことを受けて、見せしめとして厳しい処罰を下したものと思われる。

このような窃盗、横流しの類は、食糧事情とは関係なく以前から頻発している。生活の苦しい農民は、高利貸しからカネの代わりにトウモロコシなどを借りて、秋の収穫後に返済するが、もちろん高額の利子を付けなければならない。そのためには現金収入が必要だが、凶作となれば返済はおろか、暮らしそのものが行き詰まってしまう。

それで、作物や備品を盗んで売りに出し、現金を得るというわけだ。農村だけの話ではなく、都会では勤務先の工場の生産品や備品に手を出す。何らかの形で違法行為に手を染めなければ生きていけないのが今の北朝鮮なのだ。

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