北朝鮮、移動禁止令でアフリカ豚コレラ拡散防止

デイリーNKジャパン / 2019年6月17日 7時31分

デイリーNKジャパン

北朝鮮で感染が確認された、家畜伝染病の「アフリカ豚コレラ」。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は5日、「アフリカ豚コレラの危険性とその伝播を防ぐための方法」と題した記事で、病気の感染経路、症状、治療方法などを紹介した上で、全国の畜産業部門、関連部門、一般家庭に対して拡散防止に立ち上がることを呼びかけた。

また、12日の紙面では豚肉と加工品の流通、販売を禁止したことや防疫作業が行われていることを報じている。

(参考記事:アフリカ豚コレラ、北朝鮮全土に拡散か

当局は、中国との国境に面した地域に住む住民に対して、感染拡大防止を理由に移動禁止令を下したと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、朝鮮労働党両江道委員会は中央からの指示で、国境地域の住民に対して居住区域以外への移動を禁止する措置を取った。移動禁止令は、道内の工場、企業所、人民班(町内会)を通じて通告された。

ビジネスはもちろんのこと、冠婚葬祭のための移動も制限されている。隣接する咸鏡南道(ハムギョンナムド)以南への移動は、すでに役所から旅行証(国内用パスポート)を受け取ったとしても、計画そのものを取り消せという指示だ。

北朝鮮は昨年、悪名高かった国内移動の制限措置を緩和する措置を取ったと、RFAの情報筋が伝えているが、首都の平壌、前線地域(軍事境界線付近)、国境地域など特定地域は除外されている。当局はそれを逆手に取って、国境地域の住民の移動を制限しているのだろう。

(参考記事:北朝鮮、悪名高い国内移動制限を大幅緩和

鉄道、バス、ソビ車(民間の輸送車両)などすべての交通手段を使った移動が制限されているが、運行そのものが中止されているかについて情報筋は触れていない。

移動禁止令の理由について情報筋は、アフリカ豚コレラの感染拡大を防ぐ以外にも別の理由があるのではないかと疑っている。咸鏡南道以南の地域は、暖かくて平野が多いため多くの牧場が存在する。その中には、金正恩党委員長の一家や最高級幹部やその家族に乳製品を供給する8号牧場もある。

その一つ、雲谷(ウンゴク)牧場は、平安南道(ピョンアンナムド)の安州(アンジュ)にある。1960年代まで政治犯収容所だったが、立地環境が優れていることから1970年代に金日成主席一家や最高級幹部に肉、卵、牛乳を供給する牧場へと変貌した。

ここで働く人々は、特権階層と言える平壌市民と同じ扱いをされ、「首都市民権」を持つなど優遇されている。

この農場だが、一般の住宅地からは2キロから4キロほど離れていて、飼育されている家畜にはワクチン接種も行っているのに、「アフリカ豚コレラの拡散防止を理由に国境地域の住民の移動を制限するのはひどい」(情報筋)との声が上がっている。

北朝鮮は、伝染病に対応する設備が整っているとは言い難いのが現状だ。移動禁止令は理解できなくもないが、それが最高指導者や最高級幹部用の牧場を守るのが目的とあっては、国民は内心、納得しないだろう。

(参考記事:北朝鮮の住民は、伝染病になすすべがない

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民に対しても移動禁止令が下されたと現地の情報筋が伝えている。ところが、旅行証を受け取った人々が強く反発している。

「一部の人は旅行証を返却する際に、発行前に渡したワイロを返せと言い出し、幹部との間で摩擦が起きている」(情報筋)

旅行証を取得した人は、冠婚葬祭以外にも全国を飛び回る卸売業者もいる。彼らがいなければ物資の流通が円滑に行われないことから、物価が上昇するのではないかとの不安も広がっている。

一般庶民にとって喫緊の課題はアフリカ豚コレラより、市場で商売して生計を立てることだが、当局は金正恩氏一家や最高級幹部用の牧場を守ることしか頭になく、庶民の暮らしなど考えていないと、情報筋は批判した。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング