「どうやって食えというのか」北朝鮮で集団抗議活動、当局緊迫

デイリーNKジャパン / 2020年6月15日 5時56分

平壌のサッカースタジアムで保安員(警察官)と揉める北朝鮮の男性。周りの人々は指を指して保安員を非難している(参考写真)。

北朝鮮当局は先月、新型コロナウイルスの感染拡大を防止し、さらには農村支援戦闘の妨げにならないように、市場の営業時間を短縮する措置を取った。両江道(リャンガンド)では道内の市場がすべて閉鎖されたが、これに反発する多くの商人が、抗議活動を起こした。

これに恐れをなした当局は、市場閉鎖の方針を撤回したが、両江道の東隣の咸鏡北道(ハムギョンブクト)でも抗議活動が起きていたと、同道の幹部が米政府系のラジオ・フリー・アジアに語った。

(参考記事:コロナ対策の市場閉鎖に北朝鮮国民が猛反発「権力機関も恐れない」

この幹部によると先月、咸鏡北道の清津(チョンジン)と羅先(ラソン)で、安全員(警察官、旧称保安員)が市場の商人を取り締まる過程で、これに猛反発した市民との間で小規模な衝突が発生。集団での抗議活動に発展した。

北朝鮮の人々にとって、当局の方針に逆らうのはまさに命がけだ。

金正日総書記は、大飢饉「苦難の行軍」の真っ只中にあった1998年、当局の不正義に集団で抗議した黄海北道(ファンヘブクト)の黄海製鉄所の労働者を、軍の兵力で鎮圧し、多数の人々を虐殺した。

(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

しかし、このような強硬手段を取るのは難しいだろう。20数年前と異なり、大規模な兵力の移動や武力鎮圧をしようものなら、あっという間に国際社会に察知され、ただでさえ苦しい北朝鮮での国際社会での立場をさらに苦境に追いやることは目に見えているからだ。

別の情報筋は、以前は朝鮮労働党や司法機関の取り締まりにおとなしく従っていた市民が、「どうやって食っていけというのか」と反発するようになり、安全員や糾察隊(取り締まり班)のワイロの要求や当局の定めた制度に対する不満を爆発させたと伝えた。

当局はようやく事態の深刻さに気付いたようで、取り締まりの緩和に動いた。

前述の幹部によると、今月初めに社会安全省(旧称人民保安省、警察庁に相当)は、各道の社会安全局(県警本部)に対し、商行為と地域間の住民移動を無条件で取り締まり、処罰していた従来の方針を一部緩和せよとの内部指針を下した。

例えば、通りで露天商を開く住民の取り締まる際には、販売していた商品のすべてを没収していたが、これをやめて警告レベルの調書作成に留めよというものだ。

また、旅行証(国内用パスポート)なしに市や郡の境界線を越えようとした住民に対しては、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)で1ヶ月の強制労働の処分を下していたが、罰金刑に格下げせよとの指示も含まれている。これらの措置は既に実行されており、取り締まられる住民は大幅に減少したと情報筋は伝えている。

取り締まりの緩和について別の情報筋は、怒った民心をなだめようとするものと分析しつつ、この程度で人々の怒りを鎮められるのかという反応が出ていると伝えた。

ただでさえ国際社会の制裁、コロナ対策で疲弊している庶民の暮らしだが、それにもかかわらず勤労動員、税金代わりの金品の徴収などが繰り返し行われたことに、人々の感情は極度に過敏になっているとも伝えた。

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