収穫期を迎えてもなお減らない北朝鮮の「絶糧世帯」

デイリーNKジャパン / 2020年10月28日 7時18分

朝鮮人民軍傘下「第1116号農場」を現地指導した金正恩氏(2017年9月30日付労働新聞より)

「絶糧世帯」。前年の収穫が底をつき、食べ物がなくなった世帯を指す北朝鮮の用語だ。例年なら、5月末や6月初めにかけての「春窮期」の後に発生する現象だが、小麦の収穫が始まる6月から徐々に解消するものだった。

ところが、国際社会の制裁強化で絶糧世帯が現れる期間が長期化し、その数も増えつつあった。そこに加えての水害、コロナ禍で、食糧事情が極めて深刻な状態となっていると、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

(参考記事:「多ければ半数が餓死予備軍」北朝鮮、新型コロナ鎖国で危機

当局は、今月10日の朝鮮労働党創建75周年を迎え、全国の人民班(町内会)を通じて、絶糧世帯の実態調査を行った。その結果、収穫期であるにもかかわらず、絶糧世帯の数が春窮期と同程度に達することがわかった。

「欠食が多く、栄養失調となり、病気で死ぬ人が多い」(情報筋)

絶糧世帯の人たちは、何も食べられず餓死するのではなく、満足に栄養が摂取できない状態が長期間続いたことで、肺結核や肝炎を発病し、栄養失調で亡くなるというのだ。

ただ、このままでは餓死する人が増えかねない。当局が危機感を強め、実態調査に乗り出したというわけだ。その上で、青年同盟(金日成金正日主義青年同盟)や女盟(朝鮮社会主義女性同盟)に対して、絶糧世帯の支援を行うように指示を下した。

これに基づき、メンバーから絶糧世帯救済募金が徴収されたが、絶糧世帯ではなくとも、食糧事情が決して良いとは言えない人がほとんどで、不満の声があがった。

「糊口をしのぐのがやっとなのに、他人など助けていられるか」
「王様(金正恩党委員長)も貧困を助けられないのに、一般庶民にどうしてできようか」(地元の声)

調査で、絶糧世帯が最も多いのは北部の慈江道(チャガンド)であることがわかった。軍需工場が多く、多くの人が配給頼みの生活をしてきたことから、市場が未発達なのだ。また、他地方への出入りも厳しく制限されている。

そのため、住民は社会の変化の前に脆弱だ。言い換えると、自分の力で生きるすべを持っておらず、配給が途絶えると座して死を待つしかないという人が、他の地方より多いということだ。

2017年3月には、勤めていた軍需工場からの食料配給が途絶え生活苦に悩んでいた女性が、自ら命を絶つ事件が起きている。

(参考記事:北朝鮮の20代女性が山中で「究極の選択」をした理由

当局は、国際社会が支援の手を差し伸べれば、受け入れる可能性が高いと、情報筋は見ている。

「国は、国連などが送ってくれる様々な支援に相当期待しているようだ。国際団体や他の国の食糧支援を拒否していたかつての雰囲気に変化が生じたようだ」(情報筋)

実際、北朝鮮外務省は16日、ウェブサイトに掲載した「食糧問題解決のための国際的努力」という文章で、金正恩氏の指導で人民経済(民生)や農業面で成果を上げているとっ主張しつつも、「食糧問題を解決することこそ、国と民族の発展、人類の生存のための重要な問題」「今後、国連および世界食糧計画をはじめとした国際機関、世界各国との交流、協力を通じて、食料安全保障と栄養改善に積極寄与する」と、協力する姿勢を示し、実のところは協力してもらいたいという本音をのぞかせた。

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