取締り強化でも安心、北朝鮮で流行る「違法携帯電話デリバリー」

デイリーNKジャパン / 2020年11月24日 6時5分

携帯電話を使用する北朝鮮の人々(資料写真)

チャイナ・モバイル、チャイナ・テレコム、チャイナ・ユニコムの中国の携帯電話大手3社の電波は、国境を越えて北朝鮮の一部地域でも受信可能だ。これを利用して、北朝鮮の携帯電話ではできない国際通話、韓国在住の脱北者から北朝鮮に残してきた家族からの送金の手配、密輸の打合せや商品価格の情報入手など、様々な用途で使われている。

金正恩党委員長は、中国キャリアの携帯電話の「国内情報の流出、国外情報の流入」の元凶と見て、強力な取り締まりを指示、新型コロナウイルスが蔓延する今年はさらに強化されている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、女盟(朝鮮社会主義女性連盟)を対象にした政治講演会で、朝鮮労働党両江道委員会の勤労団体部の担当者が、中国キャリアの携帯電話の所有、使用について警告を発したと伝えた。

担当者は、道内の普天(ポチョン)と大紅湍(テホンダン)での摘発事例に言及した上で、「隠し持っている携帯電話は自主的に提出せよ」「言葉ひとつで国家機密が漏れることを心に刻め」などとした上で、摘発時には無条件で処罰すると脅したとのことだ。現行の刑法222条「非法的な国際通信罪」で定められた最高刑は、労働教化刑(懲役刑)5年だ。

情報筋は、当局が「違法通話は最後まであぶり出すという意思」を示しているとし、中国キャリアの携帯電話を持っている住民らも取り締まりを恐れて、また国境封鎖による密輸の激減で、「1ヶ月に1回も使わない」(市民)状況だと伝えた。

(参考記事:携帯電話で娘が北朝鮮を批判、逮捕されたのは母だった

しかし、いかに強力な取り締まりでも、時が経つにつれ、ほころび出すのが北朝鮮の常。携帯電話を使うための新たな手法が編み出されていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)在住の住民の証言は、両江道の状況とは正反対だ。

「最近は、家でゆっくり座って中国や韓国など海外に電話できるようになった」

理由はシンプルだ。保衛部(秘密警察)や安全部(警察署)の職員の家族や、幹部とコネを持つブローカーが、安全に通話できる中国キャリアの携帯電話を家までデリバリーしてくれるのだ。

ブローカーの情報収集、営業能力は非常に高く、密輸業者や、韓国に家族がいる脱北者家族のほとんどを把握して、訪問するという。さらには、取り締まりを恐れて携帯電話を使おうとしない脱北者家族宅を密かに訪ね、韓国に住む家族との通話サービスを売り込むほどだ。

ブローカーは、脱北者家族に安全な通話を保証する見返りに、韓国に住む家族からの送金の3割を手数料として受け取る。法外な額に思えるが、相場が4〜5割に達していることを考えると、相対的には高くない。

(参考記事:脱北者からの「仕送り」に頼る北朝鮮…ネコババ警察官を処分

情報筋は、利用者からの好評ぶりを伝えている。

「ブローカーを通じて違法な中国キャリアの携帯電話での安全な通話が保証され、脱北者家族は司法当局の取り締まりの恐怖感から脱することができた」
「自宅でゆったりと、韓国や外国に住む家族、親戚とメッセージをやりとりしたり、ビデオ通話をしたりして、送金もスムーズにできるようになった」

咸鏡北道の別の住民は、RFAの取材に、こんなエピソードを語った。

「大きな手術を受けて体を自由に動かせない知人の家に数日前、ブローカーが訪ねてきた。韓国に住む家族に、自分の苦しい状況を説明できた。家族からは急ぎの仕送り届き、おかげで治療を受けられた」

この通話にかかった手数料は、なんと6000元(約9万5000円)だった。上述の手数料の相場で計算すると、韓国の家族が送金した額は、2万元(約31万8000円)だったと思われる。

いくら高くても、家族との連絡ができる上に、ブローカーは信用第一なので保衛部に顧客情報を売ったりしないため、安心できるとこの住民は語っている。

保衛部や安全部も、ブローカーから巨額の上納金を得られるので、このままの状態を好むかもしれないが、摘発するもしないも彼らの匙加減しだいだ。関係がこじれたり、平壌から「もっと摘発しろ」などとプレッシャーをかけられたら、急に態度を一変させる可能性はいくらでもある。

ただ、もしそうなっても、また時が経つと同じ状態に逆戻りする。金正恩氏が政治や思想の力で抑え込もうとしても、カネの力に勝つのは難しいようだ。

(参考記事:秘密警察はこうしてワナを仕掛けた…ある北朝鮮送金ブローカーの逮捕劇

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