北朝鮮軍「内なる敵」との戦いで敗北寸前の窮地

デイリーNKジャパン / 2021年1月4日 6時37分

朝鮮人民軍戦車兵競技大会2017を現地指導した金正恩氏(2017年4月1日付労働新聞より)

かつての北朝鮮は、2500万人の国民すべてが食糧を国からの配給に頼る、世界にもまれに見る配給依存型社会だった。国民個々人の米びつの鍵を国が握ることで、安定した抑圧社会を築くことに成功した。

しかしそんなシステムも、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して崩壊。配給を受け取れるのは、平壌市民、軍需工場や炭鉱の労働者、政府高官、安全部(警察)、保衛部(秘密警察)など司法機関関係者など、一部に限られるようになった。

(参考記事:首都エリート層も配給停滞…金正恩「経済困窮」の末期症状

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)のもその対象で、社会的地位の高さや安定した生活は、皆が羨むものだった。しかし、それも今は昔。現在は「貧しさ」という「内なる敵」との戦いで敗北寸前に追い込まれている。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、清津(チョンジン)市の郊外、青岩(チョンアム)区域にある高射銃部隊の困窮ぶりを伝えた。

部隊は、今月1日から来年3月までの長い長い冬季訓練の期間に入ったが、彼らを待っていたのは、配給量が減らされたという悲報だ。秋の収穫後はふんだんに配給が行われ、春を迎えると減少し、麦が取れる夏から量が回復し始めるというのが例年の流れだが、今年は収穫直後にも関わらず、配給された量が1ヶ月の規定量に満たず、20日分程度だったとのこと。

軍人やその家族の間では、この時期に遅配が起こるようならば、来年の夏には1ヶ月に1週間分も期待できないのではないかとの不安が広がっている。

民間人なら、市場で商売をしてしのぐところだが、軍人やその家族の商行為は禁じられている。市場で買おうにも、軍からもらえる給料は雀の涙ほど。

軍人の妻たちが所属する家族小隊の長(通常は軍幹部の妻)は、軍人家族の集まりの場で、内助の功を発揮して、家族を守るのが軍人の妻の義務、今のような時期だからこそ、食べ物を節約してへそくりのように貯めておこうなどと強調している。

そんな話を聞かされた妻たちは、露骨に不満を示している。
「軍人家族なのに、コメを買うカネがどこにあるのか」
「区域から出られない状況なのに、食糧を買えとは馬鹿げた話だ」
「部隊の幹部連中は、配給で食って、ワイロまでもらっているくせして、私たちは節約しろという」

補給を担当する軍官(将校)の話によると、今年は作況が悪いため、協同農場からのコメの徴収がうまくいかず、計画量の7割が達成できればマシな方とのことだ。

軍の食料供給を担っているのは各地の協同農場だが、国と軍から言われたとおりの量の穀物を納めると、自分たちの食い扶持がなくなってしまう。そのため、コメを奪われまいと抵抗する農民と、意地でも持ち去ろうとする軍関係者の間でトラブルが頻発。農場の脱穀場に武装した兵士を送り込み、作業を監視させる事例すら報告されている。

(参考記事:協同農場を「占領」した北朝鮮軍の危機的状況

食糧配給も減らされ、専用住宅にも入れず、家賃を払って民間人の家に間借りしての暮らし。自由に商売して安定した暮らしを営むためにも軍を辞めたいと嘆く軍官が相次いでいるが、コロナ禍の今では、商売もうまくいかない。

「この時期からこんなに苦しいのなら、今後どうやって暮らしていけばいいのかわからない」(軍人家族)

(参考記事:「もう辞めてしまいたい」北朝鮮軍将校の間で軍から離脱の動き

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