没後100年の今もなぜ漱石の言葉は人の心を揺さぶるのか? 現代人の抱える問題にも切り込む148の名言集

ダ・ヴィンチニュース / 2016年5月3日 9時0分

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『漱石のことば(集英社新書)』(姜尚中/集英社)

 夏目漱石は1916年、大正5年に没した。今年で丁度100年ということになる。

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 誰もがその名を知っている文豪漱石の、今なお色褪せない魅力とは一体何なのだろうか。どうして人は、夏目漱石に「ハマり続ける」のだろう。私はずっと不思議に思っていた。当時と今では、社会の構造も、人の考え方も、大きく変わっているはずだ。全く違った時代を生きていた著者の小説なのに、どうしてこんなに、私たちは心を揺さぶられるのだろう。

 その答えを一緒に探してくれるのが、『漱石のことば(集英社新書)』(姜尚中/集英社)。本書は大学教授であり、著作『悩む力』がベストセラーになった姜尚中が、漱石の遺した作品、手紙の中から、心に留まった言葉を選り抜き、それに関して自身の考えを寄せている「名言集」だ。

 著者、姜尚中は述べる。青春時代、自分は孤独だったと。暗い洞窟の中をとぼとぼと歩き続けた一生だった。しかし、「淡いペンライトのような光だけは与えられていた」。それが漱石の言葉だったそうだ。漱石の作品に勇気づけられたのは、きっと著者だけではないだろう。

 今回は、時代を越えて、私たちに感銘を与えてくれる漱石の言葉をいくつか紹介したいと思う。

今代(きんだい)の人は探偵的である。(『吾輩は猫である』より)

 漱石の重要なキーワードの一つが「探偵」だ。探偵的になるとは、プラスの意味ではない。「人の腹を探ること、人の思惑が気になること」を示唆しており、つまり自意識過剰になっているということなのだ。著者は「今でも大いにあることです」と述べている。確かに、「他人が自分をどう思っているのか」は、気にならないといえばウソになるだろう。積極的に評価されたい。できれば、褒められたい。そんな欲求が強すぎて、「探偵的」になってしまうのは、昔も今も変わらない気がする。

文芸は技術でもない、事務でもない。より多く人生の根本義に触れた社会の原動力である。(『三四郎』より)

 英文学者でもあった漱石ならではの、「文芸論」。文学が無用の長物という風潮は、昔からあったのだろう。昨今でも「文学部は不要」という意見を耳にすることがある。文学は「社会の原動力だ」という漱石の言葉を、文学部不要論を掲げる方々はどう感じるのだろうか。

 漱石の言葉は今でも通じる「問題性」をはらんでおり、さらに、人間の根源的な「何か」をピタリと言い当てている。

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