キャラ立ち政治家・麻生太郎が語る「日本の底力」発揮への提言(ブックレビュー)

ダ・ヴィンチニュース / 2013年4月12日 11時40分

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『とてつもない日本』(麻生太郎/新潮社)

 マンガ大好き、葉巻、ソフト帽に襟飾りのコート、ギャングファッション、一言余計…。多くの政治家のなかで、政治以外のところで話題になる政治家という意味で、ひときわキャラ立ちのする政治家、麻生太郎 副総理・財務大臣・金融担当大臣。この本は彼が総理になる前(総理は2008年9月~2009年9月)の平成19年(2007年)に出版されたもの。時期的にみれば、「次」という政治的な目的をもって、自らの政治スケジュールに弾みをつける意味合いで出された本と勝手に思う。

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 その基調は、格差社会、少子高齢化、教育崩壊などネガティブなことばかり喧伝されるが、日本は本当にだめな国なのか。私はそうは思わない。経済的水準は高く、国際的プレゼンスも大きく、日本スタイルは諸外国から評価され、実際大きな底力を持っている。だからいたずらな悲観はやめて、日本の底力を発揮させよう。

 語り口は、強面、ドスのきいた麻生節と形容されるべらんめえ調からは遠く、ハッタリや誇張もなくとても穏やか。そして、サブカルチャーと外交について語るときは熱い。自身と同年生まれ(1940年)のジョン・レノンに椎名林檎、GLAYなどのミュージシャンや、鉄腕アトム、キャプテン翼、ポケモンやドラえもんなどマンガへのコメントがたびたび登場。日本のマンガ、アニメはとうにサブカルではなく、Jファッション、Jポップとともに日本のメッセージを世界へ発信する重要なメインカルチャーであると強調する。

 外交では「価値の外交」をスローガンに、平和、自由、人権などの普遍的な価値を各国と共有・深化させ、「自由と繁栄」のネットワーク構築を掲げる。そのほか、前向き高齢化社会、義務教育への疑問、靖国神社非政治化へのシナリオと、多くについてその考え、ビジョンを述べている。これらに展望をもたらす共通分母が、本書のキーワードでもあるソート・リーダー「実践的先駆者」としての日本の経験であり、それが日本の底力、新たな日本ブランドをつくると提言する。

 しかし、いやおうなしに思うことは、この本の後、情況は大きく変わったこと。政権交代、そして東日本大震災と原発事故、自民党政権復帰。また日韓、日中間で領土問題が表面化、関係悪化、等々だ。国の安全・安心を守るために、起こり得るありとあらゆることを考えに考え尽くす責任のあるはずの政治家の書いた本が(「次ぎ」をめざした政治家としての基本的な考えの表明であるならなおさら)、未曾有の災害へ対応し、また今日の状況に耐え、さらに乗り超えていける内容を持っているのか。換言すれば、大災害の備えや大きな変化への直接的な言及はなくとも、その考えから、問題の解決につながる答えを見出すことができるか、それがこの本の最大の読みどころになった。

 本書のタイトル『とてつもない日本』は、戦後日本の骨格を決めたとされる首相・吉田茂の孫である著者に話した言葉という。本当に日本はまだ「とてつもない」のだろうか。その答えは…。

文=月足 渡
(ダ・ヴィンチ電子ナビ「エディターレビュー」より)

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