失敗と転職の連続が育んだ希代の財政家、高橋是清の問題解決力

ダ・ヴィンチニュース / 2013年6月9日 7時20分

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『天佑なり』(幸田真音/角川書店)

 明治維新1年前に12歳でアメリカ留学、奴隷になる、投資に失敗して借金を抱える、ロンドンで日本国債を売り出す、大蔵(現・財務)大臣と首相を務める、暗殺される。
これすべて、TVドラマや映画、教科書でちょくちょく見かける高橋是清のことである。幸田真音さんは最新作『天佑なり』で彼の波瀾万丈の人生を描いた。

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――高橋是清が生きた時代と今の日本の共通点

 是清は明治から昭和にかけて、日本の危機の数々を救った傑物。本書を読むとこの歴史上の人物が「身近なメンター(師匠)」に思えてくるから不思議だ。

「金融・経済界の人や歴史好きでないと、高橋是清は遠い存在だったかもしれません。でも、アベノミクスで経済が上向いてきた今、是清から学ぶことがたくさんあります。とにかく発想力が凄いんですもの」と幸田真音さん。『日本国債』『小説ヘッジファンド』など、18年間、経済小説を書き続けてきた。

「是清は日本で初めての、本当の意味での財政家です。国債や財政というテーマは私のライフワーク。10年以上前から、是清について本格的に調べ始め、小説にすることができました」

 幸田さんは先の自民党政権時代に財政制度等審議会委員を7年務めた。当時、国債の外国人保有率を高めるため、財務省が初めて海外でのIR活動に取り組んだ。その報告の席で官僚が口にした「海外に日本国債を売りに行くのは、100年前の高橋是清以来なんですよ」という何気ない一言が、幸田さんの好奇心を刺激した。

 財政とは国のお財布を管理すること。国民が安心して暮らすには、財政が健全であることが大前提だ。財政が破綻すれば年金も支給されなくなるし、ハイパーインフレで通貨価値が下がって物価が高騰し、私たちの生活に壊滅的なダメージを与える。

 話題のアベノミクスは概ね好意的に受け止められている。その一方で安倍政権は憲法改正や自衛隊の国防軍への名称変更を訴える。尖閣諸島付近では、頻繁にスクランブルがかかる。

「危ない方向に向かっていかないといいけど……と、感じている人も多いのでは。今の日本は是清が生きた時代と重なるところがいくつもあります。関東大震災が発端の昭和金融恐慌の沈静化は彼の手腕によるところが大きいし、第二次世界大戦と太平洋戦争になだれ込むきっかけとなった軍の暴走を、財政の面から、最期までひとり身を挺して止めようとしたのが是清です。過去の不幸な出来事を繰り返さないために、その渦中にいた是清の生涯を知ることはとても大事です」

ダ・ヴィンチニュース

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