出産は命の危険と隣り合わせ!? 産婦人科医の過酷すぎる現場を描いたマンガが話題

ダ・ヴィンチニュース / 2013年7月18日 11時30分

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『コウノドリ』(鈴ノ木ユウ/講談社)

 深刻な医師・病院不足や過酷な労働環境が問題にあげられる現代だが、なかでも特に過酷な状況にあると言われるのが産科医。少子化と言われる現在でも、圧倒的に産科医の数は足りていない。過酷な労働条件に加え、訴訟問題のリスクが高いことなども敬遠される理由らしい。そんな産科医の現状を描いた『コウノドリ』(鈴ノ木ユウ/講談社)が、6月21日に発売された。主人公の鴻鳥サクラは児童養護施設で育ち、隠れて“ベイビー”という名でピアニストとしても活躍している産科医。そんな彼がいろんな出産に立ち会うこの作品は、男性誌でリアルな妊娠出産を描く医療マンガとして話題になっている。産科医の過酷な現場、そこで彼らが抱える葛藤とはどんなものだろうか。

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 まずひとつは、患者の希望をかなえてあげられないとき。たとえば、ストリッパーをしていた前田さんは夫に逃げられてシングルマザーになってしまう。だから、出産前は「私は踊ってこの子を一人で育てなあかんのやで」と言って、頑なに帝王切開を嫌がっていた。しかし、赤ちゃんが逆子になってしまい、普通分娩で生むことができなくなってしまう。これから先のことを考えると、できることなら患者の希望を叶えてあげたいと思うだろう。でも、それでは赤ちゃんの命が危険にさらされてしまう。なんとか説得して帝王切開の同意書にサインしてもらわなければならないのだが……。

 また、出産まで1度も検査を受けなかった未受診妊婦がたらいまわしにされているうちに亡くなってしまうというニュースをよく聞くが、検査を受けていないだけでなぜそんなに受け入れてもらえないのか疑問に感じる人も多いだろう。『コウノドリ』によると、未受診妊婦には、胎児の状態や母体の感染症などの重要な情報や判断材料がないため、もしその妊婦が何らかの感染症にかかっていたとしたら「ちゃんと診察を受けていた患者さんの赤ちゃんに影響が」出てしまう可能性があるからだそう。しかし、だからといって……と思う人も少なくないだろう。鴻鳥は、そういったリスクもわかったうえで「お腹の赤ちゃんは何も悪くないだろ」と言い、周りの制止を振り切って未受診妊婦を受け入れるのだ。

 そして、週数によっては赤ちゃんより母体を優先させなければいけないときもある。この作品に登場する田中さんは妊娠21週で切迫流産してしまうのだが、赤ちゃんを助けるためにできるだけのことをしたいと希望する。たしかに、田中さん夫婦のように患者がどんなことをしてでも赤ちゃんを助けたいと思うのは当然。それが、10年待ってやっと授かった命ならなおさら。でも、産科医が患者と同じように赤ちゃんを助ける方法だけを考えていてはいけない。超早産で生まれてくる子には障害が残ることも多いし、通常とは異なり、子宮を縦に切って帝王切開するので次に妊娠したときにいろんなリスクが生じる。そういったことをふまえてきちんと説明し、ときには患者に「赤ちゃんを助けるのか助けないのか」という辛い決断を迫らなければならないこともある。

「毎年この産院で行われる約2千件の出産でおよそ300件の出産は命の危険と隣り合わせだ」と書かれている。産科医たちは、全体の実に約15%の出産において、限られた時間のなか命に関わるギリギリの判断を迫られている。人間だから迷うのは当然だし、答えがないからこそ、いつも「本当にこれで良かったのか」と葛藤するのだろう。それでも、次に繋げて前に進んでいくしかない。せめて、すべての産科医が鴻鳥のように「産まれてきた全ての赤ちゃんに“おめでとう”と言ってあげたい」と願いながら働けるような、環境であればと思う。

文=小里樹
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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