脚本家・平松正樹自らが追憶する『空の境界』の記憶(1)

ダ・ヴィンチニュース / 2013年8月19日 17時30分

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テレビ、ニコニコ動画でオンエア中の『空の境界』の記憶(1)

○プロローグ、的な
 はじめまして。脚本家の平松です。自分が参加させていただいた劇場版『空の境界』が再構成され、今、テレビやニコニコ動画でオンエアされています。

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 この原稿を書いている時点で、第四章『伽藍の洞』、第三章『痛覚残留』、第一章『俯瞰風景』、第二章『殺人考察(前)』までが放映済み。

 いよいよ、佳境へと向かう『空の境界』の物語。これまでを振り返りつつ、終盤をより楽しんでいただくために、当時の思い出などを交え、紹介できればと思います。

 奈須きのこさん原作の『空の境界』は、『直死の魔眼』を有し、殺人衝動をその根源に抱く異能者・両儀式(りょうぎしき)が、魔術師や異能者たちとの壮絶な戦いの中、式に想いを寄せる黒桐幹也(こくとうみきや)との心の絆を深めていく、伝奇と純愛の物語です。詳しくは原作小説や公式サイトをご覧くださいね。

 さて、今回は当時公開された第一期(一章~三章)を振り返ってみたいと思います。


○第一章『俯瞰風景』のこと

 あおきえい監督による一章が、劇場版『空の境界』の空気感を決定づけたということは、今でも当時一緒に仕事をしていたアニメーターの友人との話に上ります。原作を読んで感じる、現実社会でありながらそのすぐ隣に潜む魔的な闇の存在、生きていたいのに死を意識せざるを得ない主人公・式の苛立ち、そんな張り詰めた無色な「空気」が、一章の一番の見所だと思います。

 苦労したのは『原作を忠実に再現する』という部分です。これは全章に同じことが言えるのですが、原作は一人称の小説なので、そのままセリフにしてしまうと、モノローグだらけになってしまいます。それを、どうセリフではなく映像で見せるのか、ということを意識して脚本作業をしました。

 七部作の一本目ということで、一章にはキャッチーさも求められました。原作を再現しつつ、エンターテインメント性を持たせるために、原作にはない巫条霧絵(ふじょうきりえ)との接触~戦い(式が腕を切り落とす)といった場面や、式が幹也不在の心の不安定さを払拭するために、「嫌いだ」と言ったハーゲンダッツのストロベリーを食べる場面などをあおき監督や奈須さんらと話し合いながら、脚本にまとめました。その改変が原作ファンにどう受け入れられるのか、かなり緊張しながら試写会の会場の片隅であおき監督と一緒に見たのですが、上映終了後に拍手が起き、二人で安心しながら握手したのでした。

ダ・ヴィンチニュース

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