中国でアニメスタジオを作った日本人女性の苦難と感動

ダ・ヴィンチニュース / 2013年8月29日 11時50分

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『なんで私が中国に!?』(日野トミー/イースト・プレス)

 1枚描いて200円。月産500枚で10万円。これは何かと尋ねたら?──新人アニメーターさん(動画マン)の作画の単価でございます。

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 文明社会がどれだけ進化しても、「人による手描き」が基本のアニメの世界に飛び込めば、待っているのは厳しい現実。平均労働時間18時間、徹夜作業も日常茶飯事。新人の離職率年間90%、平均月収数万円……親の仕送りをもらって生活をやりくりしているアニメーターさんなんて珍しくない。

 1日でも早く上手くなって原画マンに昇格し、いつかは作画監督やキャラクターデザイン担当に! そんな日を夢見て、腱鞘炎スレスレでひたすら絵を描く彼らに支えられ、日本のアニメは作られている。

 世界のトップを走る日本のアニメ業界ですらこんなに大変なのに、もっと過酷な現場へ放り込まれたアニメクリエイターがいる。『なんで私が中国に!?』(イースト・プレス)の著者、日野トミーさん(女性)だ。

 「中国人と一緒にアニメを作ってきなさい!」

 社長の鶴のひと声で、突然、言葉も通じない中国へと赴任することになった彼女は、行政がアニメ産業に力を入れている西安市碑林区にスタジオを構え、人集めから正々堂々と試合開始!

 そんな彼女の前に次々と襲いかかる、恐るべき中国アニメ事情。

 言葉の壁、常識の違い(最強はトイレ事情!?)、仕事中平気で寝る社員、日本語の勉強を口実にネットでアニメを違法視聴し続ける社員、日本でいう「ゆとり世代」な「90后(ジュウリンホウ)」の若者たち、著作権意識皆無のパクリ作品の横行、設定を無視して好き勝手な絵で上がってくる作画、ブレーカー上がりまくりの電気設備!

 日本と異なり、『秘密結社鷹の爪』などでおなじみのFLASHアニメが盛んな中国で、悪戦苦闘しながらもアニメ会社を回し、次第にスタッフと心を通わせながら、アニメを作り上げていくトミーさん。

 そんな矢先、尖閣問題をきっかけに立ち込める反日運動という暗雲。時に2010年10月。けれど、トミーさんを取り巻く人たちは、笑顔で日本人の彼女に告げる。

「日本のアニメが好き」「みんなはアニメの仕事が好きでここにいる」──と。

 アニメーションという共通言語を持って集まった人々。作品を通して国と国、人と人がつながれる素晴らしい現場。それは日本でも中国でも同じこと。だから、アニメクリエイターさんたちは、明日を夢見て、アニメを作り続ける。そして、そのアニメは見る者に夢と感動を与えてくれるのだ!

 私は声を大にして伝えたい。日本のアニメは、紛れもなく平和の使者。友好の架け橋である、と。


文=水陶マコト
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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