お互いに尊敬してない!? 鈴木敏夫Pと高畑勲、宮崎駿の不思議な関係

ダ・ヴィンチニュース / 2013年11月22日 12時10分

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『風に吹かれて』(鈴木敏夫/中央公論新社)

 今週末についに公開される、スタジオジブリ最新作にして高畑勲監督にとって最後の作品といわれる『かぐや姫の物語』。これに先駆けて先週末から公開されているのが、ジブリに密着したドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』だ。この中で、高畑勲・宮崎駿という世界に誇る巨匠2人とともに“天才”と称されているのが、プロデューサーの鈴木敏夫。ご存じの通りジブリを語るのに決して外せないのが鈴木の存在だが、果たして、3人の関係とはどんなものなのだろうか。

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 今年8月に発売された、鈴木へのインタビュー集『風に吹かれて』(中央公論新社)によれば、鈴木と高畑・宮崎監督との出会いは、鈴木が『アニメージュ』(徳間書店)の編集者だった時代に遡る。創刊時、アニメの知識も興味もなかった鈴木が、アニメに詳しい女子高生3人に取材し、彼女たちが「名作だ」と太鼓判を押した『太陽の王子 ホルスの大冒険』(徳間書店)で8ページを稼ごうと画策。女子高生の話だけで企画を立ててしまうとは鈴木の豪快さが如実に現れたエピソードだが、ここに運命の出会いが待っていた。『太陽の王子~』は、東映動画に所属する高畑が初めて映画で監督を務め、宮崎もまた初めて本格的にアニメづくりに参加した作品だったからだ。

 さっそく高畑に電話をかけ、取材交渉を行う鈴木。しかし、高畑は「会いたくない」の一点張り。話し始めて1時間が経ったころ、高畑が「彼は別の意見を持つかもしれないから」と電話を代わったのが、宮崎だった。でも、その宮崎は「16ページ欲しい」と要求。これには鈴木も「何だ、こいつら」と思ったそう。だが、この話にはさらなるオチがある。なんとこのとき、鈴木は肝心の『太陽の王子~』を観ていなかったのだ。電話でのやりとりの後、ようやく作品を観ることができた鈴木は、“ベトナム戦争を下敷きにしてマンガ映画をつくっている”ことに仰天し、「すげぇ映画」だと驚いた。そのときの衝撃は今でも忘れないと話し、「人生変わりましたよ」と言う。

 実際、2人との出会いによって、鈴木の人生は変わった。続いて『ルパン三世 カリオストロの城』を制作していた宮崎に取材を申し込むが、「あなたたちがつくっている雑誌はくだらない」と再度拒否。頭にきた鈴木は、宮崎が作業する仕事場で、ただ黙って隣で座り続けた。結果、3日間ものあいだずっと一緒にいたという。さらには『じゃりン子チエ』を制作中だった高畑にも食い下がり、絵コンテを別ルートから入手し、原作を読みコマ割りからセリフまですべて頭に叩き込み、高畑に“なぜ原作のこのエピソードを削ったのか?”などと具体的に迫った。そのうち、こうした議論を毎日繰り返し、映画の完成パーティでは高畑から「あなたといろんな話をすることによって、僕はこの映画をどうやってつくったらいいかが非常に明快になった」と感謝の言葉をかけられるまでに。それにしても、宮崎と高畑に毎日会っていたというのは“異常な毎日”としか言いようがない。本書でもインタビュアーの渋谷陽一から「もう完全に青春と恋愛が一緒に来たみたいな感じですよね。もう好きな女の子2人もできちゃって、それと毎日毎日会っているみたいな」と言われ、鈴木も「そうなんですよ」と答えている。

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