「小悪魔ageha」は22歳、夜の蝶で防府市在住!? 雑誌の読者を勝手にプロファイリング!

ダ・ヴィンチニュース / 2013年11月27日 11時30分

写真

『雑誌の人格』(能町みね子/文化出版局)

 あなたはこれまでどんな雑誌を読んできただろうか? 就学前、小学生、中学生、高校生、大学生と成長する間で興味のあること、ファッションや音楽、スポーツなど欲しい情報が載っているもの、好きな漫画やあこがれの芸能人の連載があるもの、ゴシップ記事や店情報、また成人すると仕事や生活に関係することなど、様々な目的から自分に合った雑誌を読んできたことだろう。

関連情報を含む記事はこちら

 ということは、その雑誌を読んでいるのは、性別や年齢、趣味、ライフスタイルなどが似たような人たちが集まっているということになる。それが「読者層」というものだ。その読者層、普通は編集部がターゲットとして設定しているものだ。しかし誌面から匂い立ってくる内容から想像し、職業や居住地、家族構成、好きな言葉やライフスタイルなど人物像を勝手に作り上げて、その読者が雑誌をどう楽しんでいるのか、そしてその雑誌がどう面白いのかを読者層以外に提示するという、独断と偏見に基づいて追求しているのが、ファッション誌『装苑』(文化出版局)に連載されている『能町みね子の雑誌の人格』だ。

 その連載がまとめられ『雑誌の人格』(能町みね子/文化出版局)として1冊の本となった。能町氏は男性であることを隠して女性として会社で働く日々を綴った「オカマだけどOLやってます。」というブログで注目され(その後、能町氏は性別適合手術を受け、戸籍上も女性となっている。同ブログは『オカマだけどOLやってます。完全版』<文藝春秋>としてまとめられている)、現在は「文章やイラストの仕事のほうが多い漫画家」(本書の著者略歴より)として活躍している。本書には2010年から2013年まで連載された40冊の雑誌と、連載誌である『装苑』についての考察を加え、能町氏のカラーイラストとともに載っている。

 その初っ端は、この連載を始めるきっかけとなったという『小悪魔ageha』(インフォレスト)だ。ちなみに本書では雑誌名に“さん付け”をして、雑誌を人格として捉えている。その「小悪魔agehaさん」は22歳、職業は夜の蝶で山口県防府市在住、「飛宙凛」という名の息子がいて、好きな言葉は「盛る」、好きな場所は「やっぱ地元やろ」とプロファイリングされている。もともとキャバ嬢向けとして始まった同誌だが、読者層の裾野の広さは見逃せないという能町氏。お姫様のようなロマンティックな洋服を扱うブランド「JESUS DIAMANTE」を着て、故郷の田んぼの前で撮影される読者モデルからニューハーフ、アキバ系アイドル、浅草の振袖さんまでが登場するなどタブーは一切なし。そんな誌面に登場する人たちのド派手なビジュアルと奔放な行動はこちらが気圧されそうになるが、能町氏は彼女たちの考え方はピュアでそこそこ健全であり、「一見ファンタジーのようでいて、実はドキュメンタリー。地方に住むとても現実的な女の子」たちが読んでいると喝破する。イラストには子どもの手を引く地味顔でスウェット姿の女性が、夜はメイクと髪を盛ってキャバクラで接客するという日常が描かれている。

 その他に取り上げている雑誌には「仕事はできるし金もある。そんな今だからこそどうにか女にモテたい、愛すべき中年」という『LEON』、「ライフスタイルに高い理想を掲げながらも物欲から逃れられない、ポリシーやこだわり重視の女子」の『ku:nel』、「自信のなさすら奥ゆかしさとして長所に転じさせる力を持った、“女性性”の強いモテる女子」の『non-no』などなど、雑誌を愛するがゆえに、ところどころで漏れだす強毒(!)を楽しめる1冊となっている。

 本書を読むと、美容院で手渡された雑誌名を見て「自分ってこう思われてんのか……」と思って無駄にヘコむ、もしくは逆に希望が生まれることもある、かもしれません(笑)。

文=成田全(ナリタタモツ)

ダ・ヴィンチニュース

トピックスRSS

ランキング