謎多き「茶聖」千利休 実は情熱あふれるロマンチストだった!?

ダ・ヴィンチニュース / 2013年12月10日 11時40分

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『利休にたずねよ』(山本兼一/PHP研究所)

 「茶聖」とまで称えられた千利休の、内なる情熱と禁断の恋を描いた直木賞受賞作『利休にたずねよ』が、究極の美の本質を描く映画として鮮やかに生まれ変わり、その圧倒的な美の世界は、海外からも高く評価され話題となっている。

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 戦国時代、特に豊臣秀吉を描くドラマや小説には欠かせない「千利休」。織田信長から茶頭として重用された茶人である利休は、秀吉の治世では懐刀としてなくてはならない存在であった人物だ。黄金の茶室の設計、全国の茶人を一堂に集結させた「北野大茶会」の主管を見事にこなし“天下一の宗匠”として名を馳せた利休は、一方でわずか2畳にも満たない狭い茶室に究極の美的空間を作り上げ、侘び茶を完成させた。その審美眼の鋭さは信長や秀吉からも一目置かれるほどだったという。

 それほどの芸術家はいかにして育まれたのか。彼を支える美の原点とは何なのか。山本兼一氏による直木賞受賞作『利休にたずねよ』は、「茶聖」とまで称えられた利休は、実は内なる情熱にあふれた人物だったのではないかという大胆な仮説によって、新たな利休像を作り上げた極上の歴史小説だ。利休が肌身離さず持つ女のものと思われる緑釉の香合の謎から、若き日の利休の禁断の恋、美への情熱の原点へと誘う物語は、生と死と美の世界が交錯し、歴史小説ながら極上のミステリーと究極のラブストーリーの味わいも持つ。

 そしてこの度、この『利休にたずねよ』の世界が見事映画となって生まれ変わり、12月7日(土)より全国公開された。「美しい映画を撮りたい」という田中光敏監督(代表作に『精霊流し』『火天の城』ほか)の熱意のもと、原作を忠実に再現した圧倒的な美の世界は、極めて静かに鮮やかに利休の追い求めた美の本質を描きだす。主人公・利休役の歌舞伎俳優・市川海老蔵氏、利休を静かに支える妻・宗恩役の中谷美紀氏ほかキャスティングも絶妙で、特に商家の放蕩息子だった青年期から晩年までの利休を演じ切った海老蔵氏の気迫はすばらしく、師匠役の故・市川團十郎氏との親子共演など見どころも多いのがうれしいところだ。利休が愛したとされる黒樂茶碗、三井寺や神護寺など寺社境内での撮影など、実存する「本物」を使って作り上げられたというこだわりにも驚きだが、そうして作りだされた究極の「日本の美」の世界は海外でも高く評価され、第37回モントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞することとなった。

 とかく小説の映像化には賛否両論がつきものだが、ことこの『利休にたずねよ』に関しては、どちらも味わうことをおすすめしたい。これだけの「美」の世界においては映像が示すリアリティの意味は大きく、小説が持つ深みある世界と合わせて楽しむことで、新たな奥行きが生まれ、格別の感動を与えてくれることだろう。

構成・文=荒井理恵

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