「キムチ風味のサーモン」が和食!? 世界に広がる“ギミック和食”

ダ・ヴィンチニュース / 2014年1月6日 13時10分

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『和食の知られざる世界』(辻芳樹/新潮社)

 無形文化遺産への登録が決定したことで、いま「和食」が脚光を浴びている。が、これは日本国内に限った話ではない。辻調理専門学校校長・辻芳樹の著書『和食の知られざる世界』(新潮社)によると、日本人が想像する以上に世界では和食がブームで、この3年間で世界の日本食レストランは2倍近く増え、市場規模も2002年は2.2兆円だったが、2020年には最大6兆円に拡大することが予想されているそうだ。

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 しかし、その日本食レストランの実態は、多くの日本人が杞憂するように、和食イメージから離れたものも多い。著者によれば、ロンドンで日本食店を展開する「ワガママ」グループの人気メニューは、「チリ・ビーフ・ラーメン」。トッピングは牛肉にコリアンダー、チリ、ライムなどで、「私たち日本人にとっては、むしろベトナム料理の“フォー”に近い印象」だという。また、同じくロンドンで回転寿司チェーンの「ヨー! スシ」が今年に発売し、大ヒットを記録した「ライスバーガー」の中身は、「キムチ風味のサーモン」「コリアンダー風味の豆腐」と、日本人なら和食というよりエスニック料理と位置づけそうなもの。アメリカで誕生したカリフォルニアロール同様、どうやら和食は大きく誤解されているようだ。著者はこのように「和食っぽい素材」で「和食っぽい見た目」の料理を、“ギミック和食”と名付けている。

 しかし、いまや日本においてもカリフォルニアロールが回転寿司の定番になったように、“ギミック和食”は「一概に否定されるべきものではない」だろう。さらに、この“ギミック和食”のほかにも、和食は世界で違うかたちとなり、変容しているのだ。

 たとえば、「和食ではないけれども確実に日本の料理技術や食材の使い方に支えられている料理」。フランスの3つ星料理人の中には、魚料理に昆布出汁で煮たカブを付け合わせたり、柚子胡椒を使ったりするなど、和食からインスパイアされたフレンチを生み出しているという。これを著者は“ハイブリッド和食”と呼んでいる。

 また、“和食の素材や魅力を活かしつつ、新しい素材や手法を取り入れた料理”もある。これは、炊き込みご飯やお椀、お造り、茶碗蒸しといった和食を提供しながらも、出汁にトマト・ウォーターを使うなど、現地の人にもおいしいと思ってもらえるように工夫をこらしたものだ。“ギミック和食”とは違い、「ギリギリ和食の範囲に収まっている」のが特徴で、本書では“プログレッシブ和食”と命名している。

 そもそも世界の和食ブームは、「低カロリーでヘルシー」といった効能への評価や、日本のマンガやゲームといったサブカルチャーへの憧れから発展したもの。日本食レストランの経営者は日本以外の“異文化の人々”が多いというが、彼らが和食に馴染んでくれたおかげでここまで世界に広がったという見方もできる。むしろ、他国に比べて海外からの修行者に対して閉鎖的であると言わざるを得ない日本料理界の問題も、“正しい和食”が伝わらない理由のひとつかもしれない。

 日本人にとっては、和食という文化が世界で評価されることは誇らしいことだが、その本質まではまだ発信できていないのが現状。著者も指摘しているが、日本の武道である柔道がフランスのパリに中心地が移ってしまったように、いつのまにか和食が日本のものではなくなる可能性だってある。海外の和食チェーンが日本に逆上陸し人気を博す……近い将来、そんな日がやってくるかもしれない。

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