リア充への呪詛がすごい! 負け女子マンガ家・カレー沢薫の『負ける技術』

ダ・ヴィンチニュース / 2014年2月18日 11時30分

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『負ける技術』(カレー沢薫/講談社)

派遣社員になって派遣切りに遭う。18歳の夏にはBBQ広場で2日連続“1人BBQ”。高校3年間で男子と喋った回数は2回。そんな、自称“負け組”のカレー沢薫が描くエッセイ集『負ける技術』(講談社)には、リア充に対する憎しみがたくさん詰まっている。その中から、リア充に対する呪詛の数々を見てみよう。

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 まず、彼女はとにかくリア充が悲惨な目に遭うことを喜ぶ。たとえば、女3人でラブホテルに入ったことがあったのだが、そのとき彼女たちが最後の1室を取ったがために、「その直後に来たカップルが入れずに帰っていった」そう。その姿を見て、「喜びのあまり、自分たちの部屋以外は全室カップルという事実を忘れてしまっていた」ほど。

 それに、リアルだけでなく、映画でもリア充が救われない話に大歓喜する。知能を持った巨大サメが人々を食い殺すという『ディープ・ブルー』では、クラスのリーダー的存在が「みんなで助け合って脱出するんだ!」と演説する最中、背後から食べられる。さらに、主人公とヒロイン、ムードメーカーの小太りコックが残るラストでは、まさかのヒロインが食べられるというのだ。これを楽しめない相手は「私の敵である」とまで言い切るからすごい。

 また「制服カップルが憎い」とも語るカレー沢。高校3年間で男子と喋った回数はわずか2回。しかも、その中身は「窓開けて」と言われただけ。暗い、喋らない、真面目でも成績がいいわけでもない、オタク、学校でもアニメやゲームのキャラの絵を描いている、女子からはナメられ、男子からはいないものとされている、帰宅部…。そんなイケてないお手本のような彼女にとって、制服姿でのデートというのは“キラキラした学生生活の象徴”であり、もはや手に入れることができないもの。そんな未練や思い残しがすべてそのままカップルへの憎しみにつながるという。それは、結婚しても変わらないそう。なぜなら、「他人が羨ましくてたまらないという感情には、己の立場は関係ない」から。

 そして「リア充爆発しろ」は、非リア充なら1度は使ったことがあるはず。しかし、それが「A組のリア山爆発しろ」というように、具体的な誰かを思い浮かべることができる人は、カレー沢に言わせると「非リア充としてのレベルが低い」そう。それは、「リア充にちゃんとした恨みを持てるだけの接点がある」から。真の非リア充は、リア充になにかされるどころか、まともに会話したことすらない。ただ、自分の中の「リア充のイメージ」という実在しない敵と戦っているだけ。だから、「リア充爆発しろ」は「俺より楽しそうにしている奴は爆発しろ」という意味で、リア充を叩いているように見せて、実際は「自分の人生がつまらな過ぎる」ことを嘆いているのだ。

 ありえないことだが、もし万が一、本当にリア充が1人爆発したとしても、その爆風で「非リア充が100人巻き込まれて死ぬ」だけだとカレー沢は言う。彼女の“負ける技術”は、こういったところに表れている。

 天気で言うなら常に薄曇り。人生良くて30点ぐらいと割り切って、いつもちょっとだけ絶望しておく。「俺は負け組です」と周りに表明するのではなく、「俺は負け組なんだ」と自分を納得させる。そんな人生つまらないと思う人もいるかもしれないが、大きく絶望することもないし、小さなことでも喜べるので、実はもっとも幸せに生きられる術なのかもしれない。

文=小里樹

ダ・ヴィンチニュース

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