小説『深海のアトム』 服部真澄インタビュー 隔壁を乗り越えた先にある違う世界を見てみたいと思うんです

ダ・ヴィンチニュース / 2014年3月9日 9時20分

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『深海のアトム』(服部真澄/KADOKAWA 角川書店)

 海に囲まれた国、日本。私たちは水平線広がる大海原の懐に抱かれて生きてきた。

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 服部真澄さんの新作『深海のアトム』は、そんな日本の中でもとりわけ海と深く結びついてきた東北の架空のエリア「陸滸国(リアス・エリア)」が舞台になっている。海の恵みに頼って暮らしてきた陸滸国では、今も漁業は地域の一大産業だ。だが、それだけで経済を支えることはもはや難しい時代。土地の政治家や有力者は考える。もっと手っ取り早く大金を掴む方法はないか、と。そんな彼らの目に「原発建設」の甘い誘惑が飛び込んでくる。

「2011年に起こった東日本大震災は、私にとってもやはりショッキングな出来事でした。想像を絶する自然災害、そして未曾有の原発事故という大きな出来事を目の当たりにし、私自身の考え方も変わらざるをえないところもありましたし、今まで生きてきた流れのなかに一つの傷ができたような、バリアができたような、とにかく容易には表現しがたい思いが強く残りもしました。ですから、そこから抜け出すにはどうしたらいいかというのを小説のなかで考えてみたいと思ったのが、執筆を始めたきっかけです」

 だが、本作はただ単に震災の悲劇を描くものではない。そこから一歩も二歩も踏み込んで、国際的な資源問題を大きな背景に、それぞれの理想や思惑を抱えて動く人々が織りなすダイナミックな人間ドラマになっているのだ。


■野心、復讐心、金銭欲……あらゆる感情を飲み込む海

 陸滸国の寒村で生まれ育った少年・カイは、有力者一族が地域社会を意のままにしている現実から逃げるため、一か八かの賭けに出る。米国にある「キタヒロ生物資源開発研究所」では、最高の頭脳を持つ世界的なVIP・キタヒロ名誉教授が、“投げ文”という古風な方法で飛び込んできた情報を元に陸滸国行きを決心する。そして、深海探査船「ステラマリス」の船上では、陸滸国出身の若き研究員・湊屋理央が、ナターリア・カルドーザ教授から陸滸国沿岸漁業の新しいビジネスを持ちかけられる。遠く離れた場所で動き出した3つの異なる物語。だが、それらは見えざる糸で繋がっていた。

 そして、徐々に強くなっていく張力が、関係する人々の思惑を浮き彫りにし、事態を動かしていく。

「私は常に、普通とはちょっと離れた視点を持ちたいと思っているんです。起こった出来事について、感情的に考えるのは簡単です。だけど、それだけでは満足できない。物事を斜めから見るのが好きなのかな。とにかく、全く違う観点から捉えることはできないかと、考えずには気が済まないのです」

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