あの人気声優の読書エッセイ集が発売! 池澤春菜『乙女の読書道』

ダ・ヴィンチニュース / 2014年3月11日 11時40分

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『乙女の読書道』(池澤春菜/本の雑誌社)

 アニメ『ケロロ軍曹』の西澤桃華役などで知られる声優・池澤春菜が初の書評集を刊行した。タイトルはずばり『乙女の読書道』(本の雑誌社)。

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 「えっ、あの声優さんが書評集?」と思われた方もいるかもしれない。そう、池澤は年間300冊から500冊の本を読み漁る、プロの書評家も裸足で逃げ出すくらいの読書家なのだ。彼女の好むジャンルは海外SF、ファンタジーで、現在日本SF作家クラブ会員でもある。そもそも父は芥川賞作家の池澤夏樹、祖父も作家の福永武彦と、池澤は文筆家の家系に生まれ育った人物。これだけ堂の入った読書家が誕生するのも納得だ。

 今回の『乙女の読書道』(本の雑誌社)は雑誌『本の雑誌』(本の雑誌社)に2009年より連載されたコラムをまとめたものである。紹介されている本は全部で60冊。重厚長大な未来叙事詩『ハイペリオン』(ダン・シモンズ:著、酒井昭伸:訳/早川書房)を筆頭に、R・A・ハインラインやサミュエル・R・ディレイニーといった海外SFの大御所から、人気海外SFドラマ『スター・トレック』のカーク船長役を務めた俳優、ウィリアム・シャトナーが書いた電脳ハードボイルドSFのような知る人ぞ知るマニアックな小説まで、SFジャンルに対する中毒症状全開のラインナップになっている。

 『乙女の読書道』の良い点は、池澤の語り口の軽やかさにある。

 ロイス・マクマスター・ビジョルド『死者の短剣』(小木曽絢子:訳/東京創元社)を紹介した回を例にしよう。強大な文明が滅びた後の世界、魔術師が作り出した“悪鬼”と呼ばれる存在との戦いを描く物語、とあらすじを聞くとハードでシリアスなお話を思い浮かべるのだが、この回の見出しは「壮大ファンタジーの壮絶嫁いびりにびっくり」。おいおい何だそれは、と思いながら読み進めると、池澤はこんな風に小説の読みどころを説明する。

 「壮大な道具立て、さぁ物語はこれから、と第二巻をわくわくしながら手にとって呆然。第二巻最大の敵は、姑と義理の兄。(中略)三十七歳年の差カップルを襲う壮絶な嫁いびり……って、何のお話だったっけ?」

 うはは、全然ファンタジー関係ないじゃん! こうしてポップに作品のツボを語りつつ、他のファンタジー小説シリーズの書誌情報もさりげなく文章中に盛り込ませる。親しい友達同士で本を薦め合うような柔らかな口調と、SF・ファンタジー小説マニアとしての知識の詰め込みが程良いさじ加減で成立しているのが『乙女の読書道』の特長だ。

 本書には父・池澤夏樹との対談も収録されている。本の虫だった春菜の少女時代を語り合う微笑ましい場面あり、新聞の書評委員も務める夏樹が娘と書評論を交わす真面目な場面ありと、父として、そして書評の書き手の先輩として声をかける池澤夏樹の姿が見られる貴重な対談である。レビュー同様、こちらも必読だ。

 はじめての書評集を刊行した池澤だが、最近ではSFにまつわるトークイベントを月1回開催するなど、文筆以外でも読書に関する活動に力を入れている。声優・池澤春菜、今日も読書道を邁進中である。

文=若林踏

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