一青窈「今回のシングルに入れた曲は、私の今の状況とつながっています」

ダ・ヴィンチニュース / 2014年4月15日 11時0分

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『桃紅えほん』(篠田桃紅/世界文化社)

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは新曲「蛍」を3月26日にリリースしたばかりの一青窈さん。オススメの一冊は墨いろも美しい『桃紅えほん』だった。

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「『桃紅えほん』を見ていると、墨いろとひと言で言っても、紫っぽい色があったり、ちょっと朱が入っていたり、ものすごくいろんな色合いがあって、きっと桃紅さんも選んで使っているんだろうなと」

 すずりで墨を擦る。

「ちゃんとやろうとすれば、20~30分かかる。でもその時間がくれるものがあるんです」と。文字を書くこと、言葉にすることについて、あらためて考えるきっかけにもなったらしい。

「去年の暮れ、ホームパーティをやった時には、友達のひとりが“窈ちゃんをイメージして便箋をつくった”と渡してくれたのが嬉しくて、“じゃあ、みんなに手紙を書きます”って酔っぱらいながら墨を擦って、ひとりひとりに思い出を書いて渡すという儀式をやりました」

 新しいシングルに、なぜ「アンパンマンのマーチ」のカバーが収録されているのか。その理由も、ある出会いがきっかけだった。

「高松にある養護施設を訪ねたのは、ミャンマーで出会った男の子が養護施設で育ったと知ったからでした。最初は子どもたちに全然打ち解けてもらえなくて、いきなり蹴られたりして。でもそれって彼らの愛情表現なんです。かまってほしいけど、たぶん親から受けた仕打ちがそういうものだったりして、普通とは違う反応がやってくる。“そんなこと言わないで手をつなごうよ”と言っても、ぐんぐん逃げていくし“じゃあ、いいよ”って言うと微妙な距離で近づいて遠巻きに見ていたりする。なんだ、どうすればいいんだろうと。何か特別な言葉をかけたわけではないけど、彼らにとってはそういう訪問者ってきっとたくさんいるから“必ずまた来るよ”とか無責任な約束はせず、正直な言葉だけ紡ぐようにして近づいていった感じでした」

 その時に、子どもたちが歌ってくれたのが「アンパンマンのマーチ」。

「そうしたら後日、やなせたかしさんの追悼番組をやるからとNHKに声をかけてもらった。あの時、私は全然一緒に歌えなかったけど、そうだ、『アンパンマンのマーチ』を歌おうと。あらためて歌ったら、この素晴らしい気づきのサビは何だろうと思って。歌っていると自分が元気になるから、あの子たちも歌うんだって、初めて気がついた。それで最初は入れる予定はなかったんですが、入れさせてもらった。歌は私にとって宛名のある手紙みたいなもの。今回のシングルに入っている曲って、そんなふうに私の今の状況とつながっているんですよ」

取材・文=瀧 晴巳

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