【人気沸騰中】温かくしずかで、上品。洋服との付き合い方を考えさせられる物語。映画公開前に要チェック!

ダ・ヴィンチニュース / 2014年5月24日 7時20分

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『繕い裁つ人』(池辺葵/講談社)

 ファッションは、現代人にとって大きな関心事のひとつです。王侯貴族が自分達を誇示する手法として始まり、今ではライフスタイルに密接するまでになっています。めまぐるしい流行り廃り、次々に新しいモノが出てくる様子は、華やかであり綺羅びやか。飽くなき欲望と探求を体現するような、一大ムーブメントなのであります。

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 ただ、一方で、“流行があることによる”弊害も問題です。流行り廃りの激化に比例して、衣服の短命化も著しく加速しているのです。場合によっては使い捨てにされてしまう事もしばしば…。売る側としては、どんどん買い換えてもらわねば困るので、至極真っ当な風潮といえます。

 いやはや、大量生産大量消費とはよく言ったものです。「買ったものの、一度しか着ていない」…という服が、少なからずクローゼットにあるのではないでしょうか。そしてその中に、一生着るつもりの服は何着あるでしょうか。

 “オシャレは大好きなのに、洋服は大切にしない”

 そんな人へ、穏やかに平手打ちをぶちかますのが『繕い裁つ人』(池辺葵/講談社)なのであります。

 舞台は洋服のお直しやオーダーメイドを手がける、昔ながらの洋裁店。祖母から店を受け継いだ市江(いちえ)のもとへ、今日も様々な洋服が持ち込まれてきます。腕は街イチバンの超一流。リメイクした服には熱心なファンがつくほどです。“たったひとりのための服”をモットーにする市江は、今日も黙々とミシンを踏み続けます。洋服は人生の一部。それぞれの思い入れに磨きをかけ、人生に彩りを加えるようなエピソードが紡がれていきます。

 終始ゆったりとした空気感で、物静か。洋服を巡る、上品な人間ドラマが本作の魅力。劇的な展開や描写はないものの、読み終えた時、ふと洋服との付き合い方を考えてしまう作品です。

 単なる布きれと言われれば確かにそうですが、人は生まれた時も、死ぬときもその“単なる布切れ”に包まれています。洋服を尊び、人生を共にするということは、思った以上にステキな事に違いありません。「糸」に「善い」と書いて、「繕う」とはよくできた漢字です。

 人気沸騰中の本作ですが、来年には早速映画が公開されるとか。優しくて、どこか日本的な、洋服の物語。ファッション雑誌を読むよりも、オシャレになれるかもしれません。

文=すぎやまなつき

ダ・ヴィンチニュース

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