『GANTZ』作者・奥浩哉氏の新連載の主人公は…58歳の中年男!?

ダ・ヴィンチニュース / 2014年6月10日 7時20分

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『いぬやしき』(奥浩哉/講談社)

 上手くいかない仕事も人間関係も恋愛も全て見てみぬフリして「そんな人生じゃないよ、逆転できるはずだよ」と笑っていたい。不条理な日々の中で降り注ぐストレスに私たちは黙って耐えることしかできないのだろう。理不尽な世の中を苦など感じず、悠々と渡り切るにはどうしたら良いのか。本当は自分の手では何も変えられないことに誰もが気づいている。常に人知を超える何者かが私たちの命運を握っているのだ。ああ、現実はいつだって、残酷だ。

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 『いぬやしき』(講談社)は 『GANTZ』(集英社)で名高い奥浩哉の新作マンガだ。2014年から『イブニング』(講談社)で連載がスタートしてから読者の間で大きな反響を呼んでいる。緻密な作画とスリルある壮大な展開は本作でも顕在で、SF的な思いがけない展開からは目が離せない。先が全く予想できずに、誰もが、かぶりつくようにページをめくることだろう。

 主人公は58歳のサラリーマン。高校生と中学生の2人の子の父親であるが、年齢よりも老けた見た目、弱気な性格の彼は、家族からは煙たがれる存在だ。ある日、胃ガンを宣告された彼は、家族にそれを告げることもできずに、愛犬と散歩にでかける。丘の上で、自分の人生の儚さに涙しているところ、近くにいた若者とともに、謎の地球外生命体に命を奪われてしまう。そして、男と若者は、地球外生命体によって外見は人間に修復されたが、中身を兵器ユニットに入れ替えられてしまった。機械となってしまった彼らはこれからどうなってしまうのか。元にはもう戻れないのか。戻れないのだとしたら…いったいこの身体で何をしようか。

 世の不条理を描かせたら奥浩哉の右に出るものはいないだろう。58歳の男が社会で虐げられ、家族にも相手にされない姿を残酷にありありと描き出している。

 そんな何の取り柄もない男の中身が急に兵器になってしまうのは滑稽だ。腕から銃が飛び出したり、頭が真っ二つに割れたり、食べたはずのものが何も消化されず身体から出てきたりする。見えにくくなっていた目も痛かったはずの腰もすっかり良くなっているし、遠くにいる人の声も良く聞こえる。いったい男はこれから何をするというのだろうか。今までなれるはずもないと思っていた「正義のヒーロー」として活躍するというのか? 今まで抱えてきた「ストレス」の根源、世の中の理不尽さに立ち向かおうというのか?機械になってしまった男の今後が気にかかる。

 男と一緒に兵器ユニット化してしまった若者も気になる。この高校生はその事故以来、学校には行っていないようだが、同じ事故にあった58歳の男と今後どのように関わるのだろうか。

 虐げられた者たちはこれからどう世間に逆襲していくのだろう。世の不条理を感じている全ての人がぜひとも読むべき作品だ。

文=アサトー ミナミ

ダ・ヴィンチニュース

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