【北村薫インタビュー】 人生疲れ気味のあなたに読んでほしい 深呼吸したくなるような山小説

ダ・ヴィンチニュース / 2014年6月10日 7時20分

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『八月の六日間』(北村薫/KADOKAWA 角川書店)

 人生80年の時代だ。40歳なんてまだまだ半分、なのかもしれない。しかし、実際にアラフォーといわれる年齢になると、あらゆる場面で否が応でも「もう若くはない」自分を意識する。

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 たとえば仕事で理不尽なことが起きたとして、昔ならば、正面切って噛みつきにいったのに、近頃は妙に物分かりよくやり過ごそうとする。処世術が身についたといえば聞こえはいいが、ある種のエネルギーのようなものが、いつのまにか消えている。

 北村薫さんの新刊『八月の六日間』の主人公は、今まさにそうした時期にさしかかろうとしている、とある文芸誌の女性副編集長だ。

「人生の端緒についたばかりの世代でも、リタイア世代とも違う。最も正面を向きながら生きていかねばならない時期が40歳前後の時期だと思います。職場やプライベートを問わず、これまでの経験値だけでは解決がつかないことも出てくるけれども、逃げはできない。どれだけつらくても生まれてきた以上、自分への責任として生きていかなければならない。そういうことを感じ始める時期なのではないでしょうか」


■山を登って見えてくる私私を束縛する過去からの解放

 そんな世代に適した心の疲労回復の方法は? と考えた時、思い当たったのが「登山」だったという。

「知人の編集者に登山好きがいるのですが、彼女の話を聞いているうちに、『あ、これは』と思いまして。山は異界であり、非日常です。だからこそ、自分の中にある、普段は目をつぶっている部分とも向き合うことができる。抱えている苦しみや解決しがたい思いを見つめる機会を得て、その果てにひとつの場所─なにかの解放に辿り着ければいいなと考えながら書き進めました」

 ちょっと強引な同僚に誘われ、登山に初挑戦することになった主人公。行き先は南大菩薩連嶺の南端となる滝子山だ。

 標高は1620メートル。比較的なだらかな登山コースが続くが、山は山だ。何があるかわからない。案の定、彼女らは分岐点を間違え、沢に入ってしまい、そこで運命の時を迎えてしまう。
 
「細い涸れ沢だった。その上を、紅葉のアーチが先まで続いていた。木漏れ日がやさしく落ち、葉のひとつひとつが頭上できらめいていた。」(P14)
 
 この世のものとは思えない眺めに心を奪われた、“わたし”は山にのめり込んでいく。

 厳しいけれども美しい自然。そして他の登山者との触れ合い。山小屋で見つけた室生犀星の詩集。そうしたものの一つ一つが、魂を洗ってくれるのだ。

ダ・ヴィンチニュース

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