「精神主義」や「バンザイ突撃」はほんとうだったのか? 米国報告書から「日本軍と日本兵」の新たな実像に迫る

ダ・ヴィンチニュース / 2014年6月12日 7時20分

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『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』(一ノ瀬俊也/講談社)

 『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』(一ノ瀬俊也/講談社)は、太平洋戦争下の1942年から戦後の1946年まで、米陸軍軍事情報部が部内向けに毎月発行していた戦訓広報誌「Intelligence Bulletin (情報広報)」に掲載された「日本軍と日本兵」に関する記事を通して「日本軍と日本兵」の実像に迫る1冊。そこには、日本人が語る「日本軍と日本兵」という自己評価では見えない、新たな「日本軍と日本兵」の姿がある。

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 「日本軍と日本兵」といえば、「精神主義」「白兵主義(銃剣突撃から肉弾戦)」を掲げ、その「無謀」な作戦の結果、累々と屍を重ねた「玉砕」のイメージがつきまとう。米軍広報誌で「日本軍と日本兵」はどのように描かれていたのだろう。「精神主義」「白兵主義」の真偽や「バンザイ突撃」「人間地雷」の「無謀」な戦いがなぜ「正しい」戦いになったのか。そこには今日の日本社会につながるような姿が見られるのか。また兵士たちは極限状態でなにを考え、なにを思っていたのかにも関心が向く。

 「1943年に私が出会った日本兵は完全に戦争に飽いていた。彼らは熱帯を呪い、家に帰りたいと願っていた。ある者は東條(英機首相)を含めた全世界の指導者に棍棒を持たせて大きな籠の中で戦わせ、世界中の兵士たちはそれを見物したらいいと言った」。これは日本軍捕虜体験をもつ米兵の回想だ(2章「日本兵の精神」より)。広報誌に掲載された「日本軍との日本兵」に関する情報は、軍分析官による日本軍の戦術分析を中心に保有兵器に関する調査報告、戦場レポートのほか、従軍兵、帰還兵、捕虜となった日本兵が語る「日本軍と日本兵」と多岐にわたる。

 本書の章立ては、人種的・身体的特徴、食事と嗜好など文化的特徴から見た日本兵(1章)、日常生活から見た日本兵の精神、戦争観や死生観(2章)、ガダルカナル島、ソロモン島の戦いなど戦争前半における日本軍の戦法の特徴と評価(3章)、レイテ島、沖縄戦など戦争後期における日本軍の戦法の特徴と評価(4章)からなる。

 「おわりに-日本軍は何だったのか」に次のように書かれている。「米軍広報誌Intelligence Bulletinの描いた日本兵たちの多くは“ファナティック”な“超人”などではなく、アメリカ文化が好きで、なかには怠け者もいて、宣伝の工夫次第では投降させることもきできるごく平凡な人々である」。「平凡な」のひとことに救われる思いがすると同時にそれはきわめて重い。

 日本軍の艦船を少女キャラクターに擬人化したオンライゲーム『艦これ(艦隊これくしょん)』のヒット。写真集『国防男子』(集英社)の発売。憲法解釈と集団的自衛権、領土問題、愛国心教育…。これらを大げさに関係づける気も、またその能力もない。ただどんなことも状況の反映という。ほんの小さな流れが、いつの間にか抗えないような当たり前な流れに…。戦後約70年。本書がそうならないことを考える1冊になることを…。「日本軍と日本兵」は、なくてもまだある。

文=月足渡

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