“怠惰”“甘え”が原因ではない! 「働けない」若者の実態とは

ダ・ヴィンチニュース / 2014年7月2日 7時20分

写真

『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(工藤啓、西田亮介/朝日新聞出版)

●若年無業者483万人。働けない理由のトップは?

関連情報を含む記事はこちら

 働いている者の多くにとっては、仕事が自分のアイデンティティーの一部になっている。自己紹介でも何の仕事をしているか述べるのが当たり前だし、意識していようがいまいが、口を開けば、仕事の話ばかりしてしまう。今の世の中では、「働いている」ことが自分の存在の証明になっているような気がする。7月ともなると、大学4年生はそろそろ来年の就職先が決まっていないと焦り始める頃であり、大学3年生はインターンシップなどの応募が始まり、就職活動への第一歩を始める時期だろう。就職できない自分を想像すると、きっと恐ろしくなるに違いない。「プロの自宅警備員だけど、質問ある?」と2ちゃんねるにスレッドを立てていられるほど、元気があれば、まだ良い。だが、本当は、若くして職のない者は、笑い話にできないほどの孤独を抱えている。「働く」ことが当たり前とされる世の中で、彼らはなぜ「働く」ことができないのか? 世間が思っているように、「働けない」ことは本当に甘えなのか? その実態は、今働く者にとっても、これから働こうとしている者にとっても、決して遠い世界の話ではないはずだ。

 15~39歳の「若年無業者」は、潜在数で日本に483万人ともいわれているが、彼らに対する風当たりはとてつもなく強い。日頃から若年無業を支援する活動をしている、特定非営利活動法人育て上げネット理事長の工藤啓氏は著書『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(朝日新聞出版)の中で、誰であっても、若年無業者になってしまう可能性があることを指摘している。工藤氏が実施した調査では、若年無業者の75.5%が何らかの就業経験があると言い、一度就職できたからとはいえ、若年無業者になる可能性はあるのだ。工藤氏に言わせれば、若年無業者は、誤解にさらされた存在だという。最も顕著な誤解は、「働くことができない若者は怠けている」というもの。だが、内閣府の「平成25年度版子供・若者白書」によると、「若年無業者が求職活動をしない理由、就業を希望しない理由」は最も多い回答は「病気・けがのため」であるらしい。「怠惰」と指摘されそうな「急いで仕事につく必要がない」「仕事をする自信がない」といった回答を占める割合は思いのほか低いのである。


●上司からの叱責、冷遇で退職。再び働く気になれず

 工藤氏が支援現場で出会った無業の若者たちは、決して特殊な者ばかりではない。たとえば、有名私立大学を卒業後、大手飲食店に入社したAさん(男性/25歳)は企業説明会や面接で聞いていた職場環境と実態の解離に離職を決意した。入社直後の研修中は、食を通じて社会に貢献したいと同期たちと真剣に話したこともあったというが、それぞれの店舗に配属されると、疑問を感じ始めたのだという。Aさんは自分の努力次第で客が増え、売上も増加させられるはずだという考えから深夜遅くまで働いたが、残業代は一切出なかった。思い切って、上司に抗議すると、上司は自身が本社から課せられるノルマやその達成のために、家族との時間も取れないくらい働き続けているのにその態度は何だと、顔を真っ赤にしてAさんを叱責、彼を冷遇するようになったという。Aさんはこのことがきっかけで、会社を退社したが、これまで蓄積した疲労が出たのか、働くことを考えられなくなってしまったそうだ。おまけに、友人と会う頻度も減ってしまっている。それは、「最近何をやっているのか」と周りに聞かれるのが嫌であるためだ。また、再就職したくても、外側から知れる範囲の職場環境や条件待遇と実態がどの程度違うものか、ということに過敏に反応してしまい、なかなか応募してみようというところまでいっていないという。

  • 前のページ
    • 1
    • 2
  • 次のページ
ダ・ヴィンチニュース

トピックスRSS

ランキング