【直木賞受賞作『破門』のあらすじを2分でチェック!】 極道小説界のキング・オブ・ポップ、推参

ダ・ヴィンチニュース / 2014年7月17日 20時20分

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『破門』(黒川博行/KADOKAWA)

「常識とは十八歳までに、身につけた偏見のコレクションのことをいう」
…と、かのアインシュタインは言ったそうですが、まったく言い得て妙です。偏見を持たぬように心掛けているつもりですが、なかなか難しいものですね。革新的なモノや、人、良い作品などに出会うたび、何かしらの偏見を持っていることに気が付かされるのです。

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 そういった意味で、本作はとっても良い作品であると思います。まさかこんなにおかしな“ポップな極道小説”があるとは、夢にも思っていなったのですから。ヤクザモノ、加えて直木賞候補ということで、とんでもなく仰々しいイメージを持っていましたが、それは大きく裏切られたのです。

 もちろん、とてもいい意味で。

 舞台は大阪。映画製作への出資金を持ち逃げされた“イケイケのヤクザ”桑原と“うだつの上がらない”建設コンサルタント・二宮のコンビが主人公です。詐欺師が隠した資金回収のため、関西を駆けまわり、追走劇はなんとマカオまで。巨額の資金をめぐる争いはついに組同士のトラブルにも発展し、絶体絶命の危機が2人に迫るのでした。

 と、あらすじを見る限りではハードボイルドなヤクザ感がプンプンなんですが、そこから先が本作の本域です。登場する人物は、傷や刺青だらけのやさぐれた中年ばかりで、状況も状況なのですが、不思議と重たくないのです。金に汚いオッサンが入り乱れ、血みどろの抗争が繰り広げられながらも、どこか底抜けに明るい。漫才のような軽妙な掛け合いとテンポの良さが、ヤクザ作品に付きまとう重厚なイメージを見事に爆砕しているのです。

 本作はシリーズの第5作ということなので、シリーズファンにはきっとお馴染みなのでしょう。任侠ものと言えば、勝新太郎の『悪名』や『仁義なき戦い』の印象が強いのですが、本作はその地点からすると全くの新境地のよう。

 ハードなシーンは確かにありますが、ここまで軽快な極道作品はなかなか他に知りません。“コミカルでポップなヤクザ”という、ありそうでなかった絶妙な傑作です。ポップとは大衆的という意味でもありますから、直木賞受賞も納得!?

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