池井戸作品・白水銀行の“ニューヒーロー”坂東洋史とは? 【あらすじをチェック】

ダ・ヴィンチニュース / 2014年8月5日 20時20分

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『株価暴落』(池井戸潤/文藝春秋)

 池井戸作品と言えば、“銀行”。なのですが、『株価暴落』(文藝春秋)はちょっと毛色が変わっていて、カリスマ経営者によって巨大成長した大手スーパーに爆発物が仕掛けられ、脅迫犯を警察が追いつめるというストーリーが大きく絡められています。

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 スーパー一風堂に融資している白水銀行の調査役、坂東洋史が主人公。大ヒットシリーズの主人公、半沢直樹を彷彿させる、職業倫理に忠実な好漢です。が、爆発物を仕掛けた容疑者もまた、もうひとりの主人公と考えられなくもない。経済小説でありつつ、軽いミステリーとしても面白く読めます。

 この小説には銀行、警察、スーパーと大きな組織が3つ出てくるのですが、そのどこにも善と悪の対立がある。銀行には私利私欲だけのために本来の業務を蔑ろにしながら出世していく小悪党がおり、警察の中にも、真摯に仕事をするものと、犯罪者に近づきすぎて腐っていくものがいます。

 スーパーの設定がまた詳細です。カリスマといわれた経営者が一代で育て上げた、売り上げ2兆円の巨大企業なのですが、そのカリスマはもはや年老いて時代の流れを感知できず、高度経済成長時代と同じ戦略でばかり勝負しようとして傾きかけた会社をまったく再建できないうえに周りはイエスマンばかりで固め、銀行は金を貸すのが当たり前、くらいに思っている。ノンフィクション作家・佐野眞一さんの『カリスマ』を思い出すエピソードです。会社を再建すべく奔走する有為なビジネスマンがこのカリスマと対峙します。

 爆発物を仕掛けたとされる容疑者は、一風堂の子会社の強引な出店でシャッター通りのようになった商店街出身で、父親が自殺してしまっています。警察よりも先に坂東は彼の存在に気づき、近づこうとするのですが、失敗してしまいます。このあたり、坂東が彼を捜す金融業者特有の手段も面白い。さらには脅迫で金を得ようとするコピーキャットも絡んできて事件は二転三転。主要登場人物の背景だけでもお腹いっぱいになりそう。タイトルの真意はラストにわかるという仕掛けで、最後まで気が抜けません。

文=遠藤京子

ダ・ヴィンチニュース

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