3Dプリンターは善か悪か?――「3Dプリンターが創る未来」から考える

ダ・ヴィンチニュース / 2014年8月12日 12時20分

写真

『3Dプリンターが創る未来』(クリストファー・バーナット:著、原雄司:監修、小林啓倫:訳/日経BP社)

 ダ・ヴィンチでもたびたび取り上げてきた3Dプリンター。紙への印刷ではなく、空間に熱した樹脂を正確に積み重ねて行くことで立体物を創り出すことができる機械だ。その用途は自分そっくりのフィギュアを作るといったホビーから、個々人に応じた義足や入れ歯などの義肢の制作まで幅広い。

関連情報を含む記事はこちら

 3Dプリンターは「メイカームーブメント」と呼ばれる、IT革命の次を担う動きを支えるツールとしても注目されている。これまでバーチャルな「データ」を扱うことで、社会を変革してきたインターネットが、リアルな「モノ」をすら扱えるようになる――例えば、インターネット上に3Dプリンター用のモデルデータを共有しておけば、世界中で誰もがそのデザインを「モノ」として出力することができるようになるのだ。実際、Thingiverse(シンギバースhttp://www.thingiverse.com/)といったサービスも誕生して人気を博している。

 本書『3Dプリンターが創る未来』(クリストファー・バーナット:著、原雄司:監修、小林啓倫:訳/日経BP社)では、このような具体例から、それを担うベンチャー企業やクリエイターを紹介し、ありがちな誤解を解きつつ、未来への可能性を示してくれる。例えば、脆いプラスチック樹脂を材料として使うことが主流となっている普及帯の3Dプリンターだが、業務用、実験用の機材では熱した金属や、より堅さや正確さを得られる光結合による立体物の生成も既に始まっていることが紹介されているのだ。これらの技術を使って自動車や飛行機の部品をより効率的に作り、燃費を更に向上させるプロジェクトもすでにスタートしている。さらに、「バイオプリンティング」という分野では、細胞を3Dプリンターで積み上げて行くことで、生きた血管や臓器を作り出す研究まで行われている。

 しかし、ここで気になるのが本書の出版後に日本で起こった、3Dプリンターを巡る2つの事件だ。ひとつは実際に実弾が発射できる拳銃が3Dプリンターで自作されたもの。もう1つは自らの女性器を題材にしたアート作品を、3Dデータとして配付し、3Dプリンターでの出力を可能としたものだ。いずれも、逮捕者が出る事態となり、世界的にも注目を集めてしまった。法律で禁じられた武器を作るのはもってのほかとしても、アートとしてデータを配付することがどこまで違法性があるのかは議論ともなった。

  • 前のページ
    • 1
    • 2
  • 次のページ
ダ・ヴィンチニュース

トピックスRSS

ランキング